18話 伝説の言葉
「うおおお死ねぇ!!」
雑魚特有の雄叫びを上げ、二人のチンピラがアドラへと迫る。
……どうでもいいけど死ねぇ!って言われて死んだ人あんま見た事ないんだよな。
「遅い……遅すぎる」
オレの予想通り、アドラは死ぬ事は無く先鋒で突っ込んできたチンピラ達の攻撃を軽くいなしてカウンター斬りを決めた。
「つ、つええ……うっ……」
そのままチンピラ二人は仲良く地面に倒れ、二度と起き上がる事はなかった。
一方オレはというと……。
「おりゃあ!」
繰り出した渾身の一振り。
「ふんっ」
……だがいとも容易くチンピラに受けきられてしまう。
続く足元を狙った二撃目もバックステップで下がられて空振りしてしまう。
「くっ」
さっきは雑魚と言ったもの……チンピラAにチンピラB、ともにレベル28。
レベル3のオレにとっては圧倒的なまでに格上の敵だ。
「あれ?なんだコイツ、大した事ねぇぞ」
「おい、こいつからやっちまおうぜ!」
オレには勝てると判断したチンピラABがニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべて迫ってくる。
……やはり、単調な動きで多少のダメージを無視するモンスターと違い、人間は理性的に動いてくる。
オレの様なレベルも低く剣術もド素人の人間の攻撃じゃ、戦闘をこなしてきた人間には簡単に受けきられてしまう。
レベル差のある相手には一撃食らわせるのですら難しいと言わざるを得ない。
「二人相手は無理だ。ここは一人づついく!!」
オレは完全に囲まれる前に片方のチンピラAに攻撃を仕掛ける。
とはいえオレに出来るのは走った勢いに任せる捻りの無い単純な攻撃だけだ。
「げへへ。そんな攻撃、何度やっても同じだぜ!」
オレの太刀筋を見て避けるまでも無いと判断したのだろう。
チンピラAは足を広げて斧を大きく振り上げるノーガードカウンターの構えを見せる。
「かかった……」
オレは短剣を握った右手を下げ、何も持っていないハズの左手をチンピラAの方へと向けた。
「あ?」
ヒュン、ヒュン。
左腕の袖口から細く鋭い、視認性の悪い針がチンピラAの足元へと二発放たれる。
……命中、上手くいった。
オレの新武器は麻痺の属性を付与された簡易誘導付き魔法針を射出できる暗器だ。
……状態異常に特化したオレのスキル、ステータスの関係で普通に戦っても勝てない格上相手でも状態異常攻撃を一撃でも当てる事さえ出来ればワンチャンスが生まれる。
それを考えた際にダメージなど二の次で、例えカスダメでも意表が付けてとにかく一発当てればいいのだ。
この暗器はその点に特化している……オレはこれを購入するために敢えて短剣を買い替えなかった。
「え?何がっがガ……」
何が起こったのかすら分からぬままチンピラAは斧が手から滑り落ち、その場に倒れこんだ。
「おい、どうした!何があった!」
考える隙すら与えさせない!
すぐさまオレは反転しもう一人のチンピラBに攻勢をかける。
「くぅ!」
オレはわざと跳躍し、チンピラBが武器を上に掲げて飛び斬りを受け止める態勢を取るように誘導する。
そしてすっかりお留守になっていた足元へと魔法針を射出した。
「ひょっ?」
……当然、命中。
何が何やら分からぬままチンピラBはそのまま膝から崩れ落ちていった。
「……成功だな。この暗器は一発芸の隠し玉だがオレに限るとその一発があれば十分だ」
オレが二人のチンピラと激闘を繰り広げている間にアドラは8人チンピラを片付けていた。
「流石だな……さてと、残るはあいつらか……」
最後に残ったのは少し離れた場所で女を捕えていたチンピラと、その横にいる一際ガタイの良いリーダーの様なチンピラだ。
村娘レベル1、チンピラCレベル28、ボスチンピラレベル35。
レベル35か、どうしたもんかな。
「そこまでだ、てめえら!この女がどうなってもいいのか!?」
「ひぃ!!」
チンピラCが良くあるセリフと共に女にナイフを突きつけた。
「オラオラどうしたぁ?分かるだろ?早く武器を捨てるんだよゲヘヘヘ」
ボスチンピラは一際醜悪な笑みを浮かべ、拳をボキボキ鳴らしながらオレ達の下へとゆっくり進んでくる。
「ヘヘヘッ。オレの部下をよくもやってくれたな。これからたっぷりとお礼させてもらうぜ?」
「……どうする?マズダ」
「考えがある。アドラ、ここは大人しく武器を捨てろ」
「不承不承だけど……分かったわ」
アドラは刀を地面に落として、両手を上げた。
「ふんっ……オラ、おめえもだよ。早くしろよ」
ボスチンピラの命令通りオレも短剣を地面に落とし、両手を上げる……フリをして暗器を構える。
「てめえ!」
「……遅せぇよ」
トスッ、トスッ……二発ともボスチンピラの胸に命中。
「ちく……しょう……」
ボスチンピラは悔しそうな表情のまま、大きな音を立てて巨体を地面に突っ伏した。
けっけっけ、不用意に近づくからだ、馬鹿め。
ガタイがいい分、狙いが付けやすくて助かったぜ。
「ひっ、ヒイイィ!てめえら!こ、この女がどうなってもいいのかぁ!アぁ!?」
チンピラCはボスがやられた事が予想外で動揺を隠しきれていないまま大声で叫ぶ。
そして、これは脅しじゃないとばかりにチンピラCは村娘の腕を切りつけて出血させる。
「いやああああ!助けてエエエ!!」
チンピラCは村娘の腕に垂れた血をナイフで掬ってペロリと舐めた。
「ケケケッ」
……うへぇ、ばっちぃな。
「くぅ!!卑怯者めが!!どうするマズダ!!」
アドラは歯痒そうに刀を握りしめたままオレを見た。
「…………え?いいよ、別にオレは。正義のヒーローでもないし……そんなどうでもいい村娘の命なんか、くれてやるよ」
「は?」「へ?」「えっ?」
「えっ?えっ?何?」
空気が凍り付き、この場にいた全員が困惑と吃驚、軽蔑の感情が入り乱れたような顔で一斉にオレの方を見た。
「……オレ何かやっちゃいました?」
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