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2話 死と破滅の神

 おお~!騎士の隊列とそして中央に座する王、これぞ謁見って感じだ。

 ゲームとかアニメだと王の話なんてどうでもいいから早く冒険させろってなるシチュエーションではあるが、実際にこういう場に立つとなんかワクワクするな。


 「王よ、こちらが勇者様です」


 ザリオは跪き、目の前の椅子に腰かけた王にオレを紹介した。


 「うむ……ワシはリント王国50代目国王リント・バルト・グラモンだ、まずは勇者殿、汝の名が聞きたい」


 生活習慣病に苦しみそうな小太りの体型と長い髭、そして宝石のあしらわれた冠に豪華な装束。

 まさにザ・王様って感じだな。 


 「まずは自己紹介ね、オレの名は増……」


 待て待て!こんな中世風の世界で増田です!なんて名乗るのは全国の増田さんには大変申し訳ないけど世界観が違う気がしてちょっと恥ずかしいな。

 

 ここは……そうだな。


 「……勇者殿どうかなされたか?」

 「いや何でもない。オレの名はマズダだ」

 

 オーケー、濁点付けただけでもそれっぽい名前にはなっただろ。


 「ふむ、それではマズダ殿、まず始めに誠に勝手ながら汝をこの世界に呼び出した事について謝罪させて頂こう」

 「……呼び出した。ねぇ」

 

 オレの言葉を待たずにグラモン王は椅子から立ち上がると騎士達と共にオレの方へ向けて頭を下げた。

 そして謝罪を終えた王が再び席へ着く。

 

 謝罪と申されてもねぇ。

 正直怒ってる訳でも無いし頭下げられようが知ったこっちゃないが……。

 

 それよりも呼び出された?

 ますます異世界転生っぽいような……いやいやあるかいそんな事、とも言い切れないのが癪だな。

 ここの世界観やシステムはまさにそれだもんな。

 

 ただあまりの急展開過ぎて実感がなさ過ぎるぞ。

 ……だって玄関のドア開けただけだぞ、オレ。

 

 それとそこにいる王よりも気になった人物が一人いる。

 

 王の隣にフラフラ~と立つ女だ。

 あいつは他の連中が謝罪している時に唯一オレに対して頭を下げていなかった。

 一応は王も敬意を払っている勇者様(仮)とやらに対してあの態度は少しイラっとくるものがあった。


 オレはその女を睨みつける。

 

 ふむ……身長は結構高め、とすると成人はしてそうか。

 切れ長の目にダークブラウンの瞳、色白の肌で整った顔立ち……顔は正直可愛い。

 腰まで伸びた黒と赤の……メッシュヘアってやつか?最近の若者には流行ってるよな、ああいうの。

 それにしても、なんだあの格好。

 黒と銀を基調としている鎧だがあまりにペラペラな上、胸元やら太腿が大胆に露出してやがる!

 彼女のスタイルも相まって、直球にエロスを感じる。

 そうだなアレは防具なんかじゃねぇ、俗にいう見た目装備ってやつじぇねぇか。


 ……違う、違う、今はあの女に見とれている場合じゃない。

 

 「あらマズダ様私に何か?」

 「えっ」

 

 やべ!気付かれた!

 流石にジロジロ見過ぎた、オレは慌てて彼女から視線を逸らす。

 セクハラ被害を訴えられてはたまったもんじゃない!


 「ヘルミリシア様どうなされたか?」

 「いいえグラモン、貴方には関係の無い事ですわ」

 「……左様でございますか」


 ん?待て、どうなってる?

 グラモン王があの女に対して敬語を使った?

 王のあいつよりあの女の方が立場が上って事なのか?


 「……あんた、一体」

 「申し遅れましたわマズダ様、私の名はヘルミリシア=クアドラプルメギストス=マンユ」

 

 オレが彼女を問いただそうとした瞬間、彼女は自らこちらに微笑みながら歩み寄り自身の名を告げた。


 「お、おう……名前長いな」

 「ヘルとお呼びくださいね。私はこの世界の死と破滅の神、世界の危機に際して現世に顕現させて貰いましたの、以後お見知りおきを」


 自らを神と名乗ったヘルなんちゃらさんはそう言うとオレに一礼した。


 「か、神?」

 「ええ、そうですわ」

 

 このセクシーなかわいこちゃんが神様?世界の危機?

 ヤバイ、頭がバグる。


 「単刀直入に申し上げますわマズダ様、異世界から来た勇者である貴方にはこの世界を救って頂きたいのですわ」

 「ちょ、ヘルミリシア様それ、ワシのセリフ!」

 「……はい?」 


 さっきからずっと勇者って呼ばれていた所から予想は付いていたが……ただの工場作業員のオレが?世界を救う?無理無理無理。

 

 うーん確かにゲームとかアニメの勇者ってこんな唐突な展開でも「世界を救って!」って頼まれたら普通に世界救いに行くんだよな~……。

 あいつらのメンタルどうなってんだよ……。

 ただのおじさんにはちときついよ……。


 「と言われてもだな、女神……ヘルだっけ?いきなりそんな事言われて『はい、分かりました』なんていう奴はそうそういないと思うぞ?」

 「マズダ殿の言っている事は尤もじゃが一先ずワシらの話を聞いてはもらえんか?」

 「まぁ、せっかくだし話を聞くだけなら」


 ここでいきなり「オレは世界なんか救わん、帰るぞ」っていう展開も面白いっちゃ面白いが、まぁここはベターに話を聞いてやるか。

 オレはゲームだと出来るだけ友好度を下げない様に立ち回るタイプなんでね。

 

 「いいえマズダ様あんなヒゲのかったるい話なんて聞かず、外を歩きながらお話ししませんか?そちらの方が状況を理解され易いかと?」

 「へ?」


 グラモン王が口を開くよりも先にヘルが会話に割り込み王に対してとんでもない事を口走った。


 「ヒ……ヒゲって……それにワシってそんなにかったるい?」「お、王よ!お気を確かに!」


 ヘルの発言が深く刺さったのか、すっかり落ち込んでしまった様子のグラモン王の周囲に従者たちが一斉に集まっていく。


 ……なるほど。

 確かにこの女、王に対しあれだけの無礼を働いても一切咎められていない。

 神だというのもあながち嘘ではないのかもな。

 

 だとすると話を聞くべき相手は王ではなくヘルの方だな。


 「分かった。グラモン王、悪いがオレはこのヘルって子と外で話してくる」

 「うー……うっ、うむ、それがヘルミリシア様のご意向であるならば。ワシはそれに従うまでだ」

 「うふふ、それでは城下へご案内しますわ。そしてこの国がいいえ、この世界が受けた【呪い】をお見せしましょう」

 「……呪い?」

 

 ヘルは意味深な言葉を残し、謁見の間の外へと向けて歩き出した。

 そしてオレは黙って彼女の後を追うのだった。

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