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どんな願いも叶える猫

俺の中二病は死んでも治らないことが確定した

掲載日:2025/12/17

どんな願いも


何度でも


一才の代償なしで叶えるにゃ


ただし……ちょっと気まぐれだよ



夜風が窓の桟を揺らす薄暗い部屋で、俺は例のノートに最新の“中二設定”を書き込んでいた。世界を救う力とか、漆黒の血脈とか、まあそんな感じ。


その時だった。


「なんでも願いを言ってみるにゃ。」


窓際に、さっきの迷い猫が座っていた。


「……喋った?」


「うん。どんな願いも叶える猫だよ〜。おやつのお礼にゃ。」

尻尾がくるりと巻き上がる。軽い調子の声。


心臓が飛び跳ねた。

来たぞ、ついに来た。俺の黒歴史バインダーが震えるレベルの奇跡が。


「ど、どんな願いでも?何回でも?後で魂とか抜かれたりしない?」

「ないない。やらない。面倒いから。」


それなら……言うしかない。

「異世界転生させてくれ!チートと癒し系可愛い彼女もセットで頼む!」


猫は楽しそうに尻尾を揺らす。


「面白いにゃ。みんなね〜、お金欲しい〜とか、不老不死〜とか、そんなのが多いのにゃ。」


「叶えたの?それ。」


「うんうん。金持ちになったり、不老不死になったりして楽しんでるよ。」


軽すぎる口調で世界の理をひっくり返すなよ。


「じゃ、早速転生させてあげるから……死んで?」


「え?」


「え?死ななきゃ転生できないじゃん?」

猫は当然のように尻尾で床を叩く。


「じゃ、死ぬとこから叶えよっか? どれがいい?」

猫は俺のノートにサラサラと「あなたの死に方リスト」を書き始める。


「やめろ。こええよ。」


「じゃ、死んだら転生、チート、可愛い子ちゃん。はい決まり。」

猫は満足げに立ち上がろうとする。


「ま、待ってくれ!」


とっさに言葉が口を飛び出した。

「ウチの猫になれよ!そしたらいつでも願い叶えられるだろ!」


我ながら天才的な提案だった。脳内でファンファーレが鳴った。


猫は振り向いた。金の瞳が静かに光る。


「その願いは叶えられた。」


「……え?今なんて?」


「アタシの五番目の家にしてやったの。気が向いたらまた来るにゃ。」


「五番目!?」


「うん。もう夕飯の時間だから帰るにゃ。」


ふわりと身を翻し、猫は外の階段を軽やかに降りていく。

夕闇がその姿を飲み込み、気配は完全に消えた。


それから毎日窓辺にチュールを置き続けたけれど……

猫は二度と来なかった。


――まあ、いいさ。もし俺が死んだら、その瞬間、たぶん異世界で楽しくやってると思ってくれ。


猫の気まぐれスケジュールに、俺の来世も任されているわけだし。

それならそれで、悪くない旅になる気がする。



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