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6話 正義のホームレス悪役令嬢剣姫

 「大体よく考えてみろ、オレは雑魚の代名詞であるスライムにすら勝てなかったんだぜ。そんなやつがこの世界のラスボスみたいな存在の敵に勝てる訳なくね?……あほくせ~!やってられっか」


 やっぱりオレには世界を救うなんて大それた事は土台無理な話だったんだよ。

 ここは当初のプラン通りにグラモン王に金をせびってからとんずらだ。

 

 ……ヘルに企みがばれる前に急いで王宮へ戻らねば。


 ▽ ▽ ▽


 「あいつはいつぞやの騎士だ、おーい」


 王宮へと繋がる城門の前に立っていた見張りは、今朝の喫煙所で見かけた騎士の一人だった。


 「おや勇者様、夜分遅くに何用で御座いますか?」

 「すまねぇグラモン王に取り次ぐ事は出来ないか?急用なんだ」

 「ふむ、今の時刻であれば少し厳しいと思うが……しばし待たれよ」


 おいおい、騎士A。

 そこをなんとかしてくれよ。

 

 「……すまぬ勇者様、やはり今日は無理ですな、また明日お立ち寄りくだされ」

 「そうか分かった、すまんな世話かけて」


 しつこく言ってどうにかなりそうでもないのでオレはそれだけ言い残して城門の前から引き返す。

 クソッ!明日じゃ間に合わねぇってのに。

 

 オレの第六感は早くここから逃げなきゃ死ぬって出てるんだぞ。

 

 ……そもそもオレは本当に勇者なのかよ。

 こんなに弱いなんて有り得ねぇだろ?

 せっかく異世界に召喚されても弱いなら戦えなくて当然じゃないか。

 なんで弱いオレが命を張って引きこもりのボケを助ける必要があるんだ?

 それに普通だったら強い奴が弱い奴を守るのが世の中のルールだろうがよ!


 「クソがっ!」 


 吐き所のない怒りをぶつける様に道に落ちているゴミを蹴り飛ばす。

 

「あれ?……ちょっと待て、ここどこだ?」

 

 マズイ。

 夜道を適当にふらついていた所為で訳の分からん所に来てしまった。


 中央街の綺麗で整備された街並みとかけ離れた雰囲気の場所だ。

 道はガタガタだし、むき出しの土壁やトタン、木の切れ端で出来たボロ屋が並び、あちこちに積み上げられたゴミや側溝から不快な匂いが漂ってくる。


 「なつかしい匂い……じゃねぇ!もしかしてここはスラムってやつか?」

 「……ピンポーン!大正解」

 「うおっ!なんだ!誰かいるのか?」


 ……電灯が無い暗闇だったから人がいた事に気が付かなかった。

 オレの前方に聳え立つゴミ山の下にボロ切れを纏って座り込み、周囲と完全に同化していた存在に。


 「お前は?」


 雲の切れ間から顔を出した月が真っ暗なスラムを照らし、謎の人物の詳細を明らかにしていく。


 そこにいたのは肩までかかるサファイアの様な濃い青のボブヘアにぴょこんと生えたアホ毛が特徴的な少女。

 翡翠色の瞳にきめ細かく月明かりに輝く白い肌はおよそスラム街には似つかわしくない高貴さとどことない儚さを感じさせる。


 「やあ、私の名前はアドラ、今日は月が綺麗ね……ところで君の名前は?」


 変な奴。

 それが第一印象だった。

 しかし悪い感じはしない。


 「……マズダだ。月が綺麗ってあれか?愛の告白?」

 「あはは、なにそれ?面白いね君、でもある意味、当たってるかも……君冒険者でしょ?どう?マズダ、私とパーティ組まない?」

 「あ?いきなり何言い出すんだお前」


 こいつ、何を言いだすかと思えば。

 スラムで変な物でも接種し過ぎて頭がおかしくなってるのか?


 「えーだって、じゃないと君、気付いてないかもだけど……死ぬよ」

 「えっ」


 そう言ってアドラと名乗る女はオレの後ろを指差した。

 

 「後ろ?一体何が……」


 その瞬間、背後から溢れ出る強烈な殺気と悪寒に押されるように反射的にオレは前方に飛び出した。

 それと同時に後ろから強烈な風切り音が聞こえて慌てて振り返る。

 気が付かない内にそこにはオレの背丈を超える大鎌を躊躇なく振り下ろしていた一人の人間が立っていた。

 

 白とピンクの長髪が顔にかかり、その間から覗く死んだ魚の目が印象的な漆黒のボールガウンに身を包んだ気味の悪い女だった。


 黒の衣装と大鎌、そのいで立ちからオレは死神を連想した。

 

 ……なっ!あいつの、アドラの指差しが無ければオレは死んでいたのか?


