魔女の姉
「おかえりなさい」
自宅のドアを開けて靴を脱いでいると、玄関で出迎えてくれたエプロン姿の姉が俺に声をかける。
「ただいま姉さん」
家に上がるとぎゅっと抱きしめられる。
「く、苦しい」
「やーん!」
今年で21歳になる姉。姉の身長は俺より高く、胸は大きい。その胸で顔を押さえつけられ圧迫されていた。
柔らかい感触。苦しくて息ができない。
『やめろよ。俺も高校生なんだから』
と言って引きはがしたくなるが、黙っておいて、俺は甘んじて抱擁を受け止めた。
密着している姉のエプロンから何やら嗅いだことない甘いおかしな匂いがする。
うちの家は、魔法使いの家系だ。
そして姉は裏の世界で「錬金術師の魔女」と呼ばれている。
表の世界では、就活が終わったただの大学4年生。
就職先も決まったから、家で大きな壺を相手に何やら怪しい術のようなことをしたり、調合して何かを作ったりしている。
…何やら焦げたにおいがする。
「姉さん、焦げ臭いよ」
なんとか2つの巨大な丸みから脱出して声を出した。
「あらあら、壺はさっきふたをしたはずだけど…」
このにおいのたどり場所はたぶん…
「キッチンじゃ…」
「あら!大変大変」
スリッパの足音をパタパタとならして2LDKのキッチンへ向かっていく姉さん。
包容力があると言われる柔らかい物腰。目はたれ目でおっとりとした顔つき。
「うーん失敗ねえ…」
キッチンにいくと、何かを料理を煮込んだであろう鍋の火を切っていた。
「失敗したなんて珍しいね、姉さん」
「あら、料理は無事よ」
「失敗したのは魔法のほうだろ」
姉さんが失敗したのは、何分後に設定したことが作動する、という魔法だ。
うちではキッチンタイマー魔法と呼んでいる。
今回の場合は、煮込んだ鍋の火が自動で切れるように魔法をかけたわけだが、魔法が失敗して必要以上に煮込んでしまった、といったところだろうか。
「肉じゃがの具がドロドロになっちゃいましたから、カレーにしちゃいましょうか」
そう言って姉さんはカレールーを投入した。
カレーを煮込む鍋の中身をかき混ぜる姿は、魔女の姿としてとてもよく似合っている。
「ケンジさん、もうすぐご飯できるからあの子を起こしてほしいの」
「りょーかい」
名前を呼ばれた俺は3人兄弟の真ん中の長男。
魔女の姉、長男の俺、次女のミライ。
「ほら、起きなー」
「んう…」
畳の部屋に入って、4歳になる末っ子のミライを揺らして起こす。
「ご飯だぞー」
「あ、お兄ちゃんほかえりー…」
舌足らずの妹は寝た態勢のまま伸びをして、4秒ほどむにゃむにゃと言葉にならないことを発音すると、目が覚めたのかすくっと立ち上がる。
「ごはん!いい匂い!」
キッチンのほうへと走っていった。
「元気がいいなあ」
すぐに妹がUターンして戻ってきた。
「おてて、あらう!」
妹と二人で手を洗ってからキッチンへ戻るとスプーンが目の前をふわふわと浮いていた。
そのまま宙を移動したスプーンは机の上に置かれた。
姉さんがエプロンのポケットから小さな棒のようなものを取り出してすいっとふると、今度は食器棚が開いて人数分のお皿がひとりでに出てきた。お皿は浮かんでキッチンの炊飯器の横に積み上げて置かれた。
「ミライもやるー!」
「今日の準備は姉さんがやるから、ほらミライは一緒にご飯をよそおうか」
「はーい」
そう言って兄妹は二人で炊飯器の前に行く。
「あらあら、お姉さんが魔法でやってあげるのに」
「まだミライは小さいから、こうやって一般の家庭のように手動で準備する練習しないといけないよ」
