7.実は熟してから取りましょう。
北の大地ヴァイオラ。
王都アタランテ(首都)は狩人の民と呼ばれる人々の街である。
太陽の昇る時間は短く、雨も少ない。平均して20度前後の気温だと言うから生活のし易さを感じる。精霊が全く居ない訳では無く、人が住まない動物の森や湖の底などに棲息している。両者に関係性は無く、土地に住む人々の様子も一様に同じく黒い髪に黒い瞳であり霊力も持たない。それはこの土地に住むには適している。狩りは主に夜の闇の中で行われる為、闇に紛れるには好都合とも言える。黒い瞳は夜目も効く。
霊力を持たない代りか知恵を持つ人が多く、移動手段や農作業用品・家事の助けになる物等が日々考えられているらしい。商人もこの地の人が多いのはその為だろうと思われる。
作物も以外と豊富で、芋や玉葱(名前は違うが似た品種)スパイス等の様に多くの雨を必要としない物には恵まれる。しかし葉物と呼ばれるホウレンソウ、レタス等(これも名前は違うが似た品種)や薬草は育たない。
(ここまで話を聞くとお互いの国に有る物と無い物がはっきりしてくるよね~)
そこで商人の出番が来た訳だ。
北と南は1本の太い海(河かしら?)で隔てられているので容易く往来が出来ない。強い精霊の力を持つ人は転移術を使えるが、転移先を見知っていなければ移動出来ない。転移を失敗する事も多々有った為、今では使う人は居ないと言う。で、北の人、船作りましたよ~沢山の物を積めるように大きな船を。
最初は物々交換方式だったらしいけど、需給供給の偏りが出てきた為に両国の共通硬貨ルイが作られお互いに潤う事になったみたい(1ルイ=100円相当)。北からは肉や魚・スパイスが多く入り、南からは米や小麦(こちらでも主食になるらしい米も小麦も偉大だ!ちなみに米はバタ、小麦はミシュと呼ぶ)珈琲も南の特産でこちらでもコーヒーと呼ばれている。あと薬草も多く殆どは長期保存の為に乾燥させた物なのだそうだ。
(何処の世界でも商人は逞しいね~黄門様に出てくる悪徳商人『越後屋』なんてのは居ないのかね~今度聞いてみよう)
午後も過ぎ、太陽が1番高い所に来る前に家に帰り着いた。
今はまだ初夏らしいが日中は暑いので出かける人は少ないみたい。お家でお昼寝したり、お茶したり、読書なんかもするみたい。石造りの建物が殆どなので中は結構涼しいし。
フェイは昨夜と同じ長椅子に横になって、書類を読んでいる。私は1人用クッションの上という定位置でお昼寝しながら、さっきの話を思い出してた。そーいやー国の名前も知らんかったなーと。日常的な事はララァとシャァドから聞いて知ってたけどさ。(スプーンとフォークはこっちでも同じ、箸は無いらしいとか、コンロの火は精霊石で付くとかイロイロ)
本当に違う世界に居るんだと、お散歩に行って実感してしまいました。
あ、そうそう!散歩してるとやたらと女性が寄ってくるんだよ!フェイってすごーく人気者だったんだねぇ。あっちこっちで黄色い声が飛び交っててさ、「フェイ王子~」「フェイ様~」とか、こっちでもイケメンの定義に変わりが無いんだと思うと意味無く安心しちゃったんだけどね。
(王子って単語に微妙に引っかかりを感じるけど、本人教えてくれないし)
夕方、レオンさんが来た。(騎士2号さんいらっさーい)
そう言えば昨夜は何時帰ったんだろう?全然気が付かなかった、てか忘れてた。(ごめんよ~)フェイが日中何やら見ていた書類を取りに来たそうだ。これからお城へ行くついでだと言って、私の事もついでのように撫でて行きました。
フェイと一緒に夕食を食べ、フェイと一緒にお風呂に入り、フェイと一緒にベランダで月を眺めました。何気ないフェイのお話に、私は首を横に振ったり縦に振ったり偶にはにゃ~と鳴いてみたりして楽しみました。(絵を付ければ夏休みの絵日記になるな)くすくす
その夜のコト。
本日は始めての外出でエラく興奮し、何時もより早めにベッドに潜り込んだ。もちろんフェイも一緒に。
夢も見ずに爆睡していたはずなんだけど、何か気になると言うか違和感を覚えると言うか変な寝心地?・・・あれ?体が熱くて痺れを感じるような。(あー興奮して熱出たのかなー)
ふわり、と体が宙に浮くような感じがして慌てて目を開けてみる。(またかっ!)
あれっ??
(フェイが目の前に居るぅ?何だか凄く嬉しそうだけど?どうしたの?)
(んん?手?手・・・にくちづけ・・・された・・・この手・・・ わたしだ・・・)
慌てて飛び起きる。自分の体を見る。。。。。。
(はぁぁぁ、やっぱり猫のままじゃん。また夢だったんだぁ)
隣で寝ているはずのフェイが起きてる。その瞳の奥に優しい光を宿して微笑んでる。そして・・・
「ヒカル。やっと会えた。」ぎゅってされた。
次回でやっと人科目になれそうです。あー猫耳だけ残したいけど無理だよなぁー。ああ悶絶して悩みそうです。