 「避けた?アナタ、中々ヤリやがるわねぇ」


 あの死神の放つ殺気の所為だろうか?

 ヤツと対面しているだけで体中から汗が止まらない。

 ……無意識に体が震えて足が動かない。


 「なんだ!なんなんだよ!お前ェ!!」


 死神は何も答えなかった。

 オレの精一杯の強がりの叫びだけが虚しくスラムにこだまする。


 「なにボーっとしてんのマズダ!急いでこっちに来て!」

 

 アドラの呼び掛けでふと我に返る。

 そうだ、オレはこいつから逃げないと。

 ……に、逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!


 「逃がさないヨ」

 

 死神が鎌を大きく振り上げた。

 

 「ひっ!」

 

 殺されるッ。

 オレはそう悟り、無我夢中でアドラのいるゴミ山へと向かい走る。


 「……遅イ、速度向上、デスサイズ」


 死神は何かを呟いた。

 

 その直後、気が付いた時には死神はオレを確実に仕留めれる位置に瞬間移動していた。

 

 「死ネ……」


 そしてオレが叫ぶ間もなく死神は鎌を振り下ろした。

 

 ▽ ▽ ▽


 「……あーあ、結局オレってよく分からないまま、よく分かんない奴に殺されて異世界で死んじゃったんだ」


 オレ、死んだのか?


 「増田ヒロムっていう冴えない人間は、例え異世界に行こうが何処へ行ってもダメダメな駄目人間なんだよな~」


 そうだな、何が異世界だよ。

 結局オレのやった事は己の弱さを認めて逃げただけ。

 これじゃ現実と変わんないじゃん。


 「いつまで経っても、どこへ行っても逃げるだけ、仕方ないよね。だってさ勝てないんだもん」


 ははは、お前の言う通りさ。

 オレだって力があれば、才能があれば逃げなかった。

 オレが悪いんじゃない。

 悪いのはオレの落ちぶれた……報われないこの運命だ。


 「……あーはいはいそうだね(笑)……でもさ、世の中には逃げるが勝ちって言葉もあるんだ。だから今回は珍しく君の勝ちみたいだよ?()()()


 ……え?


 『スキル【無銭飲食(ノーマネーイーティン)】発動』


 「はっ!ここは?」

 

 オレは何か変な夢を見てた気が……なんだ?うおお体が勝手に動いて!

 制御の効かなくなった体はオレでも理解できない動きで死神の鎌を的確に避け、そのままアドラの所まで逃げる事に成功した。


 「アレを躱シタ?」

 

 死神は怪訝そうに首を捻りながらぶつぶつと独り言を呟いている。


 「凄いね!やるじゃん!」

 「えっ、いや……正直オレにもよく分からんかったが」

 「あっそうなの、それで?パーティの件は?」


 思い出した。

 そういえばこいつ、そんな事言ってたな。

 

 「あーもう!分かった、この状況をひっくり返せるんならパーティ加入位安いもんだ……でも後悔すんなよ。オレ、クッソ弱いぜ。」

 「モーマンタイよ。それじゃあ、契約成立だね」


 『パーティ加入申請が来ました』

 『はい』『いいえ』


 オレは迷わず『はい』を押した。

 パーティの欄にオレとヘル、そしてアドラの名前が表示される。


 名前:アドラ=フィオーネ

 性別:女

 年齢:16

 胸 :中

 異名:白夜の剣姫

 種族:人間

 装備:月光のアヴリーゴ

 武器:月翔【嫦娥】【スロット★★★】【攻撃強化(小)】【攻撃強化(小)】【速度強化(中)】

 レベル:62

 HP :1500

 MP :250

 攻撃:900+500

 防御:200+100

 速度:1000+500

 魔力:100

 賢さ:100

 運 :30

 特殊スキル:【剣術の極意】


 なっ!ヘルよりもレベルが高いだと。

 こいつ、強いぞ!

 

 アドラはボロ切れの下に隠されていた青い宝石のあしらわれた鞘から刀を抜いた。

 アドラの抜いた刀は月光を反射させて光輝く。

 その刀から放たれる神々しいまでの輝きと閃光はダイヤモンドにも劣らないと感じさせた。

 ……まぁ本物のダイヤモンドを見た事はあんまりないんだけど。


 「そんじゃ、正義のホームレス悪役令嬢剣姫アドラ=フィオーネ、参るわ!」

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