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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔王誕生。

作者: gairu
掲載日:2020/11/12

俺はエリック18才になった。

村で勉学、剣術を学び、村一番の成績になったのを認められ

はれて王都マルク騎士団に入団し、騎士見習いになる。

明日、王都に移住する。


村の外には忌々しい塔が佇む。

6年前に村の衛兵団長だった親父と20人以上いた団員、腕っぷしのいい大人が集まり塔への調査を行った。


いくら待っても誰一人帰ってこなかった。

親父達の失踪した手掛かりや足跡が何も残されておらず、村長は親父達は逃亡した、と結論付けた。


親父はそんな腰抜けじゃないと知っている。

何かあったはずだ。あの塔と何らかの決着をつけないと、俺は王都に行く気にはならない。

別に化け物がいるんじゃないんだから。調査して帰ってくればいい。


まだ日が昇る前の夜中、村人達に見つからない時間を狙って村を抜け出して、塔の入り口に辿りついた。

近くで見ると円柱の漆黒の塔は、まるで作り立てのようにキズ、汚れの一つすら見当たらない。


俺は塔の中に飛び込んだ。中は壁に妙な文字が書いてあるだけで何もない。

この国の文字ではないようだ。

振り返って後ろの入り口を見ると、ただの壁になっている。

しまった。退路が無くなった。

壁は壊せそうにない、先に進むしかなさそうだ。


辺りを歩いていると、目の前に白い物がぼやっと浮き上がると、形を成して

人サイズの目が空洞の人形のような何かが現れた。


「私はあなたです。あなたのことは何でも知っています」


「俺のことを?お前は何をしたいんだ」


この禍々しい者に反抗する気は起きない。一瞬でそう思わせられる。


「小さい時から畑の物を盗んで食べていたんですね。

まあ、このへんは可愛いでしょう。

あなたは好きな女の子と仲のいい男子を

ペットの犬殺しの犯人にでっちあげました」


「何なんだ。なぜ知ってる!」


村に知っている人がいるはずがない。あれは仕方なかったんだ。

子供の頃からずっと一緒だった幼馴染には負けたくなかった。メルだって、まるで俺のことを見ていなくて・・・・・・。


「模擬試合では、同じ自兵団の村兵に勝負はついているのに、追い討ちをいれて半身不随にさせた。あなたは悪い人です。私達、魔の物に近いでしょう」


人形の言葉を聞いているうちに絶望、後悔、自己否定の思念が湧き上がってくる。

もうやめてくれよ、謝ったんだよ。

反省だってしてるさ。

俺の中に黒い感情が沸々と湧き上がっている。


「さあ、どうぞ。先へ進んでください。あなたは特別なんですよ」


人形が話しているが、もはや頭には入ってこない。

ふらつきながら歩いて螺旋階段を上り、気づいたら2階にいた。

その光景に俺は目を見張った。

よく知っている2人が待ち構えていた。


当時と変わらない身なりの親父がいる。黒髪でショートカットの丸い目をした女性はメル。

親父が近づいてきて口を開いた。


「みそこなったぞ、エリック。正義の味方をした卑怯者め」


「彼を貶めて、私との仲を引き裂いた悪党よ」


なんでよってたかって責めるんだ。お前だって子供の俺をおいていなくなったじゃないか。

お母さんがどれだけ大変だったか知らないだろう。

メル、ああするしかなかったんだ。


さっきから、人形の臭気に触れて頭がボーっとする。

ろくに思考が安定しない。


「我が一族の恥さらしめ。この場で成敗する」


「私たちは傷つけられた、あなたにはきついお仕置きが必要ね」


二人が武器を手に襲い掛かってくる。


「話を聞け!」


親父の斧、メルの剣を愛刀で薙ぎ払う。

斬撃を何度も押さえているが、プロテクターは今にもはがれそうなほど壊れ、小手は分断して真っ二つになり地面に転がり落ちた。


このままではもたない。どうにかして止めないと。


親父が袈裟斬りを放ち、俺は刀で受け止める。

背後に殺気を感じる、前に親父、後ろにメル。

死のイメージを知覚し、目を瞑り、なりふり構わず武器を振り回した。


「うわぁぁあああ!!!」


辺りが静まり、血の滴がポタポタと落ちる音が反響している。

目を開けると、親父は首から血が滲んで倒れこみ、メルは刀が胴体に刺さり貫通している。


「――――人殺し」


メルはそういうって膝から崩れ落ちて動かなくなった。

親父に近寄ってみたが助からないのが分かる。致命傷だ。

親父は死に際に呟いた。


「悪魔の子・・・・・・」


憎い、村が人が世界が親父がメルが、神が――――


頭が激痛に苛まれ、エリックは倒れた。

うずくまり苦しんでいるエリックの頭から角が生え、背中から黒い羽根が広がる。

顔や体は黒い模様が浮かぶ。

俺が俺じゃなくなる。――――何かが中にいる。

まだしにたくな・・・・・・。


人形こと魔の使いは戦いの跡に赴いた。

一通りの儀式が終わり、計画通りなら魔王が誕生しているからだ。

現場に着くとエリックの異変に気が付き、心が躍る。


この塔が現れて魔物になった者はいるが、魔王は見たことがない。

エリックはとても優秀だったが、心の奥底にわずかに、にごった闇を見つけた。

そこを利用して闇の力を覚醒させた。


魔王の横には人に変身した泥人形が2体転がっている。

魔王は立ち上がりこっちを見た。


「魔王様。お目覚めですか?」


「ああ、いい気分だ」



ザシュッ――――。


魔の使いの首がごろごろと転がる。

その会話が魔の使いの最期だった。


魔王は生前の記憶はなく、ただ無性に悲しさや寂しさを感じていた。

そんな気持ちになるのがよく分からなかった。


魔王は自由を求め、自らの欲を手に入れるために外へ旅立った。

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