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一章4 その力、神か悪魔か

何処かで見たようなタイトルだって?

何、気にすることは無い

いきなり後ろから助けてくださいなんて声を掛けられて、すごくびっくりした

というか、人が居たのか、全然気が付かなかった

あ…ということは、さっき情けない声で叫んでいたのが聞かれていたかもしれない、というか確実に聞かれているだろう、恥ずかしくて振り返れない…でも、助けてくださいと聞こえた、ということは、何か急を要するようなことなのだろう、俺は覚悟を決めて後ろを振り返った

四人の薄汚いおっさんズと、一人の少女がそこにいた

…何だこの状況は

混乱していると、目の前に文字が浮かんできた


《村娘を救出せよ》

村娘生還 +

盗賊殲滅 +

敵前逃亡 -


おあつらえ向きに幼気(いたいけな)な村娘が盗賊に襲われています

異世界トリップ初の善行を積むチャンスです


何だこれは…

俺は文字に触れようと手を伸ばす、触れない

文字に近付こうと歩く、近付けない

…何なんだ、これ

いや、大体は分かっている、つまり、この村娘とやらを助けなければ、点数がマイナスになってしまうのだろう

まるでゲームか何かのクエストのようだ

だが、ここは間違いなく現実であり、死ねば俺は無間地獄行きだ

たしかに、この村娘さんは助けてあげたいが、相手は四人だ、それに刃物を持っている


「て、てめぇこのナイフが見えねぇのか!止まれ!」


おっさんの中の一人が声を荒げる

いや、見えてるよ、てか今のはあんたらに近付くために歩ったんじゃねーから


「俺だって近付きたくなんてないんだよ、その子を離してくれ、頼むから」


頼むから離してくれ、この子を助けずに逃げると、俺は点数を稼ぐどころか、逆にマイナスが増えてしまう。それは避けなければならないが、何よりもまずは、俺が死なないことが大事なのだ、笑って人生を歩んでいこうとか言ったばかりだがこればかりは仕方がないと思う

何の力も無いただの一般人である俺が刃物を持った四人の大人にどう勝てというのだ

そんなことを考えていると、声を荒げたおっさんが女の子の首元にナイフを突き付けたではないか

俺はまだどこか、ここを現実だと認識出来ていないのかも知れない

女の子が泣きそうになりこちらを見てくる、そんな期待の眼差しで見られても困るんですが

ふと気が付くと、目の前に浮かぶ文字に変化があった


《村娘を救出せよ》

村娘生還 +

盗賊殲滅 +

敵前逃亡 -


村娘が盗賊に殺害された場合、クエスト自体が消失します

その場合±ゼロになり、新たなクエスト《盗賊退治》が発生しますが、このクエストは放置しても点数はマイナスにはなりません


何…だと…

これなら良いじゃないか、うん、仕方ない、助けようと必死に頑張っても、間に合わず村娘さんが殺されてしまっては仕方ない。仕方ないったら仕方ない、俺は悪くねぇ


「あぁ、それなら±ゼロだ、仕方ない、本当に残念だ、どうぞ、その子を殺すといい、非常に残念だが仕方ない」


俺はいかにも悔しそうな表情でそう言い放つ


「そんな、お願いです、助けてください…!」


「馬鹿てめぇそれ以上喋るな、フラグが消える!」


盗賊のウスノロめ、さっさと殺せばいものをチンタラやってるから、村娘がさらなる懇願をしてきた

盗賊たちがこっちを見て目を丸くしている

何だよ、引いたってか?


「お願いです、助けてください!」


村娘さんは必死だ

必死に助けを求める、やめていただきたい

するとまたしても浮かんでいる文章に変化が見られた


《村娘を救出せよ》

村娘生還 +

盗賊殲滅 +

敵前逃亡 -


クエスト対象に明確に助けを求められました

この状態で敵前逃亡すると、大量のマイナス点が加算されます

村娘が盗賊に殺害された場合、クエスト自体が消失し、大量のマイナス点が加算されます

新たなクエスト《盗賊退治》が発生しますが、このクエストは放置しても点数はマイナスにはなりません


「あぁっ!消えた、くそっ!これでもうやるしか…いやでも無理ゲーだろこれ…」


ふざけるなよ、どんどん詰んでいくじゃないか…何だよ、大量のマイナス点って

このアマ俺を追い込むのがそんなに楽しいのかクソが

胸の内にどす黒い感情が溜まっていく

いや、何かおかしくないか…?俺はここまで薄情な奴だったか…?

