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とばっちり  作者: ナタデココ
14/15

修学旅行の「とばっちり」#11

城野目線です。

夕食が終わって、部屋に戻る途中の廊下。

旅館の薄暗い廊下に、足音だけが響いていた。

「城野さん……!」


後ろから、少し息を切らせた声が届いた。

振り返ると、高木くんが私と同じ体操服のままで立っていた。


「ちょっと……話したいことがあって」


「……うん」


人気のない端の窓辺に移動して、私たちは向かい合った。


高木くんは、しばらく何も言わなかった。

でも、その沈黙の中に、何かを抱えているのがわかった。


「実はね……」


彼が静かに切り出す。


「スーツケース、もう届いてたんだ。……昼過ぎには」


「……え?」


「でも、着替えなかった。君と、同じでいたかったから」


頭の中が、真っ白になった。


「それって……ずっと……?」


「うん。君が僕のために体操服でいてくれたって、そう聞いて……本当かどうかはわからなかったけど、それでも、うれしかったんだ」


高木くんはまっすぐ私を見て、続けた。


「城野さんのことが、好きだよ」


私は息を飲んだ。

だけど、心の奥にある答えは、もう決まっていた。

私は山中っちに振り向いてもらうために体操服を着ているんだ。


「……ごめん。そういう気持ちには、なれない」


高木くんは、少しだけうなずいた。でも、それ以上なにも言わなかった。でも、私は、その沈黙の中で、急に気づいてしまった。


(……明日、私だけが体操服なんじゃない?)


高木くんは、私のために体操服を着ていてくれた。でもその理由は、もう今ここで終わってしまった。明日からは、高木くんはきっと私服に戻る。


(……私だけ、体操服?)


あの笑い声。今日の視線。

あれが、また明日も――私ひとりに降ってくる。


(……やだ)


急に、足がすくんだ。

覚悟できてたはずだったのに。

山中っちはもはや私のことを見ていない。


もしかして…私はただ1人辱めを受けるだけ?

それはいや…いや…


高木くんが何か言おうとしたけど、私はそれを聞く余裕すらなくて、「……じゃあね」とだけ言って、早足でその場を離れた。


自分の足音だけが、長い廊下に響いていた。

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