第24話『当たり前の明日』
日が暮れ始め、町は魔力灯に照らされる。
冒険者ギルドは、依頼を終えてギルドに報告をしに来た冒険者で溢れていた。
部屋で仮眠をとっていたリウスは、下の階から聴こえてくる騒音を無意識のうちに耳で拾いながら目を覚ます。
そして、メニュー画面を開いて時刻を確認した。
「五時半か……」
待ち合わせの時間は午後六時。
起きたい時間に起きることが出来る、という地味な特技を持つリウスは、久しく使ったその特技が失われていなかったことに心の中で安堵する。
「ま、無くなってもそこまで困るものじゃないけど」
誰に聞かせるでもなくそう呟くと、リウスは一つ伸びをして、身支度を整えることにした。
◇◇◇◇◇
人の生活感が凝縮されたような喧騒を感じながら、ギルドの階段を降りる。
昼間よりもむさ苦しさが五割増しになった一階を見渡すと、既にユキはそこにいた。
出会った時の軽鎧から白色のワンピースに着替えていたユキは、男の多いこの空間ではその容姿も相まってかなり目立っていた。
「ごめん。遅くなった」
「あ、リウス。私が早く来ただけだから、気にしないで」
ユキが一人で使っていたテーブルに腰掛けると、リウスは周囲を見回した。
「この時間はギルド全体が食事処として使われてるんだな」
「そうみたい。外にお店を探しに行くかここで食べるか、どっちにしよっか?」
「――今日はここにしよう。今日はちょっと、店を探し歩く気にはなれない」
苦笑いしながらリウスは答える。
あまりにも今日は色々なことがありすぎた。リウスとしてはこれ以上、新しい何かに挑戦する気にはなれなかった。
そしてそれは、ユキも同じだったようで。
「……そうだね。散策はまた明日にしよっか」
ユキのその言葉を聞きながら、リウスはふと、疑問に思う。
当たり前のように明日の話をするユキの姿を見て、疑問に思う。
――俺は、いつまでユキと、行動を共にするんだろう。
明日まで? あと一ヶ月? 半年ぐらい? 別れる必要が出てくるまで無期限に?
そもそも、どうして一緒に行動しているのだろう。
なぜ。どうして。何の為に。
――なんの意味がある。
「ねぇリウス。いろんな料理があるよ。どれにする?」
メニューを見て目を輝かせるユキは、笑顔でリウスに話しかける。
「――そうだな。どれにしようか」
リウスは、今の思考を無意味なものとして切り捨てて、目の前のメニュー表に意識を切り替えた。




