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14話 Calamity Fortune 「不幸な幸せの運命」

 当然、村の中に入る際にも警戒は怠らない。

 まず、アドラが先行して村をざっと見て回り、村民などに最近不審な者がこの村を訪ねていないか確認をしてもらった。


 「オッケー、取り敢えず問題なさそうだよ」

 「サンキュー、助かるよ」

 「約束通り、夕飯奢りね?」

 「……わーったよ!」

 

 アドラは王国内で襲撃者の死神を捕捉して陰で動いていたという実績もある。

 その彼女が大丈夫と判断したのなら問題ない……大丈夫だとは思うが心配性のオレは念には念を入れる。

 馬車引きのマイケルには何かあってもすぐに対応できる様、村の外の馬車停留所に併設された小屋に寝泊まりしてもらう事にしたのだ。

 

 そこまで対策を取った上でオレ達は村に入る。

 オレ達を狙う相手は格上なんでね、慎重すぎる位で良い。


 「なるべく村で動き回るのもよして、早めに宿を確保するぞ」

 「そうですわね、この規模の村だとリスクを取って探索する価値は無い様に思いますわ」


 そこまで広くない村だった事で宿屋はすぐに見つける事が出来た。

 近くの酒場で()()()()()で飯を食い、さっと宿泊の手続きを済ませてオレ達は案内された部屋に入る。

 

 「……田舎町の夜ってのもあるが、本当に人が少ないな」 


 部屋の窓から外を眺めても殆どの家屋で明かりが灯っておらず、往来する人間を一人も見かけない。

 それに通常、人の住んでいる場所というのは何かしらの生活音や環境音などの人が息づいている音。

 所謂、喧騒ってやつがどんな時間でも少しは聞こえてくるものだが……ここにはそれが無い。

 

 全くの無音に近いのだ。

 こんなの早朝出勤の時ですら経験した事がないぞ。

 

 「まぁよく言うじゃない、田舎は就寝が早いって。私達も早く寝てこんな陰気臭い村からさっさと出ましょうよ」

 「なにも田舎だからという訳でもないですわ、この人気の無さはさっきの店主の話の通り呪いも絡んでいるのでしょう」

 

 さっきの話か。

 宿屋の店主曰く、この村は数年前に爆発的に広まった呪いの影響で村で働く人間や訪れる旅人が極端に減り続けているらしい。

 その事態に追い打ちをかける様に呪いの影響を受けていない若者達はオワコンとなったこの村を捨てて待遇の良い都会へと職を求めて去っていくという悪循環が続き、現在この村は存続の危機に立たされているそうだ。


 どこの世界も田舎ってのは厳しい現実があるよなとしみじみと感じる話だったな。

 

 「……ここは日本の末路だな」

 「マズダ?ニホンって?」

 「ああ、いや、気にしないでいいぞ……そんな事より朝は早いんだ、そろそろ寝とけよ。見張りは夜型人間のオレがやっとくから」


 時計が無いから正確な時間は分からんけど、そこそこ夜は更けていると思う。


 「そうねー。それじゃ、お言葉に甘えて」「私も、お先に失礼しますわ」


 旅の疲れと静かな空間のお陰だろうか、二人はすぐに眠りについた。


 「さてと……」

 

 オレは一人、窓の外から見える満点の星を眺めながら物思いに耽る。

 

 綺麗で頼りになる心強いお姉さんの様なヘル。

 気さくで、真っすぐにオレに向き合ってくれる可憐なマズダ。


 現実世界のオレでは一生縁の無かった様な二人とこうして出逢い、旅をしている。

 オレがくだらないと吐き捨てた異世界の生活も悪くないと感じだしている。

 恐らく彼女達との出逢いがオレを変えたのかもしれない。

 

 まだまだ知り合って日は浅いが彼女達と過ごす日々が()()()と感じている。

 そして願わくはずっとこのままで、と。

 ……だが、その為には。


 「オレを狙う、黒色アパティア教団……その最高司祭【賢者アペイリィ】……そして天魔の13柱。結局ソリトゥスというやつの呪縛から勇者は逃げられないのかもな……」


 オレの命を狙う教団の司祭が、呪いの元凶ソリトゥスと繋がっている。

 ……あの日、オレはその事実を知り、世界を救う面倒臭い運命からは逃げられないと悟った。 

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