「するのー!」
「あらそうねぇ、ふふ」
姉さんは妹の頭を優しくなでる。
「かれー!」
「いただきまーす」
「はい、いただきます」
「いたたきます!」
夕食の準備を終えて、3人でカレーを食べた。
「おかーさんたちいないね!」
ほっぺにお米をつけて元気いっぱいで言う妹のミライ。
「そういやお母さんたちはまだ帰ってこないのか」
「そうねえ……明日か明後日くらいには帰ってくると思うけれど…」
最後に話したのは…3日前か。
『じゃ、ちょっとドラゴン狩ってくるわ!』
『しばらく留守にするから、よろしくねみんな』
魔法使いの両親は、近場のコンビニ行ってくるみたいな感覚でそう言って出て行った。
暴れ者のドラゴンの処置する仕事の話が家庭内で上がってどうするか、となっていたところ、結局退治することになったようだ。
『ドラゴンにも犯罪者はいるのよ』
母が厳しい顔つきでそう言ったのをよく覚えている。
「いい子にして待っていようね。ミライ」
「うん!」
まるで我が子に接するかのように姉さんは妹に微笑みかけた。
ーーーーーーーー
軽く杖をふって魔法をかけた姉さんはトイレに向かった。
その魔法によって食後のお皿は泡立ったスポンジがひとりでに洗い物している。
「ミライも、まほー使う!」
「んー…ちょっとまだ難しいかなあ」
寝る前に、自分とベッドで絵本を一緒に読んでいる妹が主張した。
幼くして魔法を使うことは禁じられている。取り返しのつかない事態を引き起こしやすいからだ。
といっても、まだミライは魔法が使えるとわかったわけじゃないが…。
絵本を音読していると、やがてミライはすうすうと寝息を立てて眠ってしまった。
「ケンジさん、大丈夫?」
「ん、姉さん、平気だよ」
妹が寝静まって声をかけてきた姉さん。
「気にしてないから」
「そう…」
姉さんが心配してきたのは自分のことだろう。
俺は魔法使いの家系には珍しく、魔法が使えない。
姉さんはそのことを初めて知ったとき、普段から穏やかな姉さんがその時だけ誰よりもひどく落ち込んでいた。本人よりも元気がなくなっていた。
俺は妹を起こさないようにそっとベッドから降りて、姉さんの横を通った。
「でも…」
「はは、姉さんは心配しすぎだよ」
リビングのソファーに座る。
すると姉さんは横に座ってきた。
「なんで使えないのかしらね?」
「…さぁ」
高校生になった今も、魔法を使うことができない。
だけど別に気にしてない。
「気にしていないよ、姉さん」
「でも…」
しゅんとした姉さん。
…どうやらこの励ましは、魔法が使えないということを無邪気な妹につつかれた俺を心配したのか、と思ったが違うようだった。
姉さんは座った態勢で自分の太ももの上をぽんぽんと叩いて俺に目配せした。
「膝枕は、さすがに…恥ずかしいよ」
「あら、子どもなのに照れたりするのね」
「もう高校生だよ。大人だ」
「じゃあ、頼ってみてもいいかな?」
姉さんは隣にいる俺にもたれかかって体重を預けてきた。甘えたいのが甘えさせたいのかよくわからない人だ。
そのまま姉さんは俺の左肩に頭を置く。ウェーブがかかった長い髪の毛から嗅ぎなれていない、いい匂いがする。
「姉さん、香水なんてつけてたっけ?」
「今日の魔女のお姉さんの成果は、いい匂い作りですよ?」
ははあ、なるほど。
おそらく姉さんは今日、魔法使いとして自室で壺を用いて錬金術をしたのだろう。その結果生まれたのが香水のようないい匂いの何かというところだろうか?
