第22話『自分の身体』
冒険者ギルドの奥にある階段を登り建物の二階に上がると、目に入る景色は一気に様変わりした。
廊下に面したドアがいくつも並んでいる光景は、向こうの世界のホテルを彷彿とさせる。
リウスが受け取った鍵には205と書かれたタグが付いており、ユキの持つ鍵には206と書かれたタグが付いていた。
「リウス、この後どうする?」
鍵を使い、自分が泊まる部屋のドアを開錠したユキがリウスに尋ねる。
「取り敢えず、少し休んでからどこかで食事をしようか」
「そうだね。じゃぁ……六時ぐらいに一階で待ち合わせ、で良いかな?」
「了解。それじゃ、また後で」
「……うん、またね」
リウスも自分の持つ鍵で部屋を開けると、もう一度ユキと顔を合わせ、お互いに自身の部屋へ入った。
部屋の作りは簡素なものだった。
シングルサイズのベッド、鏡台、椅子がそれぞれ一つずつあるのみ。部屋数も当然一つだ。
トイレはギルドの一階にしか設置されておらず、入浴は町の公衆浴場を使用してほしいとのことだった。
一先ずリウスはメニュー画面から装備を変更し、この世界でも違和感のない服装に着替える。
そして、その姿で鏡台の前に立つ。
「――っ」
そこで、自身の新たな特徴に気がついた。
腰から生える翼よりも、頭から伸びる角よりも、それは目立っていた。
リウス自身も気づかなかったその特徴は、目の色だ。
通常、人間の虹彩は茶色や青色、グレー、緑色であることが殆どだが、リウスの瞳は透き通る様な紅色をしていた。
真っ黒な瞳孔が紅色に浮かび、神秘的な美しさを感じさせる。
そういえば、キャラメイクでこんな瞳の色にした気がしないでもない。
しかし、単体で見れば綺麗なその瞳も、リウスの風貌と組み合わさることで、そこはかとない恐怖を与えるものに変化していた。
「研修中の子が目を合わせない様にしてたのはこれが理由か……」
確かに、さっきまでの鎧姿でこの瞳をしていたら、女の子としてはさぞ怖かったことだろう。
だがそう考えると、青果店のおっちゃんや、受付のミュエ、そしてなによりユキは、こんな目をしているリウスと臆せず――少なくとも表面的には――接していたことになる。
ミュエは仕事柄様々な人と接することで慣れているのかもしれない。青果店店主はあの体格からして、過去に冒険者でもしていたのだろうか。
だがユキは、そうではない筈だ。
リウスが知り合いだから? ゲームでアバターを見慣れていたから?
なんにせよ、よく怖がらなかったものだと思う。
「まぁ、どうでもいいか……」
誰に聞かせるでもなくそう呟くと、リウスはベッドに仰向けで寝転んだ。
腰に感じる僅かな違和感。その感覚は、腰から生える翼が紛れもなく自分のものなのだ、とリウスに実感させる。
「本当……どうなってんだか……」
静かに、リウスは目を閉じた。




