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猫科人科目。  作者: 黒字
25/35

23.人の心は掴めぬものです。

「ヒカル、少し休もう。話が長くなってしまったな」

こくりと頷く。


「ララァ お茶を頼む。ヒカルにはミルクを」

(う゛ーーー)何も言えないのであります。言いたくても言えない状況、分かります?

大変遅くなりましたが只今 私 花篭ひかるは 猫 に戻ってしまいました。

何故でしょう!?

ジローさんには消えるよりはマシだと言われましたがどういう意味でしょうか。

また消えかかったのでしょうか。

ああでもでも、今は何も話さなくていいから少し嬉しいです。

昨日の恐怖からまだ完全には抜け切れていない今はこの状態でもほっとします。




ふっと目が覚めるとそこは何時もの部屋。フェイと私の寝室だったのです。

隣の部屋からは数人の話し声が聞こえています。

(あー頭が重い)と思いながらも昨日の事が脳裏を過ぎて行きます。

何から考えたら良いのかとぼーっとしていたら、ルナがやって来て鳴きました。

{おや、可愛いですね}と。

慌てて見下ろす自分の体。現実逃避し過ぎだよ自分。

{精神的な限界値ぎりぎりって所ですね。}

まじ一杯一杯だし。

{それ以上だと本当に消えますので気を付けて下さいませ}

それってまずくないですかね。


猫の私にジローさんは「無理せず休む様に」と言いボサボサの毛並を撫でて行った。

レオンさんはやっぱり持ち上げて確認し、只笑って行きました。

お兄様は吃驚している様で無言で見つめています。

フェイは「久しぶりだな」と言って笑いました。


本当なら私の体力が戻ってから話した方が良いのでしょうが、フェイ曰く

「ヒカルには早目に話す方が得策だ。時間が経つと悪い方へ考えるからな」と。

はい。良くお分かりで。



お兄様が猫の私に話しかけているのは少し奇妙です。

「マリー様は夜会の時にそなた達をじっと見ていたそうだ」これは古参の従事の方がお兄様へ直接お知らせされたらしい。

「フェイお前は、お前の瞳はアオイ殿に良く似ている。その傍らにイリス似のヒカルが居れば幻覚を起こすかもしれないな」とお兄様は溜息をつかれた。


青い瞳は力を持つと言われ王家の者、特に男子に多く受け継がれる。アオイの様に一般の者が持つのは珍しいが大概何かしら秀でた力を有している為、王宮へ召し抱えられる事が常である。

アオイの瞳は青色、少し緑がかった海の青。彼は剣の使いと言われる程剣の扱いに長けていた。


そしてフェイの瞳は深い青。海の底を感じさせる青を持っている。

これ程深い青の瞳は稀であり暗がりでは黒い瞳に間違えられる程である。

そんな彼はどうやら頭も良く剣の扱いにも長け、見目も麗しい・・・ですね。

青い瞳には人を惑わす力も少なからず有るらしく、その瞳に見つめられると恋に落ちると言われているのだそうです。

(私は落とされた記憶が無いんだよねー。落ちたのか?落ちて無いのか?ふむ)


私が城から帰る時にフェイが呼ばれたのはマリー様が騒ぎを起こしていたからなのだそうです。城の方々は私にマリー様を会わせるのを嫌がり、何とか早急に帰そうとしていたと言う事です。母上も誤解を解こうと何度もお会いになり話されたと言いますが、聞く耳を持たなかったらしいです。フェイの側を離れず妖精の悪口を言い続ける姿は何とも不憫でならないと、したい様にさせていたのだそうです。

するとマリー様はフェイの事をアオイ様と呼び出したと言うのであります。これではマズイと思い、マリー様の言葉を信じたフリをしてご令嬢様と散歩に出たのだそうです。

「ヒカルに話した方が良いとずっと考えていたのだが、なかなか家へ戻れなくてな。結果最悪の状況で聞かせてしまった。本当にすまなかった」そう言いながら私を抱き上げるフェイは悲しそうな顔をしています。



「王子、そろそろ戻ろう」レオンさんがお迎えに来たようです。

「そうだな。皆も心配しているだろう」お兄様もご苦労様です。

「ガイアも連れて帰るぞ。ここには餌が無いからな」(ありがとう!)

今まで黙って私の顔を見ていたお兄様が、初めて頭を撫でて下さいました。オッカナビックリの手つきは猫に触るのが初めての人そのものです。くすくす

「二人とも暫くはゆっくりするのだよ」そう言って帰って行きました。



昨夜は沢山の汗をかいたので早目のお風呂に入ります。

フェイも昨夜はお風呂に入っていないので一緒に入っております。

「もう一度石鹸で洗うか?」うんうんと頷きます。猫の状況もお互い慣れたものです。


お風呂から上がるとララァが待っていました。やっぱり懐かしそうな顔をして笑っています。体を丁寧に拭かれた後はシャァが持って来た薬草湯(冷ましたもの)が差しだされます。(ぎゃーこれ苦手だよー)と何とも情けない顔をしておりましたが、ルナが隣で{全て飲むようにね}と監視しております。しょうがないですもの飲みますよ、そりゃもう必死でね。その様子を3人が笑って見守っておりました。



{ねぇルナ、会った事の無い人の夢を渡れるかな}

{それは無理ですよ。もしかしてマリー様ですか}

{うん。気になるの。あの大きくて黒い影が何なのか}

あの時、稲妻の光に照らし出された黒く大きな影はマリー様を覆っていたのだ。

王宮のガラス窓に映ったその影は余りにも恐ろしく、振り返って見る事も出来ずにただ逃げたのである。そのガラス窓の向こうにフェイが居る事も知らずに。

{そうですね、私がマリー様の元へ参りましょう}

{私が行けるといいんだけど、この瞳だと無理かなって思うんだ}

{ヒカル様は無理ですよ。旦那様が離しませんよ}そう言って笑った。


「ルナ? ここに居たのね。今日は私と一緒に寝ましょうね」そう言ってララァが迎えに来た。ルナも嬉しそうに尻尾を振っている。

フェイの客間の長椅子に2匹で丸くなってくっついて相談事をしています。見た目には寝ている様に見えるでしょうね。

そんな私たちを黙って見つめて居たフェイも、ルナが出て行ったので私を抱き上げます。

「何の相談をしていたのだ」(あれま分かりましたか)

「余り考えずにまずは元気にならんとな」(うん分かってるよ)

フェイの首元に頭を乗せられたので、意外に太い首に噛み付いてみた。何となくだけど。

「・・・悪戯が出来るなら直ぐに元気になるな。」そう笑ってベッドへ向かった。


フェイは昨夜、寝ていないのだろう。直ぐに寝息が聞こえた。

私もまだ頭が重い。でもマリー様の言葉が頭から離れない。そんな事は無いと分かっているのだけど繰り返し聞こえてくる取り替え子と言う言葉。私を捨てる為に異世界へ渡ったのだろうか。まさか。自分の命と父の命を犠牲にしてまでする事では無いはずだ。

何かの間違いだ。きっと何かが有ったのだ。

マリー様の夢に渡らなければいけないと強く思うのだが、私が見た夢はなのはとトランプをしている夢だった。それも七並べってどうよ。


フェイは他の女性と一緒に居る所を見たひかるが悲しんだと思って居るのですが、ひかる本人は気にしていないようです。それよりも真っ黒な大きな影の方が気になります。この世界、魔物は居ないと言っておりましたが・・・

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