俺はふぁ、と軽いあくびをする。
「精油と質の悪い天然石に魔力をこめてから砕いて溶かしたモノと色んな花の蜜をたくさん入れて配合してみたの」
「でも姉さんのことだから、それ、偶然できたものでしょ?」
「まぁ!よくわかったねケンちゃん」
よしよしと頭をなでてくる。
「偶然から新しい発見が生まれるものよ」
「まぁ…確かに」
それで、と姉さんは続けた。
「試してみたけれど自分だけじゃ匂いが染みついてわからなくて…香りはどう?ケンちゃん」
吐息の混じった艶めいた声色で俺の耳元でささやいた。
「いい匂いだと、思うよ」
「よかったぁ」
くっついていいわけができたね、と言って姉さんは体をさらに近づいてくる。
正直、振り払いたかった。
お年頃の男の子と大人の女性がこんなに近い距離なのはいろいろとよくないことだからである。困る。
さらに最近はより密接な距離に近づこうとしてくるものだから、本当に困る。
こんな姉のスキンシップを振り払うのは、簡単だ。だがあえてそうしないでいた。
「ふぁあ…」
「眠たいの?」
「うん…そうなのかな」
寝ようかな、と思ってこの場から動こうとしたが……俺はそのまま二人きりの時間を過ごすことを選んだ。
俺は姉さんのことをよく知っている。
なぜか両親には甘えず、年下の俺に甘えたがる姉さん。嫌いなものはピーマンで、小学生のころはネイルにハマっていて…中学生のころは、モテたみたいだから彼氏ができたみたいだけどすぐに別れて…。
高校生になってからは、急に化学と魔法について懸命に勉強していたこと。テストでいい点をとったら自慢してきて悪い点をとったら黙っていること…。
一緒に暮らして一緒に育ってきたから、よく知っている。
でもそれだけじゃない。姉さんのそれ以上のことを俺は知っていた。
姉さんはもそもそとゆっくり動いて、そっと俺の手に触れてくる。
動く姉さんから甘い匂いがする…。
「ふぁ…」
俺はまた大きなあくびをした。だんだんとまぶたが重くなってきて、意識を保つことが難しくなってきたので目をつぶった。
薄れゆく視界の中、隣にいる人の体温が伝わってくる…。
俺が知っているのは…今の姉さんだけでなく、前の……。
ーーーーーーーーーーーー
『ふふ、お姉さんは強いんだから』
ベッドで寝ていた女性は、看病をする男性の手を弱々しく握った。
洋風な家の中。古い作りの暖炉から火が燃えていてそれが部屋の唯一の光源になっている。
部屋で一番目立つのは何に使うかわからない緑色の大きな壺。机や椅子は年季が入っていてところどころボロボロになっていたり欠けている。キッチンにはガスコンロなど近代的なものがないことから、昔の中世の家だということが読み取れる。
机の上には飲み水が入った瓶と、何かの草をすりつぶした緑色のモノ、漢方薬が作るためのすり鉢などの道具が散乱していた。
俺は透明人間になったかのように第3者の視点からその人たちの様子を見ていた。
『~~~~~』
看病している男性が何か言葉を発しているが、なぜか聞き取れない。
聞き取ろうとして俺はその二人に近づいた。
『ふふ…心配しないで』
女性はゴホッと咳をした。
呼吸を短い間隔でしていて、ぜぇぜぇと喉をかすめる音で呼吸をして苦しそうだ。
『~~~!』
男性が叫んでいるが、やはり聞き取ることができない。
『~~~』
何かを言った男性は女性の近くに飲み水を置いてから、茶色のカバンを持って早足で家を出て行った。
医者でも呼びに行ったのだろうか?
