三章3 光と闇が両方そなわり最強に見える
魂の欠片を俺にあげる?何を言っているんだ?
「だって、ミカドはその点数とやらがプラスになった瞬間、ここからいなくなってしまうかも知れないでしょ?だから今の内にね。…というか、君の魂には、認めたくないけど既に薄汚いゴミ虫悪魔の魂が定着しているってのに、何のことか分からないって顔だね、いいかい?これが――」
ノアはそう言って胸に手を当てて手を握る
そして再び手を開くと、そこにはとても綺麗に発光したビー玉のようなものがあった、これが魂の欠片なのだろう、見惚れる位に美しい
だがこのビー玉、どこかで見たことがあるような気がする、いったいどこで――…あぁ!あの時だ、俺が死んだ後に居た、あのホテルみたいな場所の玄関口に落ちてたビー玉だ!あれと似てるんだ
ということは、俺はあの時に悪魔の魂を取り込んでしまったのだろう、だがいったい何故魂の欠片なんてものがあんな場所に落ちていたんだろうか。ともかく、その魂の欠片を取り込んだおかげで俺はドラゴンなんてものにも勝てたんだ、感謝しなきゃな
「これが、魂の欠片さ。これをミカドにあげる。クソ悪魔と戦うなら、僕の力も合わさればより勝てる確率が上がるはずだ」
そう言ってノアは俺に魂の欠片を差し出してくる
「い、いや…気持ちは嬉しいけどさ、魂の欠片なんて凄そうなもの貰っちゃって、ノアは平気なのか?大丈夫なのか?」
「あぁ、ミカド…僕を心配してくれるのかい?その気持ちだけで、天にも上ってしまいそうになるよ。でも大丈夫、僕クラスになるとね、魂の一部が欠けた位じゃ何ともないのさ」
ヘブン状態という表現がとても似合う恍惚とした表情でノアがそう言い放つ
…こんな奴の魂を貰って、本当に大丈夫なのだろうか、とても不安だ
だが、流石は天使なだけあって、魂が欠けても何の問題もないらしい
簡単にパワーアップ出来るし、ノアに害がないのならぜひ頂こう
「こ、これは…」
ノアの魂の欠片に触れた瞬間、魂の欠片は眩い発光と共に消えた
俺の体に無事取り込めたのだろう、俺の中に、新たな力が漲っているのが分かる
これなら、どんな敵にも負けないだろう、そう確信出来るほどの力だ
「ハァハァ、これで、ミカドと魂で繋がったね、もうずっと一緒だね、離れていても魂で通じ合ってるね、えへへ、ハァハァ」
このハァハァ言ってるのは、決して俺に魂の欠片を与えたことによる疲労とかでは断じてない。明らかに何か興奮している
顔を上気させてそんなことを言うノアは、傍目から見たらまごうことなき変態である
「おい気持ち悪い表現するのは止めてくれよ」
たとえノアの外見が美人だと言っても、こいつは付いているのだ、ナニがとは言わないが。そんな奴にこんなこと言われたら、それはそれは寒気しかしないだろう
「ひどいや、僕はこんなにもハァハァする位に息切れしているというのに…でも、そうやって罵倒されるのも、ミカドにされるのなら悪くないかも…」
「おえぇぇっ」
何言ってやがんだこいつ、新たな扉を開けようとしてやがる、その扉は開けちゃ駄目だ、俺の精神が持たない
「おいマジふざけんな、この力はありがたいけどそういうのはマジ止めろ馬鹿」
「そうそう、そんな感じだよ、嗚呼…ミカドにそんな隠れた才能があったなんてね。感謝されて、罵ってももらえる、何て素晴らしいんだ、僕は今最高の気分だよ」
俺は最低の気分だよ
こんなことなら魂の欠片なんて貰うんじゃなかったか?いやでも背に腹はかえられないしな…
自称神が俺のことを騙していた悪魔だった場合、戦闘は避けられないだろう、その時、この天使の力は必ず役に立つはずだ
「…しかしどうなってるんだ?クエストが達成されたという文章が出てこないな、何故だ?なぁノア、お前本当に人間に教えを説きに行くのを止めようって思ってるか?」
「おもってるおもってるすごいおもってるよー」
「おいノアこっちを見ろ、何で視線を逸らす」
俺は視線を逸らし棒読みで返事を返すノアに掴み掛り顔をこっちに向ける
「だ、だって…もしそれでミカドの点数がプラスになっちゃったら、ミカドはここからいなくなっちゃうんだろ…?それが凄く嫌で…そう考えたら、ミカドとここでずっと一緒にいる方が良いんじゃないかって思って、それで…」
ノアが泣きそうな顔で上目遣いでそんなことを言ってくる
…あれ、こいつちょっとかわいいんじゃね?付いてたって良いじゃない、大丈夫だ、問題ない――
――まてまてまて、俺は今何を考えた?いかんいかん、冗談じゃねーぞ、せっかくの異世界なのにヒロインが付いてるとか何の冗談だ、俺はそんなの嫌だ
「どのみち俺は点数がマイナスのまま死ぬわけにはいかないんだよ、点数がマイナスのまま死ぬと俺は無間地獄行きなんでな。だからお願いだノア、人間に教えに行くのを止めてくれ、それがおれのためであり、お前の為でもあるんだ。お前をこの世界という鳥かごから解放するためには、お前の協力が必要なんだ!」
「僕が、必要…ミカドには、僕がいないと駄目…僕だけがいればいい…」
おい凄い勢いで捉え方がねじ曲がっていってるんですが
「そんなに言うんなら仕方ないね…でも約束してほしい、死なないで、絶対に無茶はしないでね」
ノアが真面目な顔になり、俺に言ってくる
だから何でカイルといいこいつといい俺にフラグを立てるのかなぁ、そういうの止めてくれません?
心配してくれているのは分かるんだがやめていただきたい
《魔王に襲われる世界を救え》
各地の人間の生還 + 〇
魔王の撲滅 + ☓
侵攻の阻止 + 〇
敵前逃亡 - ?
クエストクリアです、点数が加算されます
各地の人間は全員無事なため、点数に加点が付きます
点数はプラスになりました、おめでとうございます
これにて魂の穢れを落とす工程は終了です
只今輪廻転生に向けての準備中です、そのまましばらくお待ち下さい
なんて考えていると、そんな文章が浮かび上がった
「お、おぉ…ついに点数がプラスになったぞ!でも、準備中…?」
しばらくお待ちくださいと言われても、どの位待っていればいいのだろうと思ていると、自分の体が少しずつ透明になっていく。なるほど、こういう消え方か
「ノア、お前には魂の欠片なんて大層なもん貰ったんだ、お前も必ずこの世界から出してやる、だから、もう少し待っていてくれ!」
「うん!待ってる、ずっと待ってるよ!でも絶対に無理しちゃ駄目だからね!」
ノアは俺にしがみ付きながら、泣きながらそんなことを言ってくる
抱きつかれたときにノアが執拗に腰を押し付けてきているような気がしたがそれ以上考えないことにした
何だか必死に腰を振っているような気がするが、俺は考えるのをやめた
そして、俺はこの世界から消えた