25話 【澱ンダ魂】
「……さてと部屋のロックと魔封じの結界は解除したわよぉん」
「ついでに建物の監視映像を全てチェックさせる様に通達を出した、これでこやつを招き入れた内通者が見つかるのも時間の問題だろう」
ヘルメスとギルバートは事の顛末をハナから知っていたかの様な速さで事後処理を進めていっている。
「けっ!てめぇら、まさかオレを逆にハメやがったのか?」
「……さぁ、どうかしらぁん」
わざとらしい笑みを浮かべてヘルメスが答えていると、その隣に並ぶようにアンフィスバエナがやってきた。
「うるさい!そんな事はどうでもよい。それよりもこやつが要らぬ事をしでかした所為で、妾に休日出勤で残業させた罪は万死に値する……その首、ギラ火山の火口に投げ捨ててやろうぞ」
アンフィスバエナは命を狙われた事よりも残業させられたとかいうしょうもない事に対して髪の毛を逆立てながら鬼の形相で激昂していた。
……いや、そんなに怒るとこ?それ。
「はぁ……茶番はもういいだろ。ヘルメス教えてくれ五族華会は今回のこの襲撃、気付いていたんだな?」
先程からのヘルメスの行動や態度からそれは十分に察せる。
問題は敢えて敵の作戦に乗ったのは何故かってとこだな。
「目星は付いていたわぁん。教団の支部がリィーダル近辺に出来た時からいずれ何か起きると常に警戒はしていたしねぇん」
ふむ、会議でそんな事言ってたな。
最近出来た教団の支部が街の問題になってたって。
「ヘルメスは今回その何かが起きる可能性があると判断して、お嬢と水面下で話し合った、そして勇者との会議をそれとなくリークする作戦を取った。教団の人間を捕える為の餌を巻く為にな」
ギルバートは種明かしするマジシャン気取りのドヤ顔で裏事情を語っていった。
「なんだそれは。妾は聞いてないぞ!」「ボクもだ!」「私も私も~~!!」
五族華会全員が知っていた訳ではないのか。
若干名から飛んで来るガヤを無視しながら、お次はエレノアが口を開いた。
「お前達に喋ると変に警戒するから良くなかった。それは勇者達も同じ」
「緊張をターゲットに悟られないためにか?だから黙っていたと?」
「そう」
オレはここまでの話を聞いて、ある疑問が浮かんだ。
「しかし分からん。あれだけ不利な状況を一撃で打破する様なバケモノ連中の集まってる五族華会なら、教団なんて力でねじ伏せればいいのに『力こそ正義』なんだろ?」
敵の計略をパワーで押し潰す、あの実力差があるなら猶更何でこんな回りくどい事を?
見方によればオレ達をわざと巻き込んだ様にも思えてくる。
「それがねぇん。力じゃ無理なのよぉん……黒色アパティア教団の幹部は全員不死者だからぁん」
オレの疑問を解消する意外な回答がヘルメスによって語られた。
「アンデッド?力じゃ無理……この世界がゲームに準拠するなら、浄化しないと勝てないとかそういう所か」
「正解よぉん」
「やはりそうか、しかしよりにもよってアンデッド連中が教団の幹部とはどういう事だ」
「あぁ、それは教団の教義を深く知れば自ずと分かってくるわぁん」
「はて?」
教義?勇者ぶっ殺ーす、ソリトゥス最強!みたいな感じだったか?
「彼等が天魔ソリトゥスを崇めているのは知ってるわよねぇん」
「ああ、まぁな」
その話は前にアドラが言ってたし、知っている。
「実はねソリトゥスの呪いって死者には効かないらしいのよぉん。だから生者が減って同族である死者を増やしてくれる呪いがアンデッド達に神聖視されてるのよぉん」
死者には効かない。
あーなる……けつの穴、じゃなくて、なるほど。
確かにヘルもあの呪いはあらゆる生命の気力を奪うとかなんとかいってたもんな。
「ほーん。アンデッド達にとっては生命を脅かす呪いが祝福になっている訳か」
「あらあらあら、上手い事言うわねぇん」
それで一つ疑問が解決した。
「……こいつも不死者だから首だけになっても死なないのか」
オレは首だけでもがいているこいつを見下しながらそう言った。
こうなっちまえば、教団の襲撃者も恐るるに足らずだな。
「おい訂正しろ、オレは首無し暗殺者だ。クソ雑魚ナメクジのアンデッドなんかと一緒にすんじゃねぇ!」
……どうでもいいわ、そんな事。
そんな状態で喚いても見苦しいだけだぞ。
「それでねぇんさっきの話の続きだけどもぉん」
「お、わりぃ教団の話だったよな」
ヘルメスは横やりが入り、中断されていた教団の事についての話を続けた。
「悲しい事に私達五族華会には邪心を持つ者しかいないからねぇん不死者に唯一有効な聖属性を持つの者がいないのよぉん……だから面倒だけど殺れない教団には今まで手が出せなかったわけぇん」
「それはなんというか、バチクソひでぇ理由だな……」
改めて五族華会の面々を見渡しても聖属性って感じのやつは一人も……うん、おらんな。
「だったらこの街にも僧侶とかはいるだろ?そういう奴らに協力を仰がなかったのか?」
「この街の神官は精々20レベルがいいとこよぉん、それじゃ教団と戦うには完全な実力不足ねぇん」
「へ、へぇ20レベルじゃ足りないんだぁ~」
ちなみに私のレベルは15です。
もちろん本気を出しても実力不足のこの街の神官より下のレベルです、はい。
「そういう訳で五族華会は不死者に手をこまねいていた。そこで強者として名高い勇者を、という訳だ」
「げっ、強者?」
「現に襲撃者を一人退けたそうではないか、それに勇者であれば聖属性の技を一個位は使えるんじゃないのか」
ギルバートは期待を込めた眼差しでオレの方を見ている。
頼む、そんな目で見るのはやめてくれ。
「……あの、ギルバートさん」
「なんだ?」
「オレの使える技、毒の息しかありません。それとレベルも15……です……すみません」
「……は?」
どうやらオレの一言は場を氷結させる能力があるらしく、この場にいる五族華会全員がフリーズしてしまった。
あのヘルメスでさえ口をポカーンと開けて驚きを隠しきれていない有様だった。
ヘルは申し訳なさそうに頭を下げ、アドラは苦笑いを見せていた。
アレ?またオレなんかやっちゃいました?
