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君の為なら神さえも。  作者: 塩砂糖
第1章『異世界転移編』
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第12話『非現実的な現実』

 走り始めて十数分。町から少し離れた位置で二人は走ることをやめた。

 ゲームアバターの身体能力は凄まじく、4キロ以上走り続けたにも拘らず、息ひとつ上がることはなく、疲れも殆ど感じなかった。


「ははっ、結構楽しいね」


「そうだなっ、やっぱり、走れるってのはいいな」


 人間、大切なものというのは失ってから気づく。

 リウスはそれをこれまでに嫌という程思い知らされてきた。


「ところでリウス、その鎧、暑くない? 私は軽鎧だから涼しいけど」


「まぁ、少し蒸れるかな」


「別のものに着替えたら?」


「……脱げないんだ。これ」


「え……そうなの?」


「ほら、鎧なんて着たことがないからさ、どこがどう繋がってるのか分からないんだよ」


「ちょっと、私にも見せて」


 そう言ってユキは、リウスの周囲をぐるぐると回りながら鎧を観察し始める。


「何か分かるか?」


「んー……やっぱり難しいかも。こんな鎧、ゲームでしか見たことないから」


「だよな……」


 町に鎧の着付けでも行なっている場所があれば良いのだが。最悪の場合は――――頑張って脱ぐしかあるまい。


「ゲームだったら装備変更は簡単なのにね」


「そうだな。ゲームならメニューから簡単に――あ」


「あっ」


 いや、まさか。ここは仮想(ゲーム)ではなく現実(リアル)だぞ。いくらなんでも物理的に着ているものをそんな方法で変えることなんて――。


「流石に……無理だろ」


「た、試しに一回やってみようよ」


「ああ……分かった」


 ユキに促されるままメニュー画面を開く。

 ステータス確認、スキル一覧、アイテム一覧。様々な項目の中から装備変更を選択する。


 装備中のアイテムが一覧となって表示される。その右側には装備可能アイテムの一覧が表示されていた。


 リウスは個別に装備アイテムを選択するのではなく、マイセットという項目から既に完成された装備一式を呼び出し、装備と書かれたボタンを押す。


 直後、一瞬という言葉すら不適切な刹那、リウスが認識する間もなく、着用していた黒い全身鎧は、黒いパーカーとジーンズに変化していた。


 背中からは、今まで鎧の中に仕舞い込まれていた一対の黒い翼が姿を現わす。翼が通せるよう自動で服の形状が変化しているらしい。


「嘘だろ……」


「……凄い、ね。マジックみたい」


「妙なところでゲームっぽいな」


 メニュー画面の存在といい、この装備変更方法といい、現実なのにどこか現実味に欠ける。


 果たしてこれは、リウスとユキがプレイヤーであるが故の現象なのか、それともこれがこの世界の“普通”なのか。


「でもリウス、その格好は、ちょっとまずいかも」


「どういうこと?」


「ほら、見て」


 ユキの指差す先には、もうじき到着する目的の町があった。距離にしておよそ1キロ程度か。


「歩いてる人の服、見える?」


「薄っすらだけど、なんとか。……確かに、この服は場違いだな」


 視界に映る人々の服装は質素な布の服が殆ど。現代的なリウスの姿は、あの中では浮いてしまうだろう。


 この世界が完全に地球と異なる異世界である場合、日本で得た知識を使った推測は意味を成さないかも知れないが、服装を見る限り文明レベルは中世中期から中世後期程度といったところか。


「服装、どうしよっか?」


「そうだな……」


 町を歩いている人の中には武装している人も少なくない。目立たない布の服も皮の鎧もアイテムボックスに入ってはいるが……。


 悩んだ末、リウスが選択したのは、最初に目覚めた時装備していた漆黒の鎧だった。しかし、邪魔だったので兜は着けなかった。


「その鎧だと怖がられないかな?」


「怖がられるかも知れないけど、一応それも狙いだからな」


「……どういうこと?」


「ユキ、俺たちが町に着いた後、真っ先にしなきゃいけないことは何だ?」


「えっ……と、宿の確保?」


「もちろんそれもあるけど、もっと重要なことがあるんだよ」


「重要な、こと?」


「――金銭の確保だ」

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