第28話『譲れないモノと妥協案』
「ところでリウス。その姿って……」
「なんか……スキルを使ったら角とか色々消せたんだ」
原理がよく分からないので曖昧な説明になってしまったが、リウスとしてもこう説明するしかない。
スキル名が【外見偽装】なので、消すという表現が適切なのか分からないが、大した問題にもならないので放っておく。
「外見偽装って確か……ステータスが下がるんじゃないっけ?」
「ああ。だから今の俺のステータスはユキよりも低いんじゃないかな。まあ、ステータスを確認する方法がないから分からないんだけど」
「あれ? メニューから確認できないの?」
そうか。ユキはまだ気づいていないのか。
リウスは自分のステータス画面の表示が可笑しくなっていることを伝え、ユキのステータス画面も確認することにした。
結果は、リウスの画面と同じく謎の記号が表示されるだけで、レベル以外の項目から意味を読み取ることはできそうになかった。
ユキが自身のステータス画面を確認している中、リウスはユキのレベルに注目していた。
レベルの項目に表示されていた数字は――200。
ユキのレベルに、リウスのような大きな変動はなかった。
つまり、この世界に来たプレイヤーのレベルが一律で上がっているという訳ではないということだ。
となると、リウスのレベルが上昇した原因として現状最も可能性が高いのは、やはりあの影だろう。
アポカリプスでは、魔物討伐時の経験値は戦闘に参加したもの全員で分配されていた。
しかし平等という訳ではなく、敵に与えたダメージ量によって分配の割合が変わるという仕様だった。
あの影に対して、ユキが攻撃らしい攻撃を一切していないのであれば。経験値獲得の仕様が変わっていないのであれば。影討伐によって得られる経験値は全てリウスが獲得したことになる。
――やっぱり、あの影はボーナスモンスターのようなものだったのかもしれない。
ユキのステータス画面をじっと見つめながら思考を続けるリウスに、ユキが怪訝そうに話しかける。
「何か、可笑しなところでもあった?」
「え? いや、そうじゃないんだけど――」
自分のレベルのことを伝えるべきか、黙っておくべきか。
一瞬の逡巡の後、黙っておく必要もないだろうと、リウスは自分のレベルについてユキに話すことにした。
◇◇◇◇◇
それから暫く、リウスとユキはレベル上昇の原因について話し合っていたが、情報の少ない現状では大した推測もできず、リウスが考えていた可能性以上の成果は得られなかった。
「ふわぁ……ん……」
ユキがあくびを一つ。釣られて出そうになったあくびを、リウスは無意識のうちに噛み殺す。
やはり2人とも、疲れは溜まっていたらしい。
「そろそろ寝るか」
「そうだね……」
言ってリウスは鏡台に向かい、椅子に座る。
「じゃあ、俺はここで寝るから。ベッドはユキが使ってくれ」
「え、そんな、ダメだよ。ベッドはリウスが使って?」
「いや、俺はここで寝るから」
「私がそこで寝るよ」
「俺が寝るって。ユキ、疲れてるだろ?」
「それはリウスだってそうでしょ?」
…………埒が明かない。
だからと言って、同じベッドで寝るのはサイズ的にも倫理的にも無理があるだろう。
「ここはリウスの部屋なんだから。リウスがベッドを使うべきだよ」
「なら、ユキの部屋に移動すれば、ユキはベッドで寝てくれるのか?」
「う……そ、れは……」
ユキはこんなに頑固な人物だっただろうか。
文字だけの会話だったとはいえ、ユキのことはそれなりに分かっているつもりだったのだが。
――なんで俺たちはこんなことで言い争ってんだか。
仕方なしと、リウスは妥協案を提案する。
「なあ、ユキ。一緒の部屋で寝るのは今日だけなのか?」
「あ……え、っと、できれば、明日も同じ部屋が良いなぁ……と、思ってます」
「なら明日、俺がベットで寝るよ。だから今日はユキが使ってくれ」
「うー……」
リウスの妥協案を聞き、長考――という程長い訳ではなかったが、しかし、それなりの時間をかけて考えた後、
「……分かった」
ユキはそれを承諾したのだった。