俺はこの先の展開を知らない。
なぜならここで、いつも終わってしまうからだ。
『ダメね、私はもう…』
男性が立ち去ったしばらく後、姉さんにとてもよく似た女性は誰にも聞かれないように小さな声でつぶやいた。
『エムペドクレス』
女性の寝ていたベッドの毛布から発火する。
魔法だ――――その火はベッド、木の床、家具にそれぞれ燃え移り、家全体が燃え広がっていく。
あっという間に火事になった。魔女は立ち上がって家の中心に移動して床に膝をついた。
これは俺が何度も見た光景。病にかかった姉さんらしき女性が恋人と死に別れる物語。
女性は、恋人に病気をうつさないために自死を図ったのだ。
『魔法でも、死には適わないものね』
燃え盛る家の中で、大きな胸の前で手を組んで魔女は祈る。
『…叶うなら』
女性は咳をして、吐血した。
すると魔法のベールがはがれて、やせ細った頬や手首、全身をまとっていた服が剥がれ落ちて細身の体があらわになる。体中に発疹があって、皮膚に炎症が起こっていることがわかる。
誰が見ても、この人は病気だと一目でわかることを、彼女は魔法で隠していた。
そんな姉さんに似た人は俺の前で炎に包まれていく。
『あなたの…家族に………』
魔女の一粒の涙はすぐさま火によって蒸発して消え去った。
景色は、火に包まれる――。
ーーーーーーーーーーー
起きたら朝だった。ソファーで眠ってしまったみたいだ。
自分に桃色の毛布がかけられていた。
「む…」
起き上がって顔を洗う。
見てしまったか…。
俺は、魔法が使えない代わりに、妙な能力を持っている。
それは『見た人の前世と過去を覗くことができ、さらに追体験できる』能力。
前世の過去も今世の過去も望むがままに追体験して、さかのぼり思い出すことができる。
なくしものや落とし物をしたらすぐに追体験して過去を探ることで、そのなくしものは100%見つかる。ちょっとだけ便利な能力だ。
発動条件は、その人に触れること。任意で発動できるが強制的に発動することもある。今回の場合は後者だったみたいだ。
つまり姉さんに触れたままソファーで寝てしまったから、今見たのは姉さんのか…。
俺はタオルで顔を拭いた。
人の死を垣間見るのは、気分が悪くなる。
姉さんの前世は、当時の一般的な女性で、誰かの恋人だった。
今世の姉さんと見た目がとてもよく似ている。
さらに細かく追体験すると、姉さんはその誰かを愛していることがよくわかる。出会いから恋に落ちるまでの追体験…痛いほど愛する気持ちが伝わってくる。
そのまま時が経てば、姉さんはその人と結婚して家族になっただろう。
しかしその想いは、時代の荒波である感染病によって引き裂かれた。
恋路半ばで命を失った悲恋な人生。
一つ、昔のことを思い出した。
当時小学生の俺は、好奇心で姉さんに触れてこの能力を発動して過去と前世を知った。そして姉さんに愛された男性はどうなったのか気になって、その恋人を探した。
能力を使って追体験し、過去を追った。
そうして繰り返して追体験した上で、前世の姉さんの恋人になんとか触れることができた。能力の応用だ。
しかし見えたのは真っ暗闇の景色だけ。
試みは失敗に終わった。
あきらめて眠ったところ、また夢を見た。
ちょっとだけ高い視点から見下ろすように正面から姉さんを見る夢。
幼いころから何度も何度も見た悪夢。なぜならこの夢での姉さんはこの後決まっていなくなってしまうからだ。
少し目を離した時や、瞬きした瞬間に遠くに行ってしまう姉さん。
最初見たときは泣いたっけな。夢だとわからなくてパニックになって…。
起き上がって泣きながら姉さんの姿を探したことを子どもながらによく覚えている。
何度か試したが、姉さんの過去の恋人を探ろうとすると決まってこの悪夢を見る…。人の恋路を覗こうとする罰なのだろうか?
探っていくうちに、本当に姉がいなくなってしまうのではないかと怖くなって、探るのをやめた。
ある日、中学生の時、再びこの悪夢を見た。
『あー今日は嫌な夢を見たなあ』
と学校の授業を受けながらノートをとっていると、ある可能性に気が付いた。
ハッとした。
どうして今まで気が付かなかったのだろう?
