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猫科人科目。  作者: 黒字
29/35

27.嘘も時には必要です。

マリー様の待女が退室した私達を呼び止め、彼女はもう長くは生きられないと教えてくれた。毎日少しのシキミを混ぜたお茶を飲み続けていたと言う。それは自責の念だったのだろうか。彼女の黒い影は黒い涙と一緒に流れて行ったようだけど、もう彼女の心を治す事は誰にも出来ないと思う。薄氷で覆われていた彼女の心は溶けてしまったのか、粉々に砕けて突き刺さったままなのか、誰にも分からない。多分彼女自身さえも。


「森へ連れて行きたい」泉の言葉を思い出す。

「何故森へ行く」(少しでも彼女の心に平和が訪れれば良いと思う)

「森がね、呼んでるの」マリー様、フェイ、私達を呼んでいる。




家へ戻るとララァが優しく抱きしめてくれた。お母さんの様で時々友達で本当はお姉さんの様なララァの大きな胸に埋まるとなんだか安らぐ。(慣れてきたわー)

その横でルナを抱いたシャァが私の頭をぽんぽんと軽く叩いてくれる。



私はこんなにも幸せでいいのかな。マリー様の事を考えると余計に辛い。


「ひかるにはもっともっと幸せになってもらわないと困るわよ」

「人間幸せ過ぎるとマイナス思考になるのよ」

「素直じゃないわね。今日幸せだったら明日も幸せになれるよう努力するのよ」

「なのはは前向きで大好きだよ」

「あのね!ひかるが言ってた事でしょう!もう」

「だってさ、自分が努力してないのに幸せを感じるってどうにも落ち着かない」

「本当にあんたって面白いわ」

「あーまじで疲れたよー」

「こんな妖精いらないって言われるわよ、彼氏にさ」

「妖精らしからぬ よね。自分が1番分かってるわよ」

「あははは でもそんな人生も有りよ!ひかるだからね」

「他人事だと思って好き勝手言うわねー」


「・・・ヒカル、迎えに来た。そろそろ夜明けだ」(げっ何時の間に)

「・・・・・」

「・・・・・」

「ひかる、紹介して」

「あーあ、フェイ」

「私はなのは」

「じゃ、またね」



「何時から居たの?」ベッドの上で向い合せてます。

「少し前」私の頬を何度も撫でています。

「そうか」でも何で来れたんだろう?

「ヒカルが抱き着いて来たから渡れたんだろうな」寝相悪いんだよ私。

「ありがとう」なのはに会ってくれて。

「ヒカルの家族に挨拶くらいはしておきたかったからな」フェイは優しいよ。

「あ、クロムさんは帰ったの?」そう言えば居なかったな。

「・・・気になるのか?」(あ、もしかして地雷踏んだ?)目がすっと細くなった気が。

「思い出しただけだよ。そう言えば居なかったなって。今まで気づかなかったから」と熱弁を奮ってみる。

「私も思い出したよ。男物のシャツ姿のお前を」(それは思い出さんでいいし)

フェイの肘を付いた両腕が私の耳元に有る。それは顔が物凄く近いと言う事で、私がまるきり動けない訳でして・・・まして今日はタイムの香りが強く香り出している。

「クロムとは、何も無かったのか。本当に嘘を言っておらぬか」(言える訳ないじゃん!)

「本当だっ・・・てっ・・・は・・」(まずい)

口づけをされているんだけど少し薄目を開けて見ると、フェイがガン見しているのにぶつかる。(勘弁して下さい。そのお顔でガン見されると石化します。美人さんのアップは迫力十分です)

「・・・ん・・あっ・・・あ・・」(感じる自分が怖いよー)

何時もよりも強くて深い口づけに翻弄されて行く自分が抑えられない。

「ヒカル・・・私の・ヒカル・・」

小さな胸を包む大きな手、耳元で囁く優しくて深い声、私を捉えて離さない深青の瞳、どれも大切で無くしたくないと思うフェイの全て。

「フェ・・・ィ」

「ヒカル 愛している」

真っ直ぐに見つめられて、涙が溢れた。



結局2度寝をしてしまい、起きたのはお昼を過ぎておりました。

本当に生活リズムの改善が必要だと思われます。



その日の夕方近くなってクロムさんが現れました。手には小さな箱が二つ在ります。

「僕からのプレゼントだよ」そう言ってフェイに手渡します。

「いいのか」何か知っているようです。

お互いに手を固く握りあい、その手を拳にしてお互いに突き合わせる。(二人の挨拶かな)

「ヒカル、これを」と一つの箱を手渡された。

「開けていいの?」頷くのを見てから開けて見ると、深青色のピアスが一粒入っている。

フェイの箱には紫色のピアスが一粒入っている。どちらも小豆大の小振りの物だ。

「これは婚約の証と言われる装飾品だよ。相手の瞳の色の精霊石を身に着けるんだ」

「ピアス、した事無いよ」思わず渋い顔で耳を押さえる。痛いのは苦手なのである。

「これは痛くないよ」くすりと笑うクロムさん。


「ヒカル、目を瞑って」黙って目を瞑る、とフェイの指先が左の耳たぶに触れ「我、フェイ・デルフト・フォレスト=シーザリオここに誓う」ぷちっと音がしたけど痛みは無かった。そっと触ってみると耳たぶの少し上辺りに納まっている。(フルネームを聞いたのは初めて会った時以来だな)

フェイには椅子に座ってもらい(だって届かない)クロムさんに確認しながら同じように左の耳たぶに触れ「私・・花篭ひかる・・こ・ここに・・誓う?」で良いんだっけ?まぁいいか。クロムさんも笑いながら頷いてくれている。少し震える指先でピアスを押し当てるとスルリと嵌った。

目を開けたフェイの一言は「何故疑問形なのだ!」(ごめんなさい!)



その夜、婚約のお祝いだと腕を奮ってくれたララァとそれを手伝ってくれたシャァドにフェイから贈り物がされた。それはやっぱり二つの箱。二粒のピアスだった。泣き出したララァ、困った様にはにかむシャァは、その場で誓いを立ててくれた。

フェイが随分前から二人の為にクロムさんに頼んでいたのだそうです。そう言えばクロムさんは真宝商でしたね。

「ララァ、あのこれを」おずおずと差し出したのはトゥシェ(ポプリ)の香袋とトゥシェ入りのシュシュ2個。「下手でごめんね」と言ってる側からまた泣かれてしまった。

「ヒカル様の手作りですか!何て幸せな事でしょう」ララァは何時も黒い紐で髪を結わえているだけなので、少しだけ可愛い柄で作ってみたかったのです。

そんなこんなで大騒ぎな夜は更けました。


「ああ、俺も幸せになりたいぜ・・・。」

クロムさんの独り言に誰も答えてあげられませんでした。

そんなクロムさんの膝の上に飛び乗って「にゃん」{意外と近いですよ}とルナが鳴いた。



嘘は付きたくないものですよね。でも人間関係を潤滑にする為に時には必要かもしれません。小さな嘘もバレタ時は嫌なものですよね。人間関係には気を付けましょう。

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