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Last Cross Online‐ラスト・クロス・オンライン‐  作者: 火御雷
第1章 『ラスト・クロス・オンライン』
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第3話 「ダイブスタート」

 八月一日。俺のLCOログイン制限解除前日になった日の事だ。

 既に、有志の手によってLCO序盤の攻略サイトが立ち上がり、βテストに参加していない人間でも、内部の仕様が明らかとなってきていた。


 ゲーム内で選択できる種族は、全部で六つ。

 人間やエルフなど、RPGでおなじみの種族から、竜人・ドワーフ、ホビット、獣人といった種族もある。それぞれの特徴も色々とあるらしいが、能力が一番平均的(、、、、、、、、)なのは、どうやら人間のようだ。


「ここまでは、分かった? 兄さん」

「まぁ、一応は……」


 ゲーム内の種族について大まかに話されたところで一度、会話が途切れる。何故、こんな話になっているかと言えば俺のためだ。LCO内で実装されている全ての種族が、ステータスに補正がかかったり特殊な能力を備えている。

 そして、一番重要になってくるのは、使用する武器の種類(、、、、、、、、、)の得手不得手が種族で大きく左右される点だ。


「わたし達は、最初から使いたい武器とか決めてあったから種族決めには困らなかったけど、太一兄ぃは、どんな武器使いたいとか決まっているの?」


 そんな事言われても使おうと思っている武器は、二択だ。だが、種族には、こだわりを持っていないのが本音……といった所だ。

 良心で情報を教えてくれるのはありがたいけど、こっちは初心者(ニュービー)にもなっていない人なのだから。


「武器って、そんな種類あるもん?」

「えぇ、相当」

「初日確認された武器の種類だけで、兄さんが見ていたそのサイトの倍(、、、、、、、)は、出ていたからね」


 ほぉ、それは凄いな。……って、倍以上!?

 内心驚く俺。話を聞いていくと、武器の種類は、本当に多彩だった。


 大まかに種類は、剣に始まり、銃・杖、斧・槍……更に在ったがその種類の多さに、その位しか、覚えていない。


「じゃ、じゃぁ、どうしようかな……」

「あ、俺は、杖をセレクトしたよ。前やっていたゲームも魔職だったから扱いやすいかな、って思ってさ」

「私は、楽器と片手剣。魔法職じゃなくても、楽器があると支援バフがかけられるからね」


 楽器には、そんな効果が付いているのか……。


「となると、俺は双剣か……双銃、かな?」

『はぁっ!?』


 俺の発言で口をあんぐりと空ける二人。いやいや、そんなに驚く事なのか、と思いたくなるほどの驚きっぷりだ。

 双剣と双銃は、幾多のMMORPGで俺が選択(セレクト)してきた武器だ。大体、『不遇武器乙。』等と叩かれる事が殆どなのだが(火力は、かなり上がるが防御が手薄になる事必至なんで……)、そんな武器を使ってMMORPGで冒険するとかロマンだと思うのですよ。少なくとも俺はね。


「えっ、何で驚くの? 何かまずかった?」


 全く状況が理解できない俺は、和輝と穂之香の顔を交互に見る。

 追加したお茶で喉を潤しつつ口を開く和輝と穂之香。


「うーん、まず最初に、兄さんは、どの位内部の事知ってる?」


 いきなり、何を言い出しますか。


「えと、さっき教えてくれた種族の事と職業? 後、さっき見てたサイトに出てた武器の種類ぐらい?」


 記憶の断片を辿り記憶の欠片を口に出す。武器については、よく覚えていなかったので自分が目で見た情報の事だけだ。


「そ、その通りだよ。太一兄さん。今、外部に出て来ている情報だとそれぐらいしかない。

 だけど、実際は、もっと膨大なデータが存在する。兄さんが言った双剣や双銃の武器は、ドロップを聞いた事があったけど、そこに書いてあった職業にジョブチェンジ出来た人が居ないのよ。そこまで言えば、太一兄ぃに言いたい事はわかるよね?」


 つまりは、前人未到の領域って事を穂之香は言いたかったのだろう。心の中で参ったなぁと思いつつ俺もお茶を口に含む。使おうと思っていた武器が使えないとなると使用する武器を考え直さなければならないからだ。しかし、まてよ……?


「ねぇ、ちょっとした興味からの質問だけど、その、双剣を使う職業と双銃を使う職業って同じだったりする?」


 俺が気になった点は、そこである。

 剣と銃、相対する二つの攻撃範囲だ。剣は、近距離での戦闘を得意とし銃は、遠距離での戦闘を得意とする。有名所の職業の名前だと、剣は、剣士や戦士(ファイター)狂戦士(バーサーカー)等、銃は、銃使い(ガンナー)狙撃手(スナイパー)とかだ。

