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猫科人科目。  作者: 黒字
27/35

25.人の心は壊れやすいものです。

真っ白く腰まで伸びた髪はゆるいく編まれて背中に垂れている。くりっとした大きな茶色の瞳は濁っていて窪んでいる。頬は削がれ顎も尖っているが、上がった口角に引き上げられた唇はピンク色で艶めかしい。背格好は私と同じ位か少し細いだろう。小鳥の囀りの様に話す声は幼い少女を思わせる。

「これはカモミール、こっちはコリアンダー、それとナスタチュームも可愛い花よ。そうねでも1番好きなのはマリーゴールドよ。皆が私の様な花だと言ってくれるわ。鮮やかなオレンジ色の花びらが上を向いて大きく咲き誇る姿は素晴らしいのよ」そう言って花を見下ろしている。その横でルナが蝶々と戯れて遊んでいる。


「フェイ様の元にもお茶をお送り致しましょうね。」そう言って次々と草花を摘んで行く姿は楽しそうだ。こちらの世界の植物や動物等は日本と余り差異が無い。私が知らないのもあるが、特に草花は名前の同じ物が多い(殆どが英国名だけど)。薬草に関しては精霊文化の為か見た事の無い物が多く当然名前も知らないが、ハーブは数種類同じ物があった。後珈琲と紅茶も存在するが日本茶や中国茶は無いらしい。多分英国圏内の人が来ても違和感は殆ど無いと思う。地球も昔々は精霊の加護が有ったのかもしれない。文明が発達すると共に山や森が消えたのと同じで精霊も少しづつ減っていったのかもしれない。


そんな事を思いながら向こうの景色を眺めていた。すると、

「また、あなたにも手伝ってもらわなくちゃね」と言って手にした花。

{ああ!それはダメ!}思わず飛び出してしまった。

「誰?誰か居るの?」マリー様の瞳が揺らいでいる。

「にゃーん」ルナがマリー様のスカートを引っ張って向こうへ行こうと諭す。

「あら猫ちゃん。そうね、向こうの葉も摘みましょう」そう言って消えて行った。


あの花は『悪しき実』と云われたシキミだ。



むくっと起き上がる。

丁度ララァも起きて着替えている最中のようだ。その足元へ寄って行きちょこんと座る。

「もうお目覚めですか?もう少しお眠りになった方が宜しいですよ」そう言ってくれるのだけど気になる事があるので自室へ行きたいと先立って歩いて行き、自室の前で座って見上げる。

「お部屋ですか?分かりました。それでは戸は開けておきますね」

「にゃあ」(ありがとう)

直ぐに部屋の窓辺にある机へと飛び乗る。そこには私のバッグが置いてある。

バッグの中に顔を入れて、ごみと判別した物を一まとめにした袋を口で咥え、なんとか引っ張り出す。スーパーのレジ袋は口を結んであるので、中の物が散らばらない様に牙で食い千切る。前足で袋を抑えながら中から紙を取り出そうとするのだけど上手くいかない。こんな事なら片づけなきゃ良かった等と思いながら必死に奮闘していた。


「猫ちゃん、何してんの?」と声を掛けてきたのはクロムさんであった。(まっずーい)

一目散に逃げようとしたけど、簡単に捕まえられてしまいました。机の上の様子に気が付き「ふーん、悪戯はダメだよ。おしおきが必要だね。」(私の物だい!)私を抱いたままスタスタと歩き出した。



「にゃー・・・」と何度も鳴いたけど、誰も来ません。しょうがないか、別棟の客間だもん。おしおきと言いながら「一緒に寝るぞ」とベッドの中へ入れられてしまいました。どうやら先程まで飲んでいたようです。お酒臭いですよー。戸はがっちり閉められているので開けれません。この部屋はシアの部屋とは別の部屋ですが、何だか物が沢山置いてあります。もしかしてクロムさん用の部屋かもしれないです。部屋の匂いはクロムさんと同じレモングラスの匂いがするからです。

(しかし困ったなー)これでは起きるまで待つしかないだろうし。


コトコト・・・コトコト・・・


部屋の隅にある大きな荷物から音がします。首を傾げながら暫く見ておりましたが、荷物が動いて居る様に見えます。少々怖いのですが、目を逸らす事も出来ません。だって、荷物の隙間からニョキニョキと青い葉っぱが次から次へと茎に現れながら伸びて来ているんです。(どーしよー)部屋の隅でその様子を見ていたけど、葉っぱの襲撃は目の前まで来ています。目の前の1枚の葉っぱが{おいで}と言っているようですが如何致しましょう。小さなカエルに似たその葉っぱの前におずおずと出てみます。{飲んで}葉っぱの上には朝露の様な丸い水の玉が乗っています。(カエルの顔に水・・・罰ゲームかなぁ)物凄くドン引き状態なんだけど、葉っぱの声は至ってやさしい。溜息付きたいけど、ぐっと我慢して大きく口を開けてみた。ぽろっと水滴が1粒流れ込みました。



