彼女はどこへ?
サンテリア学院はブランシュ王国の王立学校である
その西側の3階テラス前の部屋は一部の生徒が集まるサロンになっている。
「アネット遅かったわね」
お茶を入れながら、ルイーゼが声をかけた。
「ごめんなさい そこで一年生に捕まったの」
私アネット・シャリエは返事をしながら、ソファーに腰をおろす。
「また何か相談事でも持ちかけられたかい?」
クッキーを摘みながらルーカスが聞く。
彼はルイーゼの弟で彼らは双子だ。
「相談って言えば相談かしら?」
答えながらルイーゼから紅茶のカップを受けとる。
ルイーゼ・ベルガルドは同い年のいとこ
そして私の親友だ。
私たち3人はこの学院の2年生に在籍している。
サンテリア学院は五年制ですべての貴族の子息女が15才で入学する、
貴族のみならず、平民のなかでも、初等教育課程を修めて試験に合格すれば学院に通うことが出来る。
高位貴族の中には11才を迎えある程度の学力、才能を認められれば
入学を許可される者もいるが結構な難関だ。
私たちは3人とも基礎教育を12才で修め厳しい試験を突破して13才で入学を許された。
我がシャリエ大公家もベルトガルド公爵家も15才前には入学するのがあたり前になっている。
うちの兄様にいたっては、11才で入学を許され在学中は常に成績トップ
学院始まって以来の秀才と言われていた。
本人はいたっては、のんびりとどこ吹く風でいつも飄々としていたが…
兄さまは私には弱い、チョー甘々である。
今は第一王子の側近でその手腕をもて余し…じゃなかった
存分に発揮している。まあそれはさておき本題にもどると…
「この前、お茶会開いたでしょ?その時に来てた普通クラスの子達なんだけどね」
「ああ、あれだろ?ルイーゼとアネットが噂話を確認するために、やってるお茶会」
「でも、あの時はたいして問題のある話はありませんでしたでしょ?」
ルイーゼは美しい若草色の髪を、揺らしながら首を傾ける
そんな仕草がいちいち可愛いのよね~
「お茶会の2日後に一緒に参加してた友達がいなくなっちゃったって泣きつかれたのよ」
「「いなくなった?」」
さすが双子 見事なユニゾン
学院は大きく3つに別れたクラス編成で、そこから細分化した授業を自分で選んで組み立てる。
まず、普通クラスこれは平民と一代限り男爵家や、貴族でもギリギリの成績の者や留年した者などが入るクラス。
次に貴族クラスまあこれは名前のまま貴族の家の者が入るクラス
最後が特別クラスこれは高位貴族のなかでも、成績優秀な者と王族とそれに繋がる家系の者が入るクラス。
各学年で、特別クラスは1クラス、貴族クラスが2クラス、普通クラスは3クラスある。
結構な規模でしょ?
だから、いろいろと問題も出てくるのよね。
「2日後って言うと、3日前か…」
ルーカスが顎に手を当てて呟く。
「そう3日前の月曜日にお休みだったらしいの。でずっと休んでるから、相談に来た子 リリアンとエレンって言うんだけどね。昨日下宿まで様子を見に行ったんだって」
「そしたら月曜日に登校したまま帰ってないって言われたらしくって…」
そこまで言って私は紅茶を一口飲んだ。
ルイーゼの紅茶はいつでも美味しい
「いなくなったのは貴族の方?」とルイーゼ
「そう、名前はマリーナ・トロビー
遠方の子爵の令嬢なんだけどね、王都に屋敷はないみたいでね」
「それで下宿… 学院の寮ではないのですね」
学院には寮がある。全寮制ではないが、学院から距離のある家の生徒は、だいたい寮へはいる。
「マリーナの父親がすっごい過保護らしいの、寮だと他の貴族令息が言い寄るチャンスを作るかもしれないって。」
寮はちゃんと男女別の建物だし往き来は出来ない。
でも食堂は一緒なのよね。だから確かに声をかけるチャンスはあるかもね
でもそんなこと言ったら、お昼だってそうなんだけどね。
「マリーナの下宿は女性限定なの。その上お世話をしてくれるマダムがとても厳しい方らしくて。門限厳守で食事の時間、就寝の時間も管理されてるらしいわ」
「へー修道院なみかい?」
「まさにそんな感じね」
「だからこそ厳しい貴族の家や、豪商の平民の親には人気なのですって」
私は肩をすくめて言った。
「それで、アネットはどうするおつもり?」とルイーゼ
「とりあえず、みんなに集まってもらって、本当に失踪したのか?事故か?誰かにつれさられたのか?はたまた駆け落ちか?真相の確認に動いてもらおうと思いますわ」
私は緊急招集を要請するのです。
半刻後、サロンには3人の他に5人の人物が集められていた。
テーブルの中心に座る男性は輝く金髪を肩から後へと流して、悠然と微笑んでいる。
彼がこのブランシュ王国の第2王子のオスカー・ブランシュだ。
そして彼の左側に座るのがノア・バロー右側に座るのがアンドリュー・フォンダ。
2人は王子の側近候補として学院内でもオスカー殿下をフォローしている。
王子とノアは3年生アンドリューは1つ上の4年生、そして私たちは皆王族の血を受け継いでいる。
みんないとこだったり、姉弟だったりと、繋がっているのだ。
王子の後には、護衛兼補佐として、仕えているライリーとジャックが立っている。
「アネット悪いね、姉上はお城から呼ばれて今日はいないのだよ。今日の事はちゃんと報告しておくからね。」
「ありがとうございますオスカー様、まだ事件と断言出来ないのですが、調べるお許しを頂けますか?」
「そうだね。ますはマリーナ嬢の安否確認と言うことだろうか」
「はい、もう一度下宿を確認する必要があると思われます。」
「では、早速学院からの使いを下宿に行かせて詳しい話を聞いてこようか
ノア1年の担当主任を連れて行って来てくれるかい?」
「かしこまりました」ノアが一礼して、出ていく。
彼は物腰が柔らかくて、とても美しい顔立ちをしている。
女性が、みんな振り返ってぼーとなるくらいに。
なので、女性への聞き取り調査には欠かせない。
彼に微笑まれて質問されると、皆ベラベラ余計な事まで話してくれる。
「それから、マリーナ嬢がいなくなったとされている月曜日以降彼女を見た人がいるか調べようか?、アネット、ルイーゼ、ルーカス学院内はお願いできるかい?」
「はい!」
「かしこまりました」
「まかせて下さい」
三人三様の返事を返して席を立つ。
「私は学院長の所に話をしてくるよ。
何か情報が入ってるかも知れないしね。」
オスカーはお茶を一口飲みながら、手を振って笑って言った。
初めての作品です。
読みにくかったり、分かりずらかったりしたら、すいません。