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一章6 記憶にございません、よって俺はわるくねぇ

ゴブリンを何匹か取り逃がしていたようだ、もったいないことをしたな

しかし、こうして村単位で救ってもまだ点数がマイナスなのか、先は長そうだな

戦闘が終了したからか、徐々に感情の高ぶりが収まっていく


「う、うわぁっ!」


何だこの血は、俺、何時の間に腹を怪我したんだ?服が破けて血が着いている。でも、全然痛くない…何だこれ?血じゃないのか?

俺はそこでようやく辺りを見渡す

そこは、まさしく地獄絵図だった

緑のおっさんの死体、死体、死体…こっちを見て震えるコミュ障

何だかデジャブだ、盗賊に襲われた時もこんな感じに…

いったい何が起きたというのか、俺は、確か骸骨剣士とかいう骨にやられそうになってるコミュ障を助けて、それから…まただ、また記憶がない、覚えていない


「なぁコミュ障、いったい何がどうなったんだ…?お前がこれをやったのか?本当に強かったんだな、すげー」


「お前、さっきと雰囲気が…?というか、まさか覚えていないのか?」


「あぁ、お前を助けに入ったまでは覚えているんだが、その後の記憶がないんだ」


「…確かに、俺が殺したゴブリンもいる、だが…この大半はお前がやったものだ」


今こいつは何と言った?俺がやった?いったい何の冗談だ、俺はただの一般人だぞ、んなこと出来るわけねーだろうが

…ははぁ、分かったぞ、さてはこいつ、俺に何か罪を擦り付けようとしているな?

ここは異世界だ、前の常識は通じないだろう

恐らくこのゴブリンさんを殺したことにより、何かしらの罪に問われるのだろう。殺人罪とか、殺ゴブ罪とかに

そうは行くかコミュ障め、罪をおっかぶるのはお前だけでいい


「それでも俺はやってない」


俺は堂々と言い放つ

だって覚えていないのだ、というかさっきも言ったが俺はただの一般人だ、その俺にこんな惨状を引き起こせるわけがないのだ


「何がそれでもなのかは知らんが、たとえお前が覚えていなくとも、大勢の村人がみたぞ、笑いながらゴブリンをなぐり殺すお前の姿を」


言われて横を見ると、たくさんの村人が集まってきていた

皆一様に、顔には恐怖を浮かべている

…きっとゴブリンの襲撃が怖かったに違いない

俺を見て怖がっているように見えなくもないが、きっと気のせいだろう、こんな人畜無害な一般人を捉まえておっかながるだなんて、そんなことがあろうはずがない


「いや、みなさんゴブリンに襲われて怖がっているだけだ、大丈夫、俺のせいじゃない」


「ば、化け物…」


村人の一人が呟いた


「化け物だ…」「殺さないで…」「神よ…」


最初の村人の呟きを皮切りに、他の村人も次々に言い始める


「何なんだ、お前は本当に…さっきまでと同じ奴にはとても思えん」


人を二重人格みたいに言うのは止めていただきたい

相変わらず村人たちは怯えた目でざわざわとしている

さて、どうしたものか…そういえばおっちゃんの姿が見えない、何処へいったのだろうかと思っていると、何だかいかにもステレオタイプな村長さんと話しをしているのが見えた、何を話しているのだろう


「ねーおっちゃん、何話してるの?」


おっちゃんに話しかけると、おっちゃんは肩をびくりとさせてこちらを振り返る

その額には冷や汗が浮かんでいる

急に声を掛けたせいでびっくりさせてしまったようだ


「あ、あぁ…ディケイ町に行くために、ここで一晩宿を借りれるかの交渉をしていたんだよ」


なるほど、お泊りの相談をしていたのか


「村長さん、泊めてください」


俺からも村長さんにお願いする

すると村長さんはおどろき慌てふためきながら、あ、あぁ…とか言っている。あれ?大丈夫かこの人

とにかく、これで宿は確保できたわけだ、異世界にきて初のお泊りだ、ちゃんと眠れるだろうか






眠れました

大して柔らかくないベッドだったが、横になったらあっさりと眠ってしまった

きっと色々な事がありすぎて疲れていたのだろう

起き上がり宿から出て、井戸水を汲み上げて顔を洗う、ついでに頭も洗う。こうなると体も洗いたくなる…周りに誰も居ないので、服を脱いで体も洗う

流石に寒い、風邪をひいてしまう、俺は何をやっているのだろうか、でもさっぱりしたのでよしとしよう

体を震わせて体を温める

そんなことをしていると後ろから声を掛けられた、コミュ障である


「何をしているんだお前は…」


呆れた顔で聞いてくる


「顔洗って頭洗って体洗ってたんだよ」


こっちも負けじと呆れた顔で言い返す

するとコミュ障はさらに呆れた顔で布を渡してくれた、これで拭けということだろうか


「さんきゅーコミュ障、気が利くじゃねぇか」


「なぁ、昨日から気になってたが、そのコミュ障ってのは何なんだ?意味は分からないが何だか馬鹿にされているような気がするんだが」


「ちげーよそんなんじゃねーし、この名は選ばれしものにしか与えられる事の無いとってもレアな名なんだぞ」


適当に言い包めて納得させる

元はと言えばこいつが名前を教えてくれなかったからだ


「何か嘘くさいが、まぁいい…それより、もう出発するぞ、そのためにお前を呼びに来たんだ」


「あ、もうそんな時間なの?俺も今日は割と早起き出来た方だと思うんだけどな」


「こういうのは早朝に出発するのが当たり前だろうがったく…」


いやそんな顔してこの世界の常識を披露されても困るんですが

こちとら異世界生活二日目だぞこら


「まぁいいや、なら馬車に行くか」


馬車は昨日と同じ、村の入口に止まっていた、おっちゃんはもう御者台に座っていた

おっちゃんにあいさつをして馬車に乗り込むと、村娘さんの姿が見当たらない、何処へいったのだろう


「ねぇ、村娘さんがいないけど、どこ行ったの?」


御者台に座るおっちゃんに聞いてみる


「あぁ、彼女はね、この村に残るそうだ」


「あ、そうなんだ…」


たしかに、村娘さんまで一緒に付いて来る必要性はない

彼女には十分な休息が必要だ、この村で元気にやっていってほしい

結局、村娘さんの名前も分からないままお別れになっちゃったけど、それも仕方ないのかな

そんな感じで、村娘さんのいない馬車にちょっぴり寂しさを感じながら、俺たちはディケイ町へと進んでいった

これで一章終了

出会いがあれば別れもまたある

村娘さんと別れた主人公は、次なる目的地へと向けて旅立って行くのであった

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