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とばっちり  作者: ナタデココ
13/15

修学旅行の「とばっちり」#10

富田さん視点です。

正直に言うと、あんまりよくわかってなかった。

何が起きてるのか、じゃなくて。

どうして、こういう空気になってるのか――それが。


班ごとの夕食は、思ったよりちゃんと旅館っぽくて、

テーブルには魚があって、茶碗蒸しがあって、鍋まであった。


「わー、本格的~!」

って騒いでた子たちもいたし、私も一瞬テンション上がった。


でも、うちの班の席に着いたとき、すぐに気づいた。


あ、なんか、りさの顔が変だ。


表情が、っていうより、目がうつろっていうか、どこ見てるのかわからないっていうか。

疲れてるのか、考え事してるのか、たぶんその両方。


「大丈夫?」


って聞こうとしたけど、なんかタイミングを逃した。

そしたらすぐに、あの事件。


りさの手がすべって、味噌汁が、ざばぁって。


私、反射的に動いてた。

「ティッシュ取るね!」って、声が先に出た。


でも、そのあとのことは、もう……めちゃくちゃだった。


高木くんが立ち上がって、ハンカチ差し出して。

なんか、周りがヒソヒソ言い出して。

しかも、りさが、ずっと、黙ったままで。


そして、片岡が――言っちゃったんだよね。


「透けてない? っていうか、あれ……」

「おい、見んなって!!!」


って、私が怒った声を出したとき、たぶん私の顔、真っ赤だったと思う。恥ずかしくてじゃない。なんか、悔しくて。


りさは何もしてない。

頑張ってただけなのに。

高木くんのことを好きなのかはわからないけど

たぶん彼に寄り添っただけなのに。


でも、それ以上に私を困惑させたのは、里村さんの言葉だった。


「あんまり無理しないほうがいいよ」とか

「似合ってるよ」とか。

その声が、なぜかすごくきれいで、やさしくて――でも、どこか寒くて。


(なんで、あの子、あんなに平気な顔でいられるんだろう?)


私は、わかってる。

あの子が悪いことを言ってるわけじゃないって。


でも、あんなに「正しい」言葉を並べられると、

何か裏を感じる。


りさは、泣いてたわけじゃないけど、

泣くのをやめた顔をしてた。


高木くんは、何も言わずに座り直した。

ずっと下向いてて、きっと自分のしたことが裏目に出たって思ってたんだと思う。


山中くんは……正直、あのとき、見てなかった。

隣の葛城さんと話してるのが、ちらっと見えたくらい。


それぞれが、それぞれの方向を向いていて、

でも、一番真ん中で傷ついてたのは、間違いなく――しろのだった。


私、何もできなかったな。

ティッシュぐらいしか、渡せなかった。


ごめんね、って思った。


でも、もし明日の朝も、まだしろのが笑えてなかったら――

今度こそ、ちゃんと、声かけよう。


「だいじょうぶ?」じゃなくて、

「一緒にいよっか」って。


私、そういうの、得意じゃないけど。

でも、それくらいは、たぶん、できる気がした。


夕食のあと、お椀の底に残ってた味噌汁のにおいが、

なぜかいつまでも鼻に残ってた。


しょっぱいのと、ちょっと焦げた匂い。


それが、なんだか、全部を物語ってる気がした。

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