プロローグ
その時は、朝日が顔を出したばかりの頃。
昨晩は、母と喧嘩してしまった。
私だって、そんなつもりは無かったんだ。
腹を立てた私は、部屋にこもり布団にくるまったが一睡も出来るはずもなく、朝を迎えた。
そして、その苛立ちを残したまま街へ飛び出してきたのだ。
ジジル・シオンは、もう数日で15歳の誕生日を迎えようとしていた。
それだけなら普通に喜ばしい事なのだが、国の為に働くという意志を持つ若者は、家を出て、戦士や魔術師等を目指して修行をするという決まりがある。
私も、この国の為になる大人になりたいと幼少の頃から思っていた。
同じように志していた友達は、学校に通ったり、或いは凄腕の魔術師に弟子入りしている。
「私は、魔術師になりたい!!
もう、15歳になるんだ!
……この前の適性検査では駄目駄目だったんだけど、頑張るから!」
父は応援してくれていたが、母が危険だし、シオンがする事じゃないと反対していて、それをなかなか説得出来ずにいた。
皆はもう、将来の夢に向かって走り出しているのに。
私は、魔術師になりたいんだ。
農家じゃなくて、作家でもなくて、会社員でもなくて、魔術師になるの! そして、両親の営む花屋は、絶対に継がない!!
そんな事を考えては、またイライラしてしまう頭を冷やすために朝日が昇ったばかりの街を散歩しているのだ。
家を飛び出したばかりの熱くなっていた頭は、街を半周した頃には、だいぶ冷えていた。
家への帰り道、いつも来ている八百屋、肉屋を通り過ぎて、喫茶店に公園も………学校や交番………お寺……
そこに、彼はいた。
目の前の墓に向かい、手を合わせて何かを祈るように。
まるで、彼にスポットライトが当たってるかのようだった。私の視界がが彼だけをうつした。
その視線に気づいたのか、そのまま振り返った彼と目が合った。
それが、私と先生の出会いである。