表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

993/1265

最強の使役獣

 最強の使役獣。

 それは、多分今後ずっと変わらないんじゃないかと思う。

 ヴァルキリーだ。

 真っ白な毛並みで二本の角が生えた騎乗可能な四足歩行の使役獣。

 そのヴァルキリーは生まれながらに魔力を持ち、そして、群れ全てでその魔力を【共有】している。


 そのおかげで、ヴァルキリーは一頭いるだけで戦局を大きく変えてしまうことができる強さを持っている。

 ただでさえ、魔力が高ければ攻撃力も防御力も上がる。

 けれど、それだけではなく豊富な魔法や能力を持っている。

 アルス兄さんの使う【身体強化】や【壁建築】なんかが使えるだけでも十分だけど、ほかにもいろいろある。

 意外とやっかいな魔法といえば、ギザニア家とか言うらしい貴族家が持っていた【防魔障壁】なんかもあるだろうか。

 あれは、魔法の使用者の魔力で相手からの攻撃魔法を相殺してくれるらしく、ヴァルキリーの魔力の【共有】と組み合わされるとほとんど魔法無効みたいな効果になってしまうからだ。


 さらに、戦という点で言えば魔法ではないはずの【収集】という能力も便利すぎるかもしれない。

 【収集】は、迷宮に籠っていた探索者が持っていた魔術のような力だそうだ。

 いろんなものを【収集】することができるという力で、荷物を保管することができる。

 ようは、魔法鞄なんてものが無くても大量の荷物を持ち運べるということだ。

 これがどれだけすごいかは、俺も戦場に出てみてよくわかるようになった。

 去年のグルーガリアの材木所での戦いの後もそうだった。

 手に入れた材木を持って帰るだけでどれだけ苦労したか。

 【収集】さえ使えれば、どこにその荷物がいくのかは分からないが、手ぶらで帰ることができたのだろう。

 そうすれば、その分だけ移動が捗るということで、移動時間の短さはそれだけ軍にとって有利に働くだろう。


 そんなわけで、一頭でもいれば勝ちというほどの強さと有能さを持つヴァルキリーだが、もしどうしてもそのヴァルキリーにたいして勝ちたかったら、最終的には大元を叩くしかないだろう。

 ヴァルキリーの群れの中でも、ひときわ異質で、しかも魔法の起点となっているカイザーヴァルキリーを倒さないと勝利はつかめない。

 が、このカイザーヴァルキリーに勝つというのが至難の業だ。


 なぜなら、カイザーヴァルキリーは普通のヴァルキリーとは全く違う別物だからだ。

 というか、もはや使役獣と呼べるのかどうかもよくわからない。

 カイザーヴァルキリーは精霊化しているのだから。


 アイが教えてくれたところによると、アルス兄さんが一番最初に孵化させた初代ヴァルキリーにたいして【合成】という魔法を使ったことで存在そのものが変質したのだという。

 オリエント国のようにものづくり、特に武具に精通しているブーティカ家という貴族家がある。

 その家が持つ【合成】は本来、素材同士をかけ合わせて性能を上げるために使われていたのだそうだ。

 それをヴァルキリーに使ったそうだ。


 当時、すでに最強格だった初代ヴァルキリーとかけ合わせる素材となったのは、迷宮核と吸氷石だそうだ。

 膨大な魔力を内包する迷宮核と、人の存在を許さない大雪山の頂きで寒さを吸収し続けた超高品質の吸氷石。

 しかも、その吸氷石にはアルス兄さんが【氷精召喚】で出した氷精たちを無数に取り込んでいたらしい。

 そんな他では絶対に手に入らないであろう特級品の素材を使って【合成】された初代ヴァルキリーは精霊化を果たした。


 その姿はそれまでの白色でもなければ、俺のワルキューレのように赤くもない。

 体から常に雪の結晶が吹雪いているかのように、キラキラしたものが舞っている幻想的な姿をしていた。

 多分、何も知らずに初めて見た人はカイザーヴァルキリーのことを使役獣とは思わないだろう。

 幻想的な、神秘の獣、神獣とでも思ってもおかしくはないと思う。


 実際、その体は生物の領域を外れているのではないかとアルス兄さんは言っているみたいだ。

 寿命があるかどうかもわからない。

 ちなみに、アルス兄さんと一緒に宇宙船に乗って月に行ったというカイザーヴァルキリーは空気がない状態でも平気だったそうだ。

 空気がない宇宙空間というのがどういうものかはちょっといまいち想像できないけど、多分水の中で息を止めているはずなのに死なないって感じなんだろうと思う。

 それを聞いただけでも、カイザーヴァルキリーに勝てる方法が想像できないよね。


 まあ、結局何が言いたいのかというと、そんなカイザーヴァルキリーを頂点にした使役獣ヴァルキリーは最強なのだということだ。

 が、あくまでも使役獣であることにはかわりはない。

 そして、使役獣であるからにはその特性もきちんと残っていた。


 つまり、角なしヴァルキリーの魔力で使役獣の卵を孵化させることに成功したメメント家は、角ありヴァルキリーを手に入れた。

 そして、そのヴァルキリーたちは当然、人であるメメント家の者たちの言うことに従ったのだ。

 こうして、最強の使役獣を手に入れたメメント家がフォンターナ連合王国と戦うこととなった。

 劣勢にたたされていたと思われていたメメント家