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君の為なら神さえも。  作者: 塩砂糖
プロローグ
1/53

第1話『邂逅』

本作は『最強魔王の異世界放浪記』の改題改稿版となります。

新しく生まれ変わった本作をお楽しみください!

「……一人だけだと? そう言ったのか?」

「ええ、他の職業(ロール)はある程度の数が確保出来たのだけど……ね」

「……どうするんだ。複数いることを前提とした計画だった筈だ」

「今更言っても仕方ないでしょう。生存率を上げる為にも、最後に飛ばそうと思うのですが」

「……それしかないな。――いや待て、確かその時期には」

「化身……よね」

「……大丈夫なのか?」

「念の為、同じ場所にもう一人送っておきましょう。手伝ってくれますよね?」

「……ああ、勿論だ」



◇◇◇◇◇



『――にちは。こちらの――が聞――ていま――』


 気が付いた時には、彼はそこにいた。

 そこは、何処までも白く、果てのない空間。

 そこには彼以外にも、人の形を模った『何か』が二つあった。それは白色をしていたが、何故か背景と同化する事はなく、確かにそこにいると認識する事が出来た。

 彼が状況を飲み込めずにいると、二つの『何か』から再び声が聞こえてきた。


『あれ……? 聞こえていませんか?』

『……上手くいかなかったのか? 洒落にならないぞ』

『あ、あの〜、大丈夫ですか? 意識、ありますか?』


 彼は、この状況に対する疑問を全て棚上げし、自分に投げかけられているであろう声に応えることにした。


「……いえ、聞こえて、います」

『あっ、よかったぁ。無事成功ですね』

『……聞こえていたのならさっさと返事をしろ』

「……すいません」


 この状況で混乱せずに返事をしろと言う方が無茶だろうと、彼は心の中だけで呟く。

 『何か』は人の姿をしているだけで見た目で性別は判らないが、声を聞く限り男と女がいるようだ。

 言わずもがな、口調の荒い方が男だ。


『この状況では混乱するのも当然でしょう。私たちはもう、彼らに頼るしかないということを忘れてはいけません』

『……分かっている』


 理解の出来ないやり取りを聞きながら、彼は疑問に思っていたことを訊ねる。


「ここは……何処ですか?」

『……それはお前が知る必要の――』

『あえて言うならば、**ざる**達の**ところ。と言った所でしょうか』

『……何故答える』

『何か不都合ですか? どうせ忘れてしまうんですから』

『……どうせ忘れるのだから答えなくても良いだろう。本来ならこの時間も不要なものだというのに』

『貴方は合理的過ぎるんですよ』

『……お前は無駄が多過ぎる』


 忘れ去られているような気がしてならないが、彼は話を続ける。


「つまり、**だと?」

『はい、そう捉えて頂いて結構ですよ』

『……おい、ここに留め続けるのにも限界がある。要件は早く済ませろ』

『そうですね。では手短にいきましょう』


 コホンと咳払いをしてから、女性が話し始める。


『貴方にはこれから**を引き継いで***に行って頂きます。そこで*を***ほしいのです』

「あの……意味が分からないんですが……」

『……どうせ忘れる。理解する必要はない。全てこいつの自己満足に過ぎない』

『そんな言い方……まあ、事実ですけど……』


 答えになっていない答えを聞いていると、視界が暗くなっていくのを感じる。


『……時間切れだな』

『はい……それでは、よろしくお願いします』

「待ってくれ、まだ聞きたいことが――」


 彼の抵抗も虚しく、視界は更に暗く、意識は遠退いていく。そして、光が見えなくなる。


 ――その時だった。


「やあ、初めまして」


 突然、目の前に赤い外套を着た人物が現れる。

 先程まで話していた『何か』のように朧げな姿ではなく、確かに、そこにいると認識出来た。

 視界の陰りも何故か止まり、先程までいた『何か』はいつのまにか消えていた。


「初めまして、と言っても、僕は君のことをずっと視ていたのだけどね」

「……何の話だ」

「いや、視ていた、というのも違うな。より正確には、“視なくとも分かっていた”、かな。まぁ、今はそんな無駄話をしている暇もないか。ここに僕が来たのはね、今まで掛けた迷惑と、これから掛けるであろう迷惑を謝りに来たんだ」


 赤い外套の男が顔を近づけてくる。しかし、その顔は靄がかかっているようにはっきりとせず、表情は分からない。


「申し訳ない。そして、“ありがとう”」

「ありがとう……?」

「さ、話はこれで終わりだ。健闘を祈るよ」

「おい、ちょっと待て――」


 男は背を向ける。

 再び意識が遠退いていくのを感じる。

 光が完全に消える直前、遠くで、しかしはっきりと、声が聞こえた。


「さあ、この世界(ものがたり)の被害者(しゅじんこう)は、君だ」

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