{フェイ!助けて!}必死で呼びかけます。



「何してたの」(何て答えればいいのー)

「あの、だから閉じ込められてて出られなくて・・・」

「そのシャツ俺のだよね?」(だって裸はまずいって)


水滴を飲んだら人型に戻りました。唖然としてしまったのですが、もうしょうが無いのでクロムさんのシャツをお借りして(膝まで隠れます)部屋を出ようとしたのです。しかし目を覚ましてしまったクロムさんに腕を捕まえられしまい、今に至ります。

「あ、あのだから、説明すると長くなるんですけど」と説明しようとしているのですが、腕を思い切り引っ張られ何故か抱きしめられてしまいました。(えっ)

そのままベッドの上へ転がされ、腕を掴まれたまま抑え込まれてしまっています。(まずっ)

「名前は?」何だかクロムさんの緑色の瞳が濃くなっているような気がします。

「あの・・・ひ・・・っ!」顔が近づいて来るのを必死に避けます。(何故だよー)

解かれた腕を必死に動かしもがくけれど、あごを抑えられ強引に重ねられた唇は少しカサ付いてお酒臭かった。

「んーっ・・・んっ・・・や・・」


段々熱を帯びる口づけに必死で抵抗するが、意外と逞しい躰はびくともしない。そう言えば剣の学校で上位2名はフェイとクロムさんだと言っていたっけな。(あー泣きたい)

クロムさんの唇が首筋へと伸びて離れた時に思い切り叫んでいた「フェイ!」と。

その時「えっ」と言う言葉と私の顔を見降ろしたクロムさん。次の瞬間、物凄い足音とバタン!と開いた戸にはフェイが立っていた。



「俺の天使が舞い降りたと思ったのになぁー」右頬を擦りながら言ってます。

「悪いな。ヒカルは私の天使だ」一発で許してやると笑っています。



フェイはクロムさんを一発殴り、私を抱き上げて部屋まで連れて帰ってくれました。急いで着替え、フェイとクロムさんに事情を説明してやっと分かってもらえましたが冷や汗ものです。私が着替えている間に大まかな事は話してくれていた様なので、直ぐに納得してくれて何よりです。(口づけの事は無かった事にしましょうね。クロムさん!)

「しかしあの猫ちゃんだったとはね」(しょうが無いじゃない)

「言っておけば良かったのかもしれんな」(まぁ確かに悩み所よね)

「私だってまさかと思ったもん」(普通あの展開は想像しないわよ)

「これは水草でウォーターフロッグと云うんだ。ここに来る途中森で一休みしてたらポコポコと音がするんだよ。音のする方へ少し歩いたら湧水があって小さな泉になってたんだ。水筒に水を汲んだ後、掌ですくって飲もうとしたら絡まって2・3枚千切れてしまってね。私の手に付いて離れないからそまま連れて来たんだよ。」

そう言いながらテーブルの上のウォーターフロッグに目をやる。ララァに用意してもらった背の低い花器に入れられてとても嬉しそうである。物凄く増えているけど。

「妖精方は何でもお見通しって事なのかな」フェイが呟く。

「彼女自身が妖精ならさもあらん」クロムさんがこっちを見て微笑む。


「でも本当に妖精かい?妖精なら転移で逃げれたと思うんだけど」首を傾げられても困ります。

「出来ないよ。半分人間だもの」これは本当の事。試してみた事が有るけど一歩も移動しなかったし、ジローさんからも無理だろうと言われてますもん。

「転移をするには体が重すぎるんだってさ」トンとジャンプをしてみる。

「それだけ小さくても重いのか」と不思議がられても小さいは余計です。

「小さい言うな!」


コンコンとノックの音がしてララァが戸を開ける。

「旦那様、マリー様よりお届け物です」

ララァの手には少し大きめなかごが有り、足元にはルナが居た。


シリアスな雰囲気で進める予定が、クロムさんのお蔭で誤った方向へ行ってしまいました。何とか軌道修正しましたが、マリーさんのお話は次回に持越しとなってしまいました。

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