10.甘い言葉には注意致しましょう。
只今入浴中につき質問厳禁です。
「なんで?」
「昨日も一緒に入ったぞ」
(オカシイ!絶対オカシイデショ。)
約1週間の猫生活に慣れたせいか、湯殿に行くと言われると「はい」と素直に頷きそのまま洗い場に向かいます。今日も同じ行動を取った所、途中で止められ洋服を脱がされました。(だって猫だったからさ。服を脱ぐという行動を忘れたんだよ。ハッと気が付いて逃げようとしたのだけど。時すでに遅しってヤツ。)
「だって、恥ずかしいもん」
「ヒカルは綺麗だ」
「・・・・・・・」話を変えてみよう。
「もしかして、変化した時もこの姿だったのかな」(自分の体を見下ろしてみる)
「ああ、光を纏っているようで美しかった。誰にも見せたくなくて近くにあった毛布で包んだが、もっとゆっくり見ていたかったな」
「・・・・・・・」
「赤く染まった頬がまた可愛いな」
(は、恥ずかしい。恥ずかしすぎてお湯から出れないよー。今更だけど何で一緒にお風呂なんだー)
結局のぼせてしまい、フェイに抱きかかえられて湯殿を退場です。
夜着を用意していたララァが慌てて私の着替えを済ませ(すぽっと被るロングパジャマみたいな形。紺色で胸元に白いフリルが3段入り)そして水を飲ませてくれました。その後フェイはララァにお説教をされていました。
「寒くはないか。夜はまだ涼しいぞ。」
寝室のバルコニーで膝を抱えて月を見ていた。水色の月はとても綺麗だと思う。
「気持ち良いね」
「何を考えている」
「・・・朝起きたらまた変わるのかなって」
「その心配は要らない。もう変わらない。」
「・・・そうなんだ」
「先日の夜もここで何やら機嫌を悪くしていたな。あの時も夢を見たのか。」
「・・・どうしてそう思うのかな」
「今日もそうだが、あの日もヒカルの体が少し光っていた。もしやと思ってな」
「今日も?・・・!!!そうだ!私の変る所、見たの!?教えて!」
フェイはすっと目を細め微笑みながら話始めた。
「何と言ったら良いのか・・・まず、精霊石を持ち帰りそなたの傍らに置いたのが始まりだったな。直ぐにやわらかな風が舞い込み始め、ヒカルの周りを囲む様に沢山の小さな精霊達が集まりだしたのだ。その精霊がな、次々と猫のヒカルの鼻にくちづけをしているのだよ。」見ていて微笑ましい光景だったと呟き私の鼻の頭にキスを落とした。
「すると徐々にヒカルの体が光始め、瞬く間に大きくなっていったのだよ。その光がふわりと一筋になり傍らの精霊石に注ぎ込まれていった。その光の後には体を丸めた「人」の姿のヒカルが居たのだよ。精霊石はまだ輝いていたがヒカルが目を覚ますと沈黙した。」
「そんなだったんだ。見たかったな。」
「あの光景は私の宝だよ」
フェイに手を取られて立ち上がる。そのまま引かれて胸の中へ納まる。少し痛い位に抱き締め銀色の髪の中に顔を埋めている。と、「寝るぞ」と抱き上げられた。
ベッドに降ろされると同時に口づけられる。最初は啄ばむ様に軽く 瞼、頬、首筋と下りて行く。
「フェ・・イ・・ま・・って・・」(体に電気が走ったみたいだ。どうしよう。)
唇で塞がれる。やさしい口づけが徐々に深くなる。
「・・・ふ・・んっ」(息はどうやってするっけ)
暖かな塊が滑り込んでくる。そして私のを絡め取る。
「ん・・・」(待ってくれー)
「ヒカル。」髪に埋まりながら耳たぶを咬まれ名前を囁やかれる。(色っぽいしー)
「ちょ、ちょっとたんま!苦しいよ!」
「たんま とは?」
「あー 待て って事」(ついうっかり方言が出るよ)
「待てるわけが無い。今まで待ったぞ。」
「今日は勘弁して下さい」
「かんべん とは?」
「・・・許して下さいって事です。」(うぅー)
「・・そうだな、何の夢を見たのか教えてくれれば考えよう」
「・・・・・」(今それを聞くのかー!)
返事に困っていたらまたキスが降ってきそうだったので、断念します。
「変身する夢だよ。」
「何に」
「むー 言いたくない」
「そうか」
にやりと笑ったフェイさん。瞳が輝いてるよー。
またキスの嵐であります。ごめんなさい。負けました。
「まっ・・・いう・・・はぅ・・・」(待って!言います!ごめんなさい!)
「どうした?」めちゃくちゃ悔しいのは何故だ。
「・・・・・ かえる」(あーん思い出しちゃったよー)
「・・・・・」声を出さずに笑うフェイさん。(ちくしょー)
まじで涙出そうになった。思い出しただけでも怖いし。かえるは苦手なんだよ。
「すまない。嫌な事を思い出させたな。」
そう言って旋毛あたりにキスをして、後ろから抱きしめられました。
寝入る頃{おやすみ}と不思議な響き。私も{おやすみ}とそれに呼びかける。
ベッドの両側には小さな木製のチェストがあり、それぞれに青の精霊石と紫の精霊石が置かれている。それが少しだけ光ったのは誰も知らない。
ここまでが前置きの様なお話になりました。次話はフェイの回想録になります。宜しければお楽しみ下さい。