「ギャハハハハ!!腹いてぇ!勇者なのに毒の息って!しかもレベルがまだ15の駆け出しかよ!そいつは最高に傑作だなぁ!」
凍った空間で一人、いや一首がうるさく喚きだす。
クソ雑魚アンデッド風情が、死なないからって調子に乗りやがって。
さっきからウザったいし、こいつだけは出来るだけ長く苦しめてからどうにかして昇天させてやろう。
「……だったらテメェに一発お見舞いしてみてやるよ、ポイズンブレス!!」
オレは生首仮面に向かって思いっきりブレスを噴射した。
「カカカカッ!アホめ、オレは首無し暗殺者だぜ毒なんか効くもんか――」
普通はな。
さて、毒無効無効がどう作用するのか。
ブレスが命中するその瞬間――それは起こった。
▽ ▽ ▽
『ガコッ!キュイン!キュキュキュキュイン!』
「この音は!?」
脳内に直接響く何故か気持ちよくなるこの音。
その音と同時に突然オレの周りの景色がモノクロに変わって凍り付いたように動かなくなる。
これは一度経験がある。
まさかこのタイミングでスキル獲得の合図か?
『オオ、勇者ヨ』
ん、おかしい。
前はこんなフリは無かった筈だが。
『怒リト憎シミト嗜虐心ト、クダラナイ見栄ト、ショウモナイ欲ト逃ゲ癖ニ、変ナ性癖ヲ持ツ勇者ヨ』
おい。
ぶっ飛ばすぞ、コラ。
『オ主ノ【澱ンダ魂】ノ覚醒ニヨリ毒ノ効力ガ向上シタ。コレニヨリ勇者ノ毒ハ対象ノ魂スラモ侵食スル』
えっ、なにそれ?
『スキル【澱ンダ魂】獲得』
ちょっとあの、スキル名が勇者の覚えるそれじゃないんですが。
▽ ▽ ▽
「――毒なんか効くもんか、ってぎゃああああああ!!なんで?苦しい!助けてくれええええ!!」
……はッ!世界が再び動き出した。
と思ったら目の前の生首が分裂していた体と一斉にもがき苦しんでいた。
「苦しい、くるぢい。助け助けて……ぐががががっが」
ははっ、HAHAHAHAHA!
ばああぁーーーか、ファッキュー!
クソざまぁみやがれ。
オレの毒は不死者にすら効くぞ!
「何?これは!?に毒が効いているだと、貴様一体何をした?」
目の前でアンデッドが毒でもがく姿にギルバートは目を見開き今日一レベルの驚きをオレに向けた。
「それがよく分かんねぇけど、こいつを苦しめてやろうって願ったら【澱ンダ魂】ってスキル手に入れて、多分それのお陰だと思う」
ありのまま今起こった出来事を話すと、ギルバートは暫しの間考えこみ「ふむ、澱ンダ魂……か」と渋い表情を浮かべ、歯切れの悪い感じで口ずさんだ。
ギルバートは悪くない、そりゃ誰だってそういう反応になると思う。
むしろそのスキル名を聞いて今、オレの隣で歓喜の表情を見せているヘルの方はかなりヤバい人、いいや違う。
……ヤバイ神だ。
「ラアルに続いて澱ンダ魂まで……マズダ様、アハハ!いいですわぁ~どんどん実っていく」
「おいヘル、頼むから隣でサイコパスみたいな事を呟くのはやめろ」
「サイコパス?はて?」
「……いや、あんた達そんな事よりこっちを見なさいよ」
アドラはアホ毛で仮面の人物の首が転がっている方向を指差した。
さりげなく披露したその特殊能力はなんだ。
「これは?」「あらま」
「仮面のやつ多分死んでるわよ。アンデッドだから天に召されたって言い方が正しいのかもだけど」
アドラの言葉通り、そこで転げまわっていた仮面の人物からは先程までの騒々しさは無くなり体はピクリとも動かなくなっていた。
……これはつまり倒したって事でいいよな?
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