アルトの名声と街の発展
シーン1:城壁完成
アルトが城壁都市計画を発表してから、数ヶ月が過ぎた。
村は、アルトのリーダーシップと、リリアの支え、そして村人たちの協力によって、数々の困難を乗り越え、一つの共同体として強く結束していた。
そして、ついにその日がやってきた。
村をぐるりと囲む、高さ10メートルはあろうかという、純白の美しい城壁が完成したのだ。
それは、ただの壁ではなかった。アルトの緻密な計算によって設計された、見張り台、狭間、そして有事の際には迎撃用の仕掛けが作動する、完璧な防御機能を備えた「城塞」だった。
「で…できた…」
「俺たちの村に…城壁が…」
村人たちは、完成した城壁を見上げ、感極まって涙を流した。
もう、魔物の脅威に怯える必要はない。この壁が、自分たちの生活を、家族を守ってくれる。
彼らは、この偉業を成し遂げた青年を、心からの尊敬と感謝を込めて、こう呼ぶようになった。
「——我らが領主、アルト様」と。
シーン2:移住者の増加
「森の奥に、魔物に襲われない奇跡の村があるらしい」
「なんでも、一人の若者が、たった数ヶ月で巨大な城壁を築き上げたとか」
エルム村——改め、城塞都市『アイギス』の噂は、旅の商人や冒険者たちの間で、瞬く間に広まっていった。
噂を聞きつけ、多くの人々が、この辺境の地に興味を抱き始めた。
最初にやってきたのは、腕利きの職人たちだった。
鍛冶屋、革細工師、大工。彼らは、アルトが作り上げた街のインフラと、その将来性を見抜き、アイギスに工房を構えたいと申し出てきた。
次にやってきたのは、商才に長けた商人たちだ。
彼らは、アイギスが安全な交易拠点となることを見越し、次々と店を開いた。
そして、戦乱や貧困から逃れてきた、多くの一般市民も、安全な暮らしを求めてアイギスへと移住してきた。
アルトは、彼らを皆、快く受け入れた。
【自動機能】によって、新たな住民のための家を次々と建設し、商業区画を整備し、街の規模を急速に拡大させていく。
かつては十数人しかいなかった寂れた村は、わずか半年で、数千人が暮らす、活気あふれる巨大な都市へと変貌を遂げたのだ。
街の中心には、領主であるアルトの館が建てられた。
リリアも、街で一番大きな薬局を開き、多くの人々の健康を支えていた。
アルトの名声は、アイギスの発展と共に、ますます高まっていく。
彼のスキルは、もはや「地味な雑用スキル」などではなかった。
街を創り、人々を守り、生活の全てを豊かにする——まさに「神の御業」として、大陸中にその名を轟かせ始めていた。
彼が追放されたSランクパーティー『竜の牙』のことなど、もはや彼の記憶の片隅にすら、残ってはいなかった。