 双剣、双銃などがあるゲームとかだと、俺が知る限りでは、双剣使いや二刀流使い、ガンスリンガーや双銃使いと言った単語で登録されていた。


 そして、その参考にしていたゲーム以外の中に、たまたま剣銃士と言う職業があった事を思い出したのだが、二人は、首を振る。どうやら、俺の推理は、ハズレだったらしい。

 現在、LCOで確認されている職業(ジョブ)は、聞く限りだと、ゲームにログインした直後の固定職業である初心者(ニュービー)。新たな武器と魔法を扱えるようになった一次職(ファーストジョブ)の五種類。一次職が強化・派生した二次職(セカンドジョブ)の九種類。

 その先は、まだ到達したものが居ないらしい。


「いや、別々だね。装備可能職業が双剣の方は、【双剣使い】。双銃は、【双銃使い】だったかな」

「うん、和輝。それで合ってるわ。……そういえば、二次職で銃と剣どっちも装備可能職あったような……」


 何ィ!? そんな職業あるなら早く言ってくれよ。あ、でも、双剣か双銃使えるわけじゃないだろうしなぁ……


 二人の話を整理しながら、脳内で無数に存在するゲーム内のジョブ選択を一つに絞っていく。

 VR技術で自由に身体を動かせるなら、剣で自分から動いても良いだろうし、魔職で日常じゃ出来ないような事をやってもみたいとも思うが……遠距離の安定感も捨てがたい。


「ちなみに、双剣、双銃、共に出ている限りの情報だと、『攻撃特化の鬼』としか言いようが無いね。装備時の攻撃値の上昇率が異常だったからね。

 だけど、それ以外の情報無いし、走破したゲームデータ上にそのジョブに結びつきそうなデータは、見当たらなかったよ」


 二刀流と二丁拳銃は、諦めるしかないか――と、俺は、ため息を漏らす。非常に残念だが、今、俺の前に居る二人のうち、特に一人は、数日でゲーム内の仕様を探し尽くす程のヘビーゲーマーだ。その本人が、分からないというのだから、何か見落としていたり特殊な転職条件があったりするのだろう。


「なるほど……じゃぁ、今回は、銃でも使う事にしようかねぇ……」


 双剣や双銃を扱える職のジョブチェンジに挑んでも良かったが、和輝が見落としている箇所に重点を置いて探すなど、とんでもなく時間がかかる事なので遠距離からの安定感を俺は、選択したのだった。


「そっか、じゃぁ、太一兄ぃは、日付が変わると同時に『ダイブ』するの?」

「まぁ、そうなるか? 本当なら、今から寝て当日に備えたい所だがな……」

「兄さん。一つ言っておくけど、銃を使うんだったら、最初は、武器のグレードアップだからね?」

「? 一応、理由を聞こう」


 和輝から話された点は、二つ。

 一つ目は、職業から来るものだ。一次職から銃を制限無く扱える職は、『盗賊』。さらに、このジョブは、同時に弓も制限無く扱えるのだが、前衛で展開される近接職の剣士と冒険者の火力には、到底及ばないらしい。しかし、ステータスパラメータの中に『LUK』と言う項目が存在し、その値は、クリティカル率とクリティカル時のダメージを増加させる。

 盗賊ジョブは、このLUK値が伸びる幅が一番大きい。その為、クリティカルダメージは、期待出来る物があるのだとか。

 二つ目は、スタートする時に設定するスキル類での関係だ。スキルには、アクティブスキルとパッシブスキルがある。プレイヤーがアバターを製作した時に設定できるのは、最初にセレクトした武器によりスキルの項目が変わる。

 たとえば、俺の作ったアバターで剣を選んだとするとパッシブスキルとして【剣術】というスキルが現れる。この時、剣術の熟練度を上げる事で出現するスキルは、近接戦闘においての補助スキルである事が多い。

 だが、銃や弓等の遠距離攻撃武器の場合は、単発の威力が低い事に加え武器の制限により最大限の力が出せない。どう補助スキルに頼っても火力不足に悩まされる。その為、スキルに頼る戦闘術よりも最初に貰える資金で武器の強化を行った方が有利になるのだという。


「なるほどね。じゃ、和輝のその案に乗っかってみようかな」

「毎度、おおきに」


 どこぞの大阪の人だよ……、と俺が心の中でツッコミを入れると、穂之香も乾いた笑みを和輝に送っていた。



閑話休題(それはおいといて)



 八月一日、午後十一時四十八分。和輝と穂之香に「日付変わったら速攻でログインをする」と言った手前、俺はダイバーを片手にもう一度『ベータテスターのご案内』を読み返していた。武器についてもう少し補足が欲しいと思ったためだ。

 散々見直し分かった事といえば、LCOに初めてログインするプレイヤーに支給される防具についての事しか見当たらなかった。その項目に記載されていたのは、各防具の種類だけが記載されている簡素な物だった。《胴防具》、《腰防具》、《腕防具》、《足防具》。これが、このLCOにおいて存在する防具の種類だ。一番最初に配布される初期装備の名前は、初心者(ニュービー)セットと言う物らしく全てを装備した時にセット効果で防御力が+50される。案内書に書いてあったのは、そこまでだ。後は、実際にゲームに入って確かめろ……という事なのだろう。

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