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とばっちり  作者: ナタデココ
12/15

修学旅行の「とばっちり」#9

里村さんの目線です。

──よし。

誰にも聞こえない声で、私は心の中でつぶやいた。

もちろん、表情は変えない。口角はほんの少しだけ上げて、優しいまま。

いつも通りの「いい子」の顔のまま、隣でうつむく城野さんを横目で見つめていた。


ちょっとやりすぎたかもしれない。

でも、まあ、いいでしょ。あれぐらい。


……私だって、ずっと見てきたんだよ?

あの子が、どれだけ山中くんに近づこうとしてたか。

わざとらしく笑って、声のトーン変えて、他の男子と話す時とは全然違う顔で。


ほんとに「努力」だったのかな?

それとも、ただ、誰かの注目を欲しがってただけ?


どっちにしても、滑稽だよね。

体操服なんていう「武器」まで使っておいて、

山中くんを誘惑しようとしてたんだ。

結局こんなふうに破廉恥な姿になって。


あの子は体操服しか持ってきてないんだ!

と気づいたのは昨日の夜だった。


あの子がお風呂に行っている際、メイク落としを借りようと、こっそりスーツケースを覗いたら、その中には体操服しか入っていなかった。


最初はなんのため?と思ったけど、自分の体を使って山中くんを落とすためだと気づいた。


それは阻止しないと。

幸い高木くんも体操服しかなく「お揃い」という状況に持っていけた。


それにしても、、、

高木くん……素直だなあ。

あんなふうにハンカチ出しちゃって。

無言で、しかも真正面からって……

そりゃ、見てる人はみんな誤解するよ。


でも、そういう「誤解」をちゃんと利用しなきゃ、ね。


私は何もしてない。ただ、ちょっと言葉を添えただけ。

「似合ってるよ」って。

「無理しないでね」って。


全部、優しさとして成立するセリフだ。

だから誰も責めない。

それどころか、きっと明日になれば、「里村さんっていい人だよね」って、誰かが言い出す。


──それでいい。


私が欲しいのは、そういう立ち位置。


誰のことも直接否定せずに、

誰かの背中を「そっと」押して、「そっと」遠ざけて、誰にも気づかれずに、自分の場所を確保する。


それが、私のやり方。


だって、真正面からぶつかって、勝てる気しないもん。

葛城さんみたいな子にさ。

ああいう、自然に笑って、周りを惹きつけられるタイプには、どう頑張っても敵わない。


でも――

そうじゃない戦い方なら、私はきっと勝てる。


……今、山中くんが葛城さんの方を見てる。

うん、悪くない流れ。


高木くんが、城野さんに向ける感情も、

たぶんこのままいけば、いい意味で暴走してくれる。


そうなれば、私は、何もしなくていい。

ただ、見ているだけで、全部が思い通りに流れていく。


あとは、そうね──


「もう一押し」かな。


次は、もっと深いところまで、

城野さんの「無理」が剥がれていくのを、

静かに、じっくり、見届けてあげる。


……私、優しいから。

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