王女登場
「もう戻らないと、いけないわね。
最後に1つ教えてマリーナがいなくなってから、彼女の部屋に入った?」
「いいえ、マリーナさんの部屋はマダムがカギをかけてしまって入れません」
「そのカギはマダムが持ってるの?」
「はい」
「そう、ありがとう
じゃあ戻りましょう」
「え?お化粧室は?」
「いいのよ」
と言って私は唇に指をあてて、「ないしょよ」
と口止めした。
◇◇◇◇◇◇◇
私達はマダムにお礼を言って、下宿をあとにしました。
「ねぇ、ルイーゼ1ヶ所寄り道していい?」
「ええ、どこへ行きますの?」
「さっき、ニーナさんに聞いたの、日曜日の夕食の時遅れて来たのはマダムだったって。
そのマダムが薬局へ行っていて遅くなったと話していたらしいのだけど…」
「その薬局へ寄ってみるのかしら?」
「うん。場所はニーナさんに聞いたから、本当に薬局へ行っていたか確認しようと思って。」
「わかりましたわ、あっ、あそこにアンドリューたちが待っていますわよ」
私達はアンドリューとジャックの4人で下宿まで来ていましたが、どうもマダムが男性に対して快く思ってなさそうなので、マダムに会いに行くのは私達2人だけにしたのです。
その間、2人には下宿の周りでマリーナとブレインが2人でいる所を見た人がいないか聞き込みをしてもらってました。
「アンドリュー」
私は声をかけて、手を振りました。
彼も手を振り返してくれます
「目撃者は見つかった?」
「ああ、あそこの露店のおばさんが前の公園でよく話をしている2人を見ていたよ」
「最後に見たのは日曜日だそうだ」
「やっぱり日曜日の外出の相手はブレインだったのね」
「じゃあ報告に帰るか」
「ごめんね2人とも。
もう1ヶ所確認したいの。
すぐ近くだから」
「いいよ、どこに行くんだ?」
「薬局ですわ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
学校に戻ると、もうルイス達は戻っていた。
「遅くなりました」
「お帰りなさい、ご苦労様」
そう声を掛けてくれたのは、
ずっと不在だったアンリエット王女だった。
アンリエット様は最高学年の5年生で生徒会長を努めている。
「アン姉様、お戻りだったんですね」
「ええ、さっき帰ってきたの。でも、オスカーにちゃんと報告は受けていたから、話は分かっているわよ」
アン姉様は生徒会長として、私達王族で繋がる兄弟、従兄弟をまとめてこの学院の治安をまもりみんなの学校生活を守ることに日夜、尽力しています。
そのアン姉様が、今日の成果を話してほしそうです。
「下宿のマダムと話してまいりました」
ルイーゼが話し始めます。
「ノアの話だと、ずいぶん気難しそうに感じていましたが、私達には普通な対応でしたわ」
そう言いながらルイーゼは私を見ます。
私も頷きながら、
「確かに対応は丁寧でした。下宿の、中にも入れてもらえましたよ
ただ、マダムは何か隠していると感じました。
私達の質問にも嘘をついてましたし」
ルイーゼも同意する
「確かに話の途中で怪しいところがいくつかありましたわ」
私達は失踪前日の夕方マダムが誰にも言わず、外出して薬屋に行った事
それによって遅刻した夕食時の事を私達に黙っていた事
そして、失踪したマリーナの部屋にマダムが鍵をかけていた事
を2人で順に報告した。
「そう、そのマダムは使用人も気にする程男女の事には厳しくて、男の人を拒絶するような態度なのね」
アンリエット王女が言う
「確かに男性不信の兆候はみられるかと」
ノアが思い出しながら言った。
皆が私達の報告をしっかり頭に入れてくれた様子をながめながら、私はもう一度口を開いた。
「下宿に伺った後、私達はマダムが行った薬屋にも行ってきました」
「日曜日の夕方に行った薬屋かー」とルイス
「そう、その薬屋さんはマダムがよく行くらしくて、お店の人も覚えていました
そしてその日マダムが買って帰ったのが薬の原料の薬草何ですが…マンダラゲとトリカブトです」
「それって」
オスカーが驚いています
「はい、麻酔や睡眠薬などに使ったりするそうです
トリカブトは毒としても使う危険な物ですが、マダムは修道院で薬の調合をならっていて、一応使用許可証を持っているそうなんです」
「そう…なぜこのタイミングでその薬の材料を買いにいったか…」
アン姉様が考え込んだ。