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 初めましての方、そうじゃないよって方、どちらの方も読んでくださってありがとうございます!


 書き溜めあるので、しばらく毎日更新します! ぜひ読んで下さい!

「許さない、絶対に復讐してやるわ……」




 そう言って、孤軍奮闘するも虚しく戦闘不能となった俺の推しキャラ。スマホ画面に広がる『You Lose』の文字がゲームで敗北したことを示していた。


 また、負けた。


 勝利ボイスを披露する、敵キャラに苛立ちは湧いても、かつての全盛期に抱いたような「勝つまで挑んでやる」と言う気概はなかった。


 何故なら俺は大好きだった筈のゲームを惰性で続けるだけの生ける屍だからだ。

















 敵が使えば厄介だが味方になると使いづらい。


 昔、俺の推しキャラはそんな評価を受けていた。


 某攻略サイトでは「使うのは変人しかいない」とまで断言する使いにくさ(じゃじゃ馬)で実装当初から誰が使うかよと吐き捨てられる存在だ。


 『ランキングの破壊者』『王道ユーザーへの冒涜』『陰キャの極み』等々。


 これらは全て俺の推しキャラが持つ異名である、随分と巫山戯た呼び名だ。推しキャラ(彼女)が好きな俺からすれば到底許せない。


 当然、怒り狂った俺は推しキャラを二度と侮辱させない為に行動を起こす。噂を広める第一人者である攻略勢、いわゆる上位ユーザーへの報復だ。


 ほぼ独学でゲームのシステムを解明し、分からない事があれば全て自分で成し遂げたいというプライド(エゴ)を捨て去り、彼女を()()()存在として生み出した運営に質問を投げたりもした。返ってくるのは曖昧なものばかりだったが。


 そして苦悩の果てに推しキャラを軸とした俺史上最高のパーティ編成を考え、膠着状態となっていたユーザーアリーナへ殴り込みを掛けた。


 そこからは、トントン拍子だ。トップユーザー(クソ共)を根こそぎ狩り尽くし、トップ10内最低戦力でユーザーランキングの1位を取るという偉業を成した。


 俺は、誇らしかった。これで、大好きなキャラを周囲に認めてもらえると。その切っ掛けを作ったのが俺自身だということが、何より誇らしかったのだ。


 これで推しへの愛が証明出来たと思って。


 しかし俺を待っていたのは、受けたことがないほどの悪意だった。


 俺は勘違いしていたのだ。食費を削り、睡眠時間を削り、そして命を削った。そこまでしたのだから報われて当然だと思っていた。


 だが、命を削っていたのは俺だけではない。俺が蹂躙したトップユーザー(他の連中)も同じだったのだ。


 SNSでの罵詈雑言(ばりぞうごん)など当たり前で、攻略サイトに名指しで悪質ユーザーだと言われたり、ゲーム内のオープンチャットで証拠もなくチートをしていると断言されたり、仲の良かったユーザーに個人チャットで絶縁宣言をされたこともあった。


 もちろん、この仕打ちは辛かったし苦しくもあった。でもそれは「次は言い訳出来ないほど、勝ち続けてやる」と思える、謂わば復讐心の燃料に出来る前向きな『怒り』でしかなかった。


 けれど、俺への悪意という()()()()()()()よりも心を痛めたモノがある。それは、推しキャラへの風当たりが強くなったことだ。


 俺に倒されるまで自分の編成が流行を作ったと自負する彼らにとって、よほど耐え難いことだったのだろう。見下していたキャラに蹂躙されるのは。


 彼らの報復は、ただ悪評を流すに留まらず以前「変人しか使わない」と書いたサイトは「悪質ユーザーの証」と文を修整し、ランキング上位陣が多いトップクランでは俺の推しを使っていないことが入団条件になったりもした。


 クソッ。なにが『正義』だ、なにが『流行り』だ。声を大きくして騒ぐしか脳のないクズと『その他大勢至上主義』の自己主張を無くした人形共め。


 たしかに、俺の推しキャラは感情のないゲームデータだ。体は液晶、過去はパソコンで打ち込まれたフィクションストーリーでしかない。


 それでも俺は彼女を愛していたのだ。まるで生きている人間のように。いや、この世を生きる全ての人間以上に。


 自身に害をなす事を許さぬ推しキャラ(彼女)であるが、それはゲームの話で現実では何の抵抗も出来ない。故に抵抗する余地のある俺より貶められるターゲットにされやすかったのだろう。


 抵抗する術を持たない推しキャラは、俺が取った浅はかな行動により、さらに悪い立場へとなってしまった。


 もう、俺が何をしても立場が悪くなるだけだと思い、推しの名誉を守るため、ゲームのプレイも消極的になっていきランキングも徐々に落ちていった。


 どうしてこうなった、と何度も自問自答するが答えは出ない。それはそうだ、IF(もしも)を観測するなど出来る筈がないのだから。


 だが、それでも考えてしまうのだ。俺に周囲の反応を予測できる協調性があれば違ったのではないか、逆にエリカには俺の愛だけがあれば他に何もいらないと周囲の反応を切り捨てられる強引さがあればと。


 しかし、全ては後の祭りだ。今となっては何も変えられない。


 俺は、このまま終わるのか。


 そんなことを考えながらゲームを続けていると運営から一つのメッセージが届いた。




『あなたのエリカ・デュラへの愛は本物ですか?』




 エリカ・デュラとは俺の推しキャラの名前だ。他キャラに名前の被りなど勿論おらず、ついでに言えば嫌われキャラ故にユーザーがエリカの名前を使っているのも見たことはない。


 そこまで考えれば、もう迷うことはなかった。メッセージの開封から僅か十秒足らずで返信する。『当たり前だ』、と。




『ならば証明して下さい。明日になれば意味がわかります』




 そのメッセージを最後に運営の反応は無くなった。俺は何度も質問を投げたが返信は一切無い。


 モヤモヤした気分を残しながら俺はベッドに向かった。明日も仕事があり、朝が早いからだ。


 そのまま俺は眠りに落ちた。いつもと変わらない憂鬱(ゆううつ)な明日がくると疑いもせずに。

 読んで下さって、ありがとうございました!


 次話は午前7時〜8時を予定してます。




 




 下記に別の連載作品のリンクがあるので、読んで下さるとありがたいです!

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[一言] 自分の作品検索してみたら”地獄”つながりで飛んできましたww 更新楽しみにしておりますw
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