自分が助かるために、目の前の女の子を殺していいですよなんていうような奴だったのか?自覚が無いだけで、俺はこんなにも薄情な人間だったのだろうか

…?何だか体に力が漲ってくるような気がする

それに、気分も高揚して来た、俺が薄情かどうかなんて、どうでもいいような、些細なことのような気がしてくる

きっとアドレナリンか何かが大量に分泌されているだけなのだろうが、何だか今なら何でも出来る気がした

それこそ、この女の子を助け、なおかつ、四人の盗賊も皆殺しに出来るような――


「ひっ…」


盗賊四人と女の子が怯えた目でこっちを見てくる

ははは、良い表情だ、もっと恐れ慄け

俺は怯えて歯をガタガタならしている五人に向かって歩いていく


「い、命だけは…た、たす――」


「っははは、何言ってやがる、お前らを殺せば点数が加算されるんだよ、見逃すわけねーだろ」


そう言って俺は震える盗賊四人の首を素手で毟り取っていく

首と一緒に、脊柱まで一緒にズルズルと引っこ抜けてくる

噴き上がる鮮血が最高に気持ち良い

首の無くなった胴体がビクンビクンとのたうっている様がとても愉快だ

村娘は股間を生暖かい液体で濡らし、涙を浮かべている

あぁ、良い顔をするじゃないか、でも駄目だ、この子まで殺しては、せっかくの点数がマイナスになってしまう、我慢しなければ…


「た、助け…命だけは、どうか…」


村娘が懇願してくる

それ以上命乞いをしないでくれよ、殺したくなってくるだろ

あぁ、イっちまいそうだ…

トリップするってこういう感覚なのかな…

そんな危ない思考に浸っていると、目の前の文字に変化が訪れた


《村娘を救出せよ》

村娘生還 + 〇

盗賊殲滅 + 〇

敵前逃亡 - 〇


クエストクリアです、点数が加算されます

まだまだ点数はマイナスです、この調子でどんどん善行を積んでいきましょう


そんな文章に切り替わったかと思うと、文字はゆっくりと消えて行った

それと共に、俺の気分も少しずつ落ち着いていく

徐々に思考がクリアになってくる

俺は、何をしていたんだっけか…

鼻を刺激臭が襲う、何だこの臭いは…鼻を手で覆うと、手に血が大量に付いていた


「う、うわぁっ!」


何だこの血は、俺、何時の間に手を怪我したんだ?でも、全然痛くない…何だこれ?血じゃないのか?

俺はそこでようやく辺りを見渡す

そこは、まさしく地獄絵図だった

首の無い死体、首と脊柱だけになった死体、血の海、蹲って嗚咽をあげる少女

生首の目は、恐怖と絶望を体現したかのような目をしていた、その一つがこっちを見ている気がした

気持ち悪くて、盛大に吐いてしまった

何だこの惨状は

一体、何が起きたんだ、俺は確か――

盗賊に襲われている少女を助けないといけなくて、盗賊に立ち向かわなければ点数がマイナスになってしまうから…という辺りまでは覚えている

でも、その後がどうしても思い出せない


「あの…一体何があったんですか?」


蹲っている少女に聞いてみる


「ひッ…殺される…」


駄目だ、酷く怯えてしまっていて、とても話を聞けるような状態じゃない

無理もないか、こんな惨状を目の当たりにしてしまったのではな…


「怖かったね、でも、もう大丈夫だよ」


多分

多分大丈夫なはずだ、何故だか分からないけど、この子を襲った盗賊は死んでいる

でもこの場には長居したくないから、どこかに場所を移そう


「あ、あぁ、殺される…」


少女はかなり怯えてしまっている

心の傷を癒すには時間を要することだろう、早くどこか安全なところに行かないと

そう思い俺は少女の手を取り、歩き出した

おや、主人公の様子が…?

白々しくすっとぼける主人公によってもたらされた悲劇

これから物語はどうのような展開を見せていくのか…?

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