第6話 「最初に書いてあったのは、この事か」
「とりあえず、その武器は、ライラ君のレベル帯の敵だったら、一撃で葬る事が出来るよ♪」
「葬るって……かなり、物騒な言い方しますね。フィーリアさん……」
俺の武器の性能を説明し、『葬る』等と言う物騒な言葉を出した彼女。
確かに、初期装備でATK値+540という化け物じみた性能を誇るインフィニティシリーズの言い方としては、間違ってはいないような気もするが、少し考え物でもある。
「そういえば、ライラ兄ぃは、"スキル"の設定はしてあるの?」
「スキルの設定?」
「あー、その表情だと設定してないわね……」
ヤレヤレといった表情でカノンこと穂之香が首を振る。
「設定も何も、どうやってやればいいか――」
「最初に、ステータス画面を開きなさい」
俺の言葉の最後を聞かずにそう言い切るカノン。言われたようにメニューを操作しウィンドウを可視状態にしてステータス画面を表示させると、俺のアバターの詳細が表示された。
Name:ライラ
Level:1
Class:初心者
tribe:人間族
特殊能力:無
HP 120/120
MP 70/ 70
ATK 560
DEF 78
INT 20
AGI 20
DEX 20
LUK 20
CRI 5
ボーナスステータスポイント 0
スキルスロット
スキル1:設定されていません
スキル2:設定されていません
スキル3:設定されていません
スキル4:………
装備
胴防具:初心者のメイル
腰防具:初心者のプレート
腕防具:初心者のガントレット
足防具:初心者のブーツ
フルセットオプション:初心者セット
効果:防御力+50
平均的だなぁおい!! ATKの値とDEFの値は、俺の武器と防具の上昇率が付加されているからだろう。だが、CRI値を除いたそれ以外のステータスが全て20と言うのはどうなんだろうか……。平均的過ぎる……。
そして、設定されていませんと表示されるスキル群。初期は、スキルスロット6からのスタートのようだ。
俺の表示されたステータスを見ようと群がる三人。
「うーん、やっぱり人間族の初期ステータスって平均的だねぇ……」
「オール20、確かに低いって言えば低いな……」
「最初の時に書いてあった"能力が平均的で扱いやすい"ってこの事か」
「他の何かに特化した種族と比べると大体平均値のステータスよね……コレ」
首を捻る俺と、懐かしそうに俺のステータスを見る三人。
「……さ、ライラ兄ぃ。スキルの設定をさっさと済ましておきましょ」
「あ、あぁ。そうだったな」
そうだ、カノンにスキルの設定をするって言われてステータスを表示してたのを忘れていた。
カノンの言うとおりにステータス画面を操作し、スキル設定の項目にカーソルを合わせ、その部分をタッチする。
このゲーム『LCO』は、メニューでの操作方法の殆どが、昔のパソコンの操作方法に酷似している。
『タッチ』は、昔のパソコンで言う所のマウスのクリックに当たり、『ドラッグ&ドロップ』と言う操作も一応存在するが、詳しい事は、話すのが長くなるので今は、止めておく。
スキル設定の項目を表示し、じっくりと眺める。
非設定スキル:
銃術 熟練度 0/1000 Passive_Skill
銃を扱うのに必要な基本スキル。
熟練度の上昇により、様々な銃系統のスキルを獲得出来る。
入手条件:該当する武器を装備する事で入手。
効果:戦闘時、照準の表示。銃で攻撃時、DEX値+3。
「スキルが、……一つだけだと……」
「あー、初心者の人達皆そう言うけど、それで合ってるよ。
このゲームは、レベル制とスキル制の両方の特性を持つMMORPG。戦闘をこなす事で経験値と熟練度を増やしてスキルを習得していくのよ」
なるほどなるほど、つまり……
「戦闘を通して新しい技を覚えていくって事で合っているか?」
「えぇ、そうね。ライラ兄ぃ」
「まるで、昔あったポケットなんちゃらってゲームみたいだな」
半世紀以上前に発売されたそのゲームは、新作が出るたびに品薄になると言う伝説を残し、今でも二一世紀の大ヒットゲームとしてネットで語り継がれている。
内容としては、出てきたモンスターを倒し手持ちのモンスターを育て新たな技を習得していく……大雑把な所は、このゲームと似ている部分があると俺は感じたのだ。
「兄さん……多分そんな古いゲームの事を出しても、皆に分からないと思うよ。少なくとも、俺もそうだし」
「ありゃ、そうだったか」
手を額に当て頭をわしゃわしゃとさせる。緋色の髪が手に絡まりすぅっと離れていくのを俺は、見つめていた。
閑話休題
「よしっ、これで大丈夫かな?」
ステータス画面からスキルの設定をした俺は、改めて自身のスキルスロットを見る。
スキルスロット
スキル1:銃術 熟練度 0/1000
銃を扱うのに必要な基本スキル。
熟練度の上昇により、様々な銃系統のスキルを獲得出来る。
「スキルを設定できるのが、六つもあるのに一つしか設定出来ていないって何か寂しいなぁ」
「それだったら、少しレベル上げをしてくるといいわ。
ログインしたばかりの初心者の狩場って言ったら……"アラニア平原"かしらね」
少し考えた後に、そう呟くフィーリアさん。他の二人 (カズキとカノン)も同じ事を考えていたようで、同時に首を縦に振る。
「ふぅん、そうなんだ。じゃぁ、ちょっとレベル上げをしてこようかな……」
「アラニア平原は、町の南側から出た所だからね? 間違えないでよ?」
分かった、と俺は答え、部屋を後にしようとする。そこで、何かを思い出したのか、カノンが俺を止める。
「ライラ兄ぃは、ギルドの所属とかってどうするの? いっその事、幻想交響楽団に入らない?」
「あっ、ズルイぞ!! カノン! だったら、俺達の大和十八連合隊に入ってくれよ! 俺の紹介だったら上の方も文句は言わないだろうし」
「ふっふ~ん、カズキ君。ちょっと忘れてないかしら? ココが何処なのかって事を」
少し黒いオーラを放ちながらカズキに話しかけるフィーリアさん。
「あの、ちょっと怖いんでそろそろ俺は行きますね……」
そう言った俺の言葉は、届いていなかったようで、カズキとフィーリアさんからは、火花が散っている。唯一、俺の言葉が通じたのは、カノン。こちらを向き、『後は任せて』と表情を変えた。