23話 会議で踊る、されど話は進む。
「ヘルメスよ、会議を始める前に一つ聞こう」
会議の開始と同時に青肌の悪魔アンフィスバエナが発言する。
「……どうぞぉん」
「何故わざわざ妾達を緊急招集で呼び出したのだ……此度の件はそれ程までに重要という事か?」
アンフィスバエナは少しイラついている様な態度でヘルメスに問う。
……緊急招集?
もしかしてヘルメスが昨日、足早にオレ達の前から消えていったのは、ここにこいつらを集める為だったのか?
「申し訳ないわねぇんアンフィスバエナ、休日出勤させちゃって」
「チッ」
なるほどね、それでイラついてるのか。
分かりみあるよ、やだもんな休日出勤。
「まぁねぇん、正直私も親書を見るまでは次の定例会議で話せばいいと思ってたわぁん……でもね勇者と聖魔様、聖十字騎士なんて面々の使者を見たら、そうは言ってられないでしょぉん」
「否定はせん。確かに錚々たる顔ぶれだ。しかしそれは真か?妾にはにわかに信じられぬが」
そう言うとアンフィスバエナは懐疑的な目を向けながらオレ達を舐める様に眺めていく。
……信用度ゼロだな、オレ達。
「……私も親書を確認した。そして使者は勇者、聖魔様であると……便箋、筆跡共にリント王国の王、リント・バルト・グラモンの物で間違いない。つまり嘘ではないという事」
ロリ議長エレノアがそう告げるとアンフィスバエナは「議長がそう仰るのなら」と言って静かに引き下がった。
「ワーオ!!本当に本物の勇者と聖魔様!?やべぇ!後でサインもらっとこ!!」
エレノアからオレ達が本物というお墨付きを得た所、この場で間違いなく一番の奇人であるシルク・ドゥ・シエルが突然騒ぎ出す。
「シエル、今は会議中だよ?」
それを優しく制したのはどこか気にくわねぇメガネの男、フェルディナント=タブリスだった。
「フヒヒwwサーセンwww」
「全く、君に付き合ってると会議が終わらないよ」
「Distance!!会議は踊るぅ~!されど進まずううう!」
……今度はいきなり踊り出した、こいつマジでイかれてないか?
「はぁ、疲れるなぁ……それでゴーレムの優先提供の件だったね。リント王国ってお得意様だし今は丁度生産量が増えててね、これはこっちで勝手に解決させて貰うつもりだよ」
タブリスは自分の目の前で踊るシエルを無視しながら、そう語った。
「うん、そっちはタブリスにまかせる。今回の大きな問題はもう一つの件。黒色アパティア教団壊滅にリィーダルが関わるかどうか」
エレノアのその発言によって議題はさっきまでのゴーレムの件から教団壊滅の件へと変更される。
「……そうだぜ、正直ゴーレムの事なんざ知った事ではない……だがこの問題はオレ達に、場合によっては世界に直接関わってくる事だ。出来ればあんたらの忌憚のない意見を聞かせてほしい」
話の行く末を黙って聞いていたオレはここでようやく口を開いた。
教団壊滅協力に対する彼らの正直な感想、オレはまずそれが知りたかった。
「私は賛成!!あいつらウゼェし!最近リィーダルの近くにも出来た、教団の支部ってのが早速色々と問題を起こしてるじゃん?そろそろとっちめた方が良いよ絶対!」
開口一番いきなりの賛成意見だ。
オレは今初めてシエルがこの場にいてありがたいと思えた。
「私も当然賛成よぉん。そもそもだけど教団の教祖である賢者アペイリィは天魔ソリトゥスのしもべで災厄級の魔人、そんなのを今の今まで野放しにしていた事自体問題だわぁん」
ヘルメスはグラモン王が親書の送り先に選んだ相手だ。
そもそも何かしらの理由で協力が得られると踏んでいたのだろう。
災厄級の魔人という気になる初見の単語が出てきたが、まぁいい。
これで賛成が二人だ。
残るは三人、多数決ならあと一人の賛成で会議が決する。
「妾は保留だ。確かにあの教団は問題行動が多く見過ごす訳にはいかんとは思う、だが現状ではリィーダルを揺るがす程の大事には至っておらん」
「何だよ、それじゃアンタは問題が起きてからじゃ遅いと思わないのか?」
「ああ妾はそう考えておるぞ勇者よ、魔人を舐めてはいかん、ヤツは伊達に数百年この地に君臨している訳ではないのだ。ここは見に回るべきだ。或いは壊滅ではなく何か圧力をかけて教団の弱体化を図るべきだ」
アンフィスバエナは至極冷静にそう答えた。
「ちなみにボクも同意見ね。相手は災厄級の魔人だよ?そんなのと全面戦争したらリィーダルだってタダじゃ済まないよ、一応書状にはリント王国は被害を補填するとは書いてるけど、リント王国だって無傷って訳にもいかないだろうからね。果たしてどこまで信用できるものか」
クソメガネが!!やっぱり嫌いだこいつ!
「妾には一つ明確な教団と事を構えたくない理由がある」
「どういう事だ?」
「勇者含め、ここにいる者達は知らぬだろうが、ヤツの君臨する黒色アパティア教団総本部はナール大砂漠……名目だけの支配であるが一応魔界の領地に存在する」
「ナール大砂漠!?それは本当なのぉん?アンフィスバエナ」
「妾は魔界アマルティア出身だぞ?これが黒い噂だらけの賢者アペイリィがのうのうと野放しにされている理由の一つだ」
アンフィスバエナが壊滅作戦にやけに慎重な態度を取っていたのはそういう理由だったのか。
人間の国であるリント王国にしてみれば呪いに打ち勝つ為にわざわざ異世界から勇者を召喚しているわけだし勇者への支援は当然の行いだろう。
しかし人魔共存、様々な種族が様々な考えを持っているリィーダル側にとっては他国の領地に手を出してまで教団を壊滅させるメリットや理由が薄すぎると言わざるを得ない。
残念だが今の所、反対派の意見の方が正当性を持っているとオレでも理解できる。
「リスクのある行動は避けるべき。ましてや最悪他国との戦争に発展するかもしれない事態だと確かにそうだよな」
何事も答えを示さない保留が一番丸いと。
オレだって長い間そうしてきたそういう考えだったから文句を言える立場ではない。
「マズダくんだったね?申し訳ないがその通りさ、だが反対しといてあれだけど君達の事はできる限りのサポートするつもりだよ」
「……さっきも言った通りオレらは意見を聞きに来ただけだ。無理にあんたらを説得するつもりはねぇよ。そもそも元々オレ達だけでどうにかする気でここまで来たんだし……それで議長の意見はどうなんだ?」
それにどう考えてもオレみたいな馬鹿じゃ、ここの中でも特に頭が良さそうなあの二人を動かす事は出来そうにない。
だがゆうて、まだ2対2。
エレノアの意見を聞くまでは焦る必要は無い。
ここでエレノアの協力が引き出せればそれだけで過半数だ……最悪この子なら土下座したら何とかなりそうだしな。
「……うーん、そうね。あいつらムカつくから潰す!」
「へぇ~潰す……は?はあああ?潰す!?」「はぁッ?」「ええええ~?」
五族華会の会議初参加のオレ達のみがエレノアのあまりに強引な意見に一斉に驚きの声を上げた。
なんだ?何でこいつら驚かない?
もしかしてだけど慣れてんのか?
こんな、さっきまでの話し合いの全てが否定されたこの暴論に!?
「あらあらあら、という事は賛成多数という事でよろしいのでわぁん?」
いや、普通に話を進めるんかい!
だが、うまいぞヘルメス。
話の流れに乗って会議を賛成の方向で強引に終わらせにきた。
ヘルメスの一言に対しエレノアの横に立っている黒マントのデカ女ギルバートが周囲を制するように手を上げた。
「ただいまお嬢の賛意で賛成が過半数を獲得した、よってリィーダルはリント王国による黒色アパティア教団壊滅協力の嘆願を受諾する……賛成に。いや議長の意見に反対がある者は?」
「ははは……相変わらずその言い方は卑怯ですよ。ギルバートさん」
正直オレもそう思うぞメガネ。
あの威圧感の半端ないギルバートがそんな事を言ってきたら誰だって反対しにくい。
「妾は反対だ、例えそれが議長の意見でもだ」
「……あぁん?」
ギルバートは凄みのある顔で反対を唱えるアンフィスバエナに睨みを利かせるが、彼女は引かなかった。
「ここは政治の場でありリィーダルの行く末を決める会議だ。議長含めて個人的な感情で安易に事を動かすべきではないぞ……妾達はよくとも急な決定で民に被害が出る可能性をよく考えよ」
うっ!それはごもっともな意見で。
「アンフィスバエナお前は少し勘違いしてる。私が教団にムカついたのは奴らが土足でこんな場所にも上がり込める事実に対してよ」
「……議長どういう事だ?」
エレノアは体から紅いオーラの様なものを漂わせながら、何も無い筈の天井に強烈な敵意を向けていた。
「……やべ、バレた」
『『なっ!』』
一同が一斉に驚きの声を上げる。
会議場の天井には、黒い装束に身を包んだ仮面を被る謎の人物が蜘蛛の様に貼り付いていた。
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