10話 守護剣士の悲壮
「王宮?あんた今王宮って言った?」
「んだよ何か都合が悪いのか?あれか、下民は立ち寄れないとか」
「失礼ね誰が下民よ!私は元貴族よ!」
あーそういや悪役令嬢とか何とか自分で名乗ってたな。
「元だろ?現ホームレス。それにしても、貴族だったのかお前」
「……話せば長くなるわ」
「あー、ならいいっす」
自称貴族の現ホームレスの過去か?興味ないな。
「あれは3年ほど前だったわ……」
「おい、勝手に話し始めるな」
「私は王都の地下に広がる魔の大穴ヘルヘイムの守護剣士の生まれとしての責務を全うしていた時の事……」
なんだその壮大で面白そうな生き様は、少し興味が湧くじゃないか。
王宮に着くまでの暇つぶし程度には聞いてやるか。
「へぇ、王都の地下にそんな所がね」
半信半疑であるが、アドラの刀の腕は確かなものがあったし。
あの剣術がただの趣味って訳ではなかろう。
彼女が刀を用いた何かに携わってきた事自体は間違いないと思う。
「空が闇に染まったあの日……呪いが、私の家族と守護剣士として志を共にした41人の部下達に降り注いだの」
「呪い……無気力の呪いってやつか」
「ええ、ヘルヘイムからは定期的に魔物が湧き出るんだけど……その日、私以外の皆は呪いを受けて戦えなくなってしまっていたの」
「それってかなりまずいんじゃ?」
アドラは少し考える様に空を見上げてから、作った様な笑みを浮かべて続きを語った。
「当然、今まで数十人がかりでやってきた仕事よ……数匹の魔物を取り逃がしてしまったわ。」
「マジかよ」
「その結果、王都の民に被害が出て責任を問われたわ……当時は無気力の呪いなんて信じられていなかったし、現場にいなかったのはアドラ家の怠慢として貴族位と守護剣士の剥奪を言い渡されたわ」
アドラはわなわなと体を震わせながらそう語った。
「アドラ家が300年続けた守護剣士の使命は呪いの所為で終わりを迎え、その役目は分家に引き継がれる事になったわ」
「アドラ……」
……この子にそんな過去が。
オレは少しだけこの世界に蔓延る無気力の呪いが憎いと感じた。
「……なんて話は、まぁ嘘なんだけどね」
「は?」
「ばーか!今日は4月1日。エイプリルフールよ……ぷぷぷっ、大体地下から魔物が湧き出るような場所に都市を作る訳ないじゃん」
「はあああああああああ!!」
こ、こいつゥ!
クソッ!完全に騙された!あの震えは笑いを堪えていただけか!
「こんのメスガキがあ!」
「プークスクスクスッ、何がメスガキよ。私よりもちっこいガキのくせして」
「……黙れ、オレは30だぞ」
オレの一言にアドラが一瞬立ち止まり、我慢出来なくなった様子で腹を抱えて笑い出した。
「あははははは!流石にその嘘のセンスはないわぁ!マズダはまだまだお子ちゃまね」
「…………」
……計画通りッ。
オレは心の中でにやりと嗤う。
アドラ、お前はそこであざ笑っていればいいさ。
だってオレの年齢は本当の事なんだからな。
相手を勝った気にさせ続ける。
よく覚えておけ、これが騙し合いにおける玄人の戦い方だよ、若者よ。
オレはアドラに与えられた屈辱をほんの少しだけ解消したのであったとさ。
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