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一章1 死ねば楽になれると思ったのか?ん?

俺は死んだ


こんな惨めな人生、これ以上生きていても良いことなんてないと思った

学校でひどい苛めを受け、俺はすっかり負け犬根性が沁み付いていた

俺が彼らに何をしたせいで苛められていたのかは分からない。いや、そもそも理由なんて無かったのかも知れない

俺は、これ以上誰かに迷惑をかけないよう、嫌われないよう、誰とも話すことなく、苛められながらも学校でひっそりと過ごしていた

そんな俺の姿が気に入らなかったのか、苛めは益々エスカレートしていった

もう、どうすれば良いのか分からなかった、俺が一体何をしたというのか、もう嫌だ、こんな人生まっぴらだ

俺はこの世の全てに絶望した

そして、死ねばいいのだという結論に至った

死ねば、この苦しみから解放される、次の人生なんてものがあるのなら、今よりはマシな、せめて普通の人生が歩めるようにと願った。そして俺は自ら命を絶つことを決意した

ただ、死ぬまでに苦しむのは嫌だったので、一瞬で死ねるよう、線路に飛び込んで死ぬことにした

電車の乗客や車掌には悪いとは思ったが、どうせ死ぬんだから知ったことかと思い、電車が来るタイミングに合わせて飛び込んだ。線路に飛び込み後ろを振り返ると、慌てて助けに飛び込もうとする者、見て見ぬふりをする者、好奇の目で見てくる者、羨ましそうに眺めてくる者など、さまざまだった

しかしそんな人たちを見ていられたのは一瞬で、俺はやって来た電車にあっさりと撥ねられた

予想通り、痛みは全くなかった。首が吹き飛んだのだろうか、視界が空中を彷徨う

こっちを見て口元を押さえて蹲る人、盛大に吐瀉物をぶちまけている人などが、やけに鮮明にスローモーションで見える。俺はそれらの人たちを、他人事のように眺めていた

すると一人、妙ちくりんな格好をした男がこっちを見て笑みを浮かべている

俺はうわぁ気持ち悪いなぁ、こういう危なそうな人とは係わらないようにしないとなぁ、なんて

そんなことを思いながら意識を手放した






そこで、俺は終わるはずだった

残念、私の冒険はここで終わってしまった状態になるはずだった

なのに、俺はまだ死んでいなかった、いや、死んでいるのだろうか

気が付くと知らない場所に突っ立っていた、俺はわけがわからなかった

何処かのホテルの玄関のようだった、何だここは

正面はロビーのようになっており、沢山の人がそこに集まっていた、どうやら玄関口に居るのは俺だけのようだ

日本人の習性に従い、皆居るからという理由でロビーに移動する

玄関で靴は脱いだ方が良いのかなどと、どうでもいいことを考え屈むと、地面にビー玉のようなものが転がっていた。とても暗く、淀んでいてくすんでいる。まるで闇そのものを切り取り、ビー玉の形に加工したもののようだ

丁度物陰に隠れるようにして転がっていたそれを、興味本位で拾ってみる

するとビー玉から闇が広がったかと思うと、掌から姿を消していた

一体なんだったのか、壊してしまったのだろうか、いや、幸い誰もこっちを見ていなかったようだ

もし壊してしまったのだとしても、誰も見ていないのなら証拠が無い、俺は素知らぬ顔で、内心本当は誰かに見られていたのではと思いながらロビーの方へと歩いて行った


「はーい皆さーん注目でーす」


一体ここは何処なのかと混乱していると、妙に間の抜けた声がした

声の方に振り返ると、そいつは浮いていた

急に注目でーすなんて言ったせいで浮いているのではなく、物理的に浮いていた

俺は目を疑った、他の人たちも同様のようでざわついている

頭には天使の輪っか的なリングがある。しかし明らかに手作り感満載で、白い棒が頭から伸びており、輪っかにくっ付いているのが見えている

背中には羽が生えている。この羽は本物のように見える、しかしその白い羽は、色むらが出来ており、所々黒い所が見えている

肌は浅黒く、真っ黒な服装に身を包んでいる

胡散臭さ120%な天使もどきがそこにいた


「はいはーい皆さん静粛にー5秒以内に黙らないと無間地獄に落としまーす。ごーいーちぜろー」


おい数字すっ飛ばすな

無間地獄などという恐ろしいワードがでてきたせいで、辺りは急に静かになった

だが、それでも天使もどきの言うことを聞かずに黙らない奴がいた


「はい黙らなかった奴は落としまーす永遠に苦しんできてねー」


天使もどきがそういうと、未だ喋っていた奴らの足元に穴があき、下へと落ちていく

俺はその時、穴を見てしまった、そして聞こえてきた

ほんの一瞬だったが、穴の中には無数の人垣と拷問器具、そしてその人たちを嬉々として痛めつける者たち

拷問されているであろう人が発する、おぞましい叫び声、およそ人が発することが出来るのか疑わしい金切り声が聞こえた

すぐに穴は閉じられ、声は聞こえてこなくなった

血の気が引いていき、眩暈と吐き気に襲われた、だがそんなことをしてあの天使もどきの機嫌を損ねてはまずいと感じ、蹲ることも吐くことも何とか堪えた

しかし何人かは堪えきれずに吐いてしまっている


「あーあー汚いなーもー」


天使もどきの発言に、先程吐いてしまった人たちがびくっとする

しかし仕方ないと思う、いきなりあんなものを見せられたのでは、吐いてしまうのもしょうがないだろう


「でもまー黙れっていっただけだしなー吐くなとは言ってなかったからなーセーフかなー」


そう言われ、皆ホッとする

この天使もどき、妙に間延びしたバカっぽい喋り方ではあるが、さっき無限地獄とやらに何人か実際に落としたことから分かるように、とても恐ろしい奴だ


「さーて、静かになったところで説明するよー一回しか言わないからよく聞いてねー。まずは自己紹介からねー私は天使だよー、ほんとだよー。で、本題だけど、君たちは死にました、それも皆自殺です、まったく何死んでるんですかねー」


簡潔すぎる自己紹介を終え、天使が喋り出す

てか自分で天使っていったな、相変わらず胡散臭いけど


「さてさて、詳しい説明は魔神――あいや、神様がしてくれるから、皆はこっちに付いて来てねー」


今何か不穏な単語が聞こえそうになったんだが、何だろう

俺たちは天使もどきの先導に従い、おとなしく付いて行く

それにしても、ここにいる全員、自殺した人なのか…

改めて周りを見てみると、老若男女、様々な人がいた

ただ一つの共通点は、皆目が死んでいて、あの天使もどきに怯えているという点だ

そうして周りを見ながら歩いているうちに目的地に着いたようだ


「じゃー後はこの中にいる神様に話を聞いてねーそれじゃー精々頑張ってねー」


そうして、俺たちは扉を開け、中に入っていく

ここまでお読みくださりありがとうございました

とても卑屈な主人公が出来上がりました

どうしてこうなった

ご意見、ご感想などいただけたら幸いです

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