意気揚々と婚約破棄をしたものの、それらがすべて手のひらの上だった話。
注意⚠勢いで書いたので結構はちゃめちゃな感じです。お気をつけください。
―――アルカード王国、王宮内の花園にて
「ふふ、ふふふ!」
ニヤニヤ、と頬の緩みが抑えられない、というようにスキップをしている金髪碧眼の見目麗しい男。彼は、このアルカード王国の第一王子である、スイリアス・アルカード。スイリアスは父である国王の金髪碧眼をそっくりそのまま持って生まれていた。ふふふ、と笑っている彼の姿からは想像できないが、見目麗しく、能力も高い王子として、次期国王にと期待されている。
そんな彼はたった今しがた、一生を添い遂げる予定の少女と愛を交わし合い、用事ができたため、彼の執務室に戻るところだった。その少女の名は、アリス・サッチェ伯爵令嬢。仮にも第一王子である彼には、少し位が低い令嬢である。
それもそのはず、彼の中ではもうすでに一生を添い遂げるなんて予定が決まっているが、彼の婚約者は他にいるのだから。婚約者の名は、リリアス・チェーリ。彼女はれっきとしたチェーリ公爵家の令嬢で、貴族の間でも、「完璧な淑女」として一目置かれる存在である。
―――また、そんなスイリアスのいる北側の花園とは真逆にある、南側の花園にて、スイリアスと同じように不気味に笑う銀髪碧眼の美丈夫がいた。
「ふふっ、ふふふ……。」
彼は、第二王子であるシシェール・アルカード。彼は母である正妃、スジャナの銀髪を、父である国王、フェルトの碧眼を持って生まれた。
また、彼も兄であるスイリアスと同じように、婚約者ではない少女と愛を交わし合っていた。なんとも皮肉なことに、シシェールは彼が周囲にさんざん比べられ、忌み嫌っている兄と同じような行動をしているのだ。そして、笑い方も似ている、という始末。いがみ合っていても、そこは兄弟なのである。
―――そして、また奇しくも。北と南の庭園で、全く同じ言葉を発するのであった。
「…もうすぐ、一緒になれる…!」
***
「お久しぶりですわ、リリアス様。」
「ええ、お久しぶりです、アリス様。」
二つに結んだ亜麻色の髪にエメラルドのように輝く瞳。見る者に幼気な印象を持たせるであろう顔立ちをしている美少女に、キラキラと輝く長い銀髪に、夜の闇を溶かし込んだような紫の瞳を持つ、美少女というよりは、美人といったほうがしっくり来るような少女。
同じ年齢である二人の少女は、お互いの名を親しげに呼び、ふたりきりの茶会の席でにこにこと笑いながら話をしていた。
「そして、その後どうです?」
アリス様と呼ばれた亜麻色の髪の少女は、そうきりだす。
「こちらは最高ですわ。」
リリアス様と呼ばれた少女は優しげに微笑み、そちらは? と尋ねる。
「こちらも最高ですわ。スイリアス殿下は、まさに私の理想なのです!」
嬉しそうににこにこと笑うその姿は、まるで大輪の向日葵が花咲いたようだった。
「ふふふ、私たちのお父様たちは頭でっかちでしたからね。
それにしても、まさか殿下たちのタイプまで逆だったなんて……。」
「運命としか思えませんわね!」
この二人、実は第一王子、第二王子の元婚約者である。この二人は犬猿の仲である二人を利用し、彼女たちのタイプの王子―――アリスはスイリアスの、リリアスはシシェールの婚約者となったのだ。
幸いにも、まだお披露目パーティーは先だったので、誰が誰と婚約していたか、なんてことは一部の上位貴族のみが知るのみだったので、情報を規制するには絶好のタイミングだったと言えよう。
まぁ、一番可愛そうだったのは、意気揚々と婚約破棄したものの、それがすべて彼女たちの手のひらの上だった王子たちだった。