俺は授業での先生の話などおかまいなしにすぐに自分の右腕を触って、目を閉じた。
そして能力を使用した。
見えたのは、姉さんの正面の姿。今朝に見た悪夢によく似ている。
姉さんの肩を掴んでいる男の手。
今まで姉さんの恋人の手で、どこぞの知らぬ他人だと思っていた。
確かにこの手は姉さんの恋人の手だが、違う。違うんだ。
疑念は確信に変わる。
これは…俺は…俺の…。
『俺の手だ…』
前世の俺が、俺の手が前世の姉さん肩を掴んでいる。
あの悪夢は夢ではない。実際に起こった出来事だった。
能力が強制的に発動して追体験して、自分の前世を見ていたのだ。
それを俺は間違って夢、悪夢と認識していたのだ。
つまり、前世の姉さんの恋人は、前世の俺で…今、俺の姉として生まれ変わった。
『あなたの…家族に…』
前世の姉さんが最期に言っていた言葉を思い出す。
姉さんが俺に触れてスキンシップをする理由は、二度と後悔がないように、健康に、平穏に今を生きるため。家族になって、幸せに。
ーーーーーーーーー
リビングに行くと、後姿の姉さんが机の前の椅子に座っていた。
小さな杖をふって机の上のマグカップに何もない空間からどこからともなく出てきたお湯を注いでいた。
姉さんはパチンと指を鳴らすと茶葉らしき葉っぱが舞い降りてマグカップの中に落ちた。
杖と一緒に首をかっくんかっくんさせている姉さん。まだ眠気が覚めていないようだ。
姉さんは当然、前世のことなど知らない。俺の能力のことも…。知ったらきっと、自分の前世を知りたがるだろうから故意に伝えてない。
不幸な過去は、知らないほうが幸せだからだ。わざわざ知って悲しみ必要はないだろう。
今は幸せな現実があるのだから。
「おはよう、姉さん」
と声をかけると姉さんはパッと振り向いて
「おはよう!ケンちゃん!」
立ち上がって俺の目の前にやってきた。
正面から見た姉さん。俺のほうが身長が低いため、少し見上げる形になる。前世とは違う視点だ。
「ごめんなさいね」
「え?」
「昨日の甘い匂いのするやつ、催眠の作用があったみたいでね…」
「あぁ、だから俺はソファーで寝ちゃったのか」
「それで…その」
顔を赤くしてもじもじする姉さんは不自然に右下を向いていた。
「お、覚えてない?」
「えっ、な、何の話?」
「お、覚えてないならいいの、いいの…ケンちゃん」
また一段と顔が赤くなる姉。
「もしかして催眠の作用のほかにも、副作用があったのか…?」
姉さんは両手で顔を隠す。
「俺、何かやって…?」
「あ、あらあら、なんでもないの…よ」
この場にいられなくなったのか、姉さんはぎこちない態度で逃げるように洗面所に向かった。
この能力の悪いところは自分の前世を知ることができても、自分の過去の追体験ができないということ…。つまり前世の俺の気持ちがわからない、何を考えていたのかもわからない。あくまで前世の俺と現世の俺は他人なので、知ることができないのだ。
前世の俺は、本当に姉さんを愛していたのか不安になるが……まぁいいだろう。
今の俺は、恋や前世など関係なく、今の姉さんが好きだ。それだけは確かな気持ちだ。
顔を洗ったのか、タオルで顔を鼻と口元を隠した姉さんが戻ってきた。
「姉さん、今日は抱きついてこないんだね」
「ま、まあお姉さんだってしない日はあります。…ケンちゃんはしてほしいの?」
「別にどっちでも」
「でも、たまに嫌そうな顔をするときがあるじゃない」
「確かに嫌な時もある……けれどそんな姉さんのこと、俺は嫌いにならないし、その……好きだよ」
「まあ!」
姉さんはぎゅーっと俺を抱き寄せた。
「うっ、力強い…」
いつもよりハグの力が強くて、く、苦しい…。
あっ、なんか、目の前が暗くなって意識がなくなってきたような…。
「お姉さんも、好き」
魔女の姉はチュッとおでこにキスをした。
読んでいただいてありがとうございました。