国際機関では
前回の続き。
3つの国の沼から検出された未知の毒物について、
2つの国が国際機関に通報していた。
日本、そして、B国の旧宗主国。
A国で採取されたサンプルは廃棄されていた。
通報先は、国際刑事警察機構で、
この物質を使ったテロが危惧されていた。
機構の会議室では、
「どこかの国の生物化学兵器研究機関で開発されて、
何らかの理由で外部に持ち出された可能性も」
「日本とB国以外ではどういう状況なのか」
「こちらで掌握していない国で同様の事件が起きたこともありえる」
「この毒物を製造するためには、高度な専門知識と、
大がかりな設備が要る。
設備を建設して稼働させる資金も必要」
「解毒の方法もないので、ヒトに使われるとどうしようもない」
日本では、警察庁が化学工業の業界団体に協力を要請して、
今回の毒物について、製造可能な事業者が推定できるか照会した。
「日常的に使われる、あまり強くない毒物については、
こちらの会員である事業者が製造しています。
製品としては、殺虫剤や除草剤、農薬などですね。
そのような毒物は大量に製造されます。
商売になるので。
ただし、未知の毒物で強い致死作用があるものは、商品にはなりえません。
製造禁止になるのは確実なので。
調査しましたが、私どもの会員で、お問い合わせの毒物を製造しているところはありません」