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20話 遂に到着、魔導科学自由商工都市

 オレとアドラはチンピラのアジトから招来するラアルの祝福や、金目の物をごっそりと持ち帰りヘルの待つ馬車へと戻ってきた。


 「すまん、ヘル結構遅くなった」

 「もうマズダ様ったら!ちょっと交渉に行ってくるって言ってからが長過ぎますわ。本当に待ちくたびれたんですから」


 馬車から顔を出したヘルは開口一番不平を口にする。

 まぁそれも仕方ない。

 チンピラとの間で色々とあったオレからすれば結構短い時間に思えたが実際は2~3時間くらい?余裕で経っている。

 その間ヘルはオレ達の帰りを馬車の中でじーっと待ってたんだから待ちくたびれるのも無理はないか。

 

 「悪い悪いって。今度何かで埋め合わせするからさ」

 「……埋め合わせ!?マズダ様一体ナニでナニを埋め合わせるおつもりですか!?」

 「おい」


 謝った後でアレだけど、そろそろ殴っていいかな?


 「うぇっ?ヘ、ヘルさん?いきなり何を言い出して……」

 

 ヘルのHENTAI発言を横から聞いていたアドラは顔を赤らめながら困惑していた。

 ああ、アドラは知らなかったのか。


 「アドラあんま気にすんなよ……いつもの事だから」

 「えっ、え?そうなの?……あのヘルさんが、なんか意外ね」


 まぁそう思うよな。

 実際ヘルはアレが無けりゃ綺麗で麗しく品のいい完璧なお姉さんって雰囲気だからな、意外だと思うのも当然だろう。


 「オーゥ皆サン、お話ハ馬車の中でネ、早く出発しないと今日の休憩地点に辿り着けないネー」


 マイケルは少しだけ怒り気味にオレ達を急かす様に会話を遮った。

 ……お前も黙って待ってたんだよな、怒るのもしゃあないぞ。

 丁度お金も増えた事だし、マイケルには後で少しだけチップを出す事にしよう。


 「……すまんマイケル、よし、早く出発して遅れを取り戻そうぜ」

 「そうね、私も久しぶりの戦闘で疲れたしさっさと馬車で休むとするわ」


 そう言ってオレとアドラは馬車に飛び乗った。

 

 「オーケー。それでは改メテ出発進行ネ」


 ▽ ▽ ▽


 王都から魔導科学自由商工都市リィーダルへと向かう旅も気が付けば10日経っていた。

 

 途中街道を脅かすチンピラとの戦闘など多少の問題はあったものの、一番の懸念だった教団の襲撃者や待ち伏せに合う事は無く、比較的平穏に進んでいった旅路は土地勘が無いのでよく分からんが、もう佳境へと入っているらしい。


 ▽ ▽ ▽

 

 今日も今日とて休憩時間中のレベリングだ。

 さて、本日のお相手は。

 

 「ゴロゴロゴッー」


 全身が岩で出来た謎の生命体ストーンマンだった。

 こういう敵キャラってゲームではお馴染みだけど正直何のために生きているんだろうね。


 「ストーンマン……こいつ全身が岩で厄介なんだよなぁ。だが、今のオレならば!!オラァ!」


 そんなメタ的な考察を考えつつ、ストーンマンの持つ岩の肉体に一閃を叩きこむ。


 ……カァーーン!


 甲高い音と火花が散って剣がはじかれる。

 オレの一撃はストーンマンの体にヒビ一つ入れる事は出来なかった。

 ……だが、それでいい。

 

 「ストーンマンのHPバーをチェック、毒のアイコン表示確認」


 毒が入れば動きのとろいストーンマン等恐るるに足らず。


 「あとは全力で逃げろおおおお!!うぉ!もう一体いやがった!」


 前のやつに気を取られ過ぎて、もう一体後ろにストーンマンがいた事に気が付かなかった。

 ……でも大丈夫、こんな時の為のとっておきがある。


 「ポイズンブレス!!」


 オレはそう叫び思いっきり息を吸い込み、吐き出す。

 すると口内から濃い紫色の煙が大量にまき散らされ前方ストーンゴーレムを覆い隠した。

 煙で視界を失ったストーンマンはオレを捉えきれずその場で闇雲に腕を振り回し始めた……ざまぁねぇな。


 ちなみこのポイズンブレスは【一週間歯を磨かない】事で勝手に習得できた。

 この世界ではただのいつもの習慣ですら、オレが成長するキーとなる可能性があるのだ。


 「よしっ!こいつも毒になった事を確認。逃げべ逃げべ」


 全力疾走でストーンマンから逃げ切り5分位経った所でEXP→+20 Levelup+1の表示が出た。

 

 「よし、レベルが上がった!」


 名前:マズダ(笑)

 性別:男

 種族:人間

 装備:黒影の装束+1

 武器:冥厄の短剣【スロット★★★】【招来するラアルの祝福】【麻痺効果(小)】【睡眠効果(小)】

 サブ武器:暗器パラライズニードル【スロット★】【麻痺効果(小)】

 レベル:15

 HP :200

 MP :30

 攻撃:32+12【80%超猛毒付与】

 防御:40+17

 速度:74+22

 魔力:12

 賢さ:1

 運 :15

 特殊スキル:【ラアル】


 オレは相変わらず旅行く先々で日課と化していたレベリングを続けており、気が付けばレベルは15になっていた。

 

 ここまで成長出来た大きな要因はやはり、一週間位前のチンピラとの戦いで得た戦利品【招来するラアルの祝福】という武具に装備する装飾品のお陰だろう。

 

 アレを手に入れてからというものオレのBOLバトルオブライフは一気に向上した。


 馬車の中で改めて招来するラアルの祝福をまじまじと眺めながら、その効果を確認する。


 一つ目の効果である毒効果(中)は従来装備していた毒効果(小)と比べて大体倍ぐらい効果が違う。

 正確な数値までは不明だが、体力が多い同系の魔物二匹に対しそれぞれ毒効果小、中でそれぞれ一回攻撃すると毒効果中の方が小より倍速く敵を倒したので、これを以て効果が倍と結論付けた。


 毒ダメージの倍加。

 これだけでも十分強いが実はもう一つの効果は更に強すぎて、こっちが霞んでしまっている。

 

 その壊れと言ってもいい二つ目の効果。

 毒無効の敵に対して低確率での毒付与。

 特にこの効果は旅路に岩場や山間部が多くなり、無機物の魔物の出現が増えた事により効果の実感が一気に増える事となった。

 毒が無効から有効になる範囲はかなり広くて、さっき述べた体が土や岩といった無機物で出来ている魔物の他、最初から体に毒を持っている魔物や他にも装備品等で後天的に耐性を持った魔物にすら毒が入るのだ。

 

 この能力はオレのステータスとスキルの最大のウィークポイントであった状態異常無効の敵に有効なダメージを与えれる様になった事に他ならない。

 

 通常攻撃はスライムですら一撃では倒せないカスのオレでも毒さえ入っちまえばこっちのものだ。

 オレの持つ、特殊スキル【ラアル】による毒特効のお陰で大抵の魔物は毒状態になれば数秒で死に至る。

 結果的に戦闘は楽々、レベリングはサクサクって訳よ。


 とはいえ己の力をあまり過信し過ぎるのはよくない。

 というのもオレはまだ街道の近辺にいる雑魚モンスターしか相手にしていないからだ。

 だからオレの敵を小突いて毒を入れて逃げ切る、泥沼戦法が高レベルモンスターやボスにどの程度効くかはまだ未知数なのだ。

 

 しかし、そう遠くない未来あの死神と再び戦う日がやってくるだろう。

 それは避けては通れない事だと思う。

 今回のリィーダルへの逃避行はあくまで一時凌ぎ、時間稼ぎに過ぎない。

 

 「……いずれ訪れるその時の為にオレは強くならねば」


 ふッ、オレらしくない考えだな。

 あれだ、魔物を倒せるようになってきて大分気が大きくなっている……。

 

 オレはまだまだ弱い。

 もっと強くなりたいと、最近はちょくちょくそんな思いを抱くようになってきた。

 自惚れだという事は分かっている。

 それでも前に進まなければならない。


 勝てないなら逃げてもいい……だが勝つための方法を考える事だけは捨てるな。

 逃げと諦めは似て非なる物だ。

 オレはこの世界を諦めない……諦めたくない、最近そう感じるようになってきた。

 

 「って、何カッコつけてんだよオレ。キャラが違うだろうがよ……ん?」

 「……マズダ様、おーい」

 「ねぇマズダ、さっきから宝石見ながらブツブツ呟いてアンタ大丈夫?」

 

 ヤバイ、一人の時間が長かった奴あるあるの独り言が異常にデカいというスキルが発動していたみたいだ。

 オレが気が付いた時には二人が心配そうにこちらを覗き込んでいた。


 「ああ平気だ二人共。ちょっと考え事してただけだって」

 「……だったらいいんだけど。そんな事よりそろそろリィーダルに到着みたいよ」

 「ですわ。外をご覧くださいマズダ様」

 「マジかよ」


 考え事に集中していた所為で気が付かなかった。

 開けた土地に聳え立つ巨大な塔と周囲に針山の様にごちゃごちゃと連なる建築物。

 どこか中華街を思い出すような派手でギラギラとした光を放つ大量の看板と商店が跋扈し、街に異国情緒溢れ混沌とした(カオスな)雰囲気を与えている。

 ……ついに到着なんだな。

 旅の目的地である魔導科学自由商工都市リィーダルに。

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