8話 異世界転生好きの馬鹿に捧げる、悲喜交交のアリア
「……やぁ、増田くん元気?」
……ここは?
「さぁ?それよりも増田くん、君はもし異世界に転生できるとしたら【する?】【しない?】」
さぁ?ってうぜぇやつだな。
……それに何だよその質問?
「質問に質問を返すなよ~、だから君みたいな奴は馬鹿って言われんだ」
もし、なんてくだらない。
あり得ないだろそんな事。
答える価値すらない。
「あれれ~もしかして君ってアスペってやつ?もしもって言ってる話にわざわざ水を差すなんてさ(笑)」
……クソがッ!
【する】だよ、それ以外に答えがあるか?
「あ~やっぱり、人生つまんなそうだもんね、負け組で」
負け組で悪いかよ。
そもそも異世界転生ものってのがくだらない人生と引き換えに最高の人生を手に入れる物語じゃないか。
負け組がそういうのに憧れるのは当然じゃねぇの?
「馬鹿丸出しだな、そもそも君みたいな馬鹿、阿保、間抜け、社会不適合者が、誰も知らない、何も分からない、常識が通用しない異世界でやって行けると思う?……現実世界で学校でも会社でも生き辛そうに生きてきた君が?」
……黙れ。
異世界にはチートが付き物だ。
それさえありゃ、どんな馬鹿でも底辺でも生きていける。
「へぇ、そのチートとやらで言う事を聞かない人間、邪魔な人間、嫌いな人間を退治していくんだね……そんで周りをイエスマンで固めていくと(笑)、全く最高に学がないや」
テメェが誰だかは知らねえが相当な捻くれ者だな。
現実を見るのはテメェみたいな奴の方さ、実際そういう物語が流行ってるんだ。
みんな心の中でそうやって幸せになる事を夢見てるんだよ。
それをくだらないだのお門違いも良い所だ。
お前あれだろ?
逆張りし過ぎて自分が気持ち悪い事に気が付いてない痛い奴だな?
「……効いてんの?長文ご苦労様。ボクが言いたいのはさ、周りをよいしょしてくれてる連中で固めると最終的に君は独りになるよって事……ボクは君にそうなっては欲しくない」
……どういう事だ?
「独裁スイッチって知ってるよね……ボクはね、あれがチートものの末路だと考えている、自分に都合の悪いもの気にくわない者は次々消していって……【仲間】と思っていた人達からも次第に愛想を尽かされて、それが気にくわなくて……自分のいう事を全て聞かない人間が気にくわなくて、愛する人も信じきれなくなって最終的に一人になるんだ」
それは……。
「そうならない、とは言い切れないよね?だって自分に都合が良い様に動く世界だもの、都合が悪けりゃ消す。結局自分以外は信じられない……突き詰めたらそこに帰結する」
お前の理論は分かった。
勝手にほざいてろ、それでお前は一体何が言いたいんだよ?
「馬鹿が馬鹿なまま足掻く世界、そして負け組でも夢が見れる世界……ボクはそれが真の幸せだと思う」
は?
「夢を見れない人間は死んだ人間と同じだ、君はね現実世界で夢を見れなくなっちゃったんだよ【プロ野球選手になりたい】とか【素敵な人と結婚したい】とかね……ただ生きてるだけ、だから【異世界に行って人生をやり直したい】ってくだらない現実じゃない別世界での自分の夢を語る訳さ」
……そうかもしれないな。
「そうだよ!君は顔も悪けりゃ頭も悪い、金も持ってないし女にモテた事も無い、それに好きな趣味の一つさえ見つけられない、空っぽなんだ……だからこそ空っぽの君が、宇宙のチリの一つに過ぎない君が、何者でもない君が、夢と希望を持って世界を動かす叛逆……ボクはそれを見てみたい」
おい、一体何を言って……
「行っておいでよ【世界は捻くれてる方が面白い】んだぜ!」
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