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12話 魔導科学自由商工都市リィーダル

 「いえ、マズダ様の提案でいきましょう。一刻も早くここを離れるべきです」

 「何故そう思うんだ?」

 「……そこの聖十字騎士(ホーリークロスナイト)、アドラと言いましたね。失礼ですがあなたのレベルを教えてくださる?」

 「私の?……62だけど何か?」

 「62!?……なんと」「すごい」「一体どんな鍛錬を積んだというのだ」

 アドラの答えに周囲の兵士達がざわつき始めた。

 なんでこいつらそんなに驚いてるん……なるほどね、ここにぞろぞろと並んでいる兵士達は、うん、皆軒並み20レベル前後だ。

 そらアドラのレベルの高さに驚くわけか。

 

 ついでにヘルのステータスも確認してみる。

 ……ヘルのレベルは50で変わらず、あっ、そうか。

 つまりここにいる者は軒並みアドラよりレベルが低いという事になる。

 

 「……そうだよ。この場にいる全員でかかってもあの襲撃者には勝てない、だってレベル62のアドラすら苦戦した相手なんだぜ」

 「そういう事ですマズダ様。ここにただ留まっていても件の襲撃者が攻めてくれば、何の意味もありませんわ」

 「籠城に意味は無いか、それならいっそ逃げた方が生き延びる可能性が高い」

 「……残念ながら、現状ではそういう事ですわ。お力になれず申し訳ありません」


 ヘルの言っている事は理に適っているしオレもそう思う。

 ……しかし、一つ問題が残っている。

 じゃあどこへ逃げるのかだ。

 さっき俺が提案したが現状で一番安全そうなセフィロトの樹って所へ向かうのはマズイらしい……いや、いっそリスク覚悟で行ってみるか?

 ダメで元々、人生はギャンブルだ……なんてな。


 「……ここを出立するのであれば魔導科学自由商工都市リィーダルへ向かうというのはどうだろうか?」


 オレ達の会話を黙って傾聴していたグラモン王が静かに口を開いた。

 

 「理由を聞かせてもらいたい」


 オレはゲームの主人公じゃない。

 王に言われたから、はいそうです、分かりましたって訳にもいかない。

 こっちは命が賭かっている、クソみたいな提案なら即却下だ。


 「良いだろう、誰か地図を持って参れ」


 グラモン王の号令と共に一人の兵士がこの場を離れていく。

 

 魔導科学自由商工都市リィーダルねぇ。

 そこを勧めるのはきっと、何か考えがあるのだろう。

 王族なんだから自分の国や周辺の地理、情勢に詳しい筈だしある程度信頼は置けそうか?

 

 しばらくして、さっき出ていった兵士が戻ってきた。


 「王よ、地図をお持ちしました」

 「ふむ、下がってよい」

 「ははっ」


 グラモン王は兵士が持参した地図を近くにあったテーブルに広げて、説明を始めた。


 「これはリント王国とその周辺の地図だが、この王都の東にあるのが我が国と()()()()にある亜人の国ニヴリムだ。セフィロトの樹の本山はその国境沿いにある……これはセフィロトの樹が人と亜人、そのどちらにも厚く信仰されておる宗教じゃからの」

 「ふむ、それは理解した。で?リィーダルはどこだ」

 

 東のそこがダメなら、リィーダルの位置は北か南か西だろうけどな。


 「リィーダルは西にある、西方には()()()()の魔族の国ガルド帝国がある、リィーダルは帝国の特別行政区として自治が認められておる。ここは人魔の共存共栄、平等、自由を謳っており多種多様な種族が自由に受け入れている為に非常に人口が多い……人口動態も分かり辛く、身を隠すにはうってつけの場所じゃ」

 「確かにあそこで人探しするなんて骨が折れるわね……それにセフィロトの樹と正反対の方角なのが尚いいんじゃないかしら?」

 「アドラは行ったことあるのか?」

 「神学校の研修で一回ね。あそこは経済も文化の先進的だから、様々な事を学びに来る人も多いわ」


 学校の研修?社会見学みたいなもんか?

 こんな世界にもそういうのあるんだ。

 

 「……なるほど、因みに北には何がある?」


 オレの質問にグラモン王は少し渋い表情を見せた。

 何かまずい事言ったか?


 「北にあるのは正直ワシもよく分からん、この辺りは伝承を基に地図が描かれておっての。ナール大砂漠とその先のボレアス大山脈、その奥には魔王ハーデスの治める禁足地アマルティアがあるとされておる……ここへ行く事は本当に最終手段じゃろうな」


 うん、聞いただけで分かる。

 そこは絶対ラストダンジョンだな。

 地図で見た限り、残った選択肢の南には広い海がひたすら広がってる様子だし、消去法で西に行くのが一番安全という事になる。


 「地図から見てもリィーダルへ向かうのは理には適っていますわ。どう思いますマズダ様?」

 「まぁそうなんだけどな。しかし敵側もそれ位読めているんじゃないのか?」


 疑い過ぎも良くないが嫌な直感が働いている。

 オレならターゲットの位置が把握できていて、逃がさない様にするなら全方位の街道にそれぞれ待ち伏せを配置すると考える。


 「無論その可能性も大いにあるじゃろう、だからワシから提案がある」

 「なんだ?」

 「お主らにはワシの古い友人でリィーダルの統治をしとる者にゴーレム取引に関する親書を渡す使節団の任に就いて欲しい」

 「何でそんな面倒くさい事をやる必要が……」


 いきなり何言い出すんだこいつ。

 文句を言おうとしたがグラモン王は手を上げてそれを制した。


 「きっと彼女はお主らの助けになる筈じゃ。それに同日、勇者一行と称したオトリを東へ向かわせる、これなら西へ行く使節団に対する敵の警戒は弱まる筈じゃ」


 チッ、中々したたかな野郎だ。

 確かにそれはオレ達にメリットになると同時にこいつらの仕事を押し付けられるって事だろ。

 ……生存確率を上げるには仕方ないか。


 「分かった!分かったよ、その案でいこう」

 「決まりじゃな、出発は早い方が良い。使節団の準備を明日までに整えておこう」

 「明日までに旅の支度を整えておきましょうマズダ様」

 「あぁ、そうだな」

 

 ▽ ▽ ▽

 

 翌日、旅の準備を整えたオレ達は手筈通りに使節団の馬車に乗り込んだ。

 そしてリント王国王都を離れ、一路新天地リィーダルへと向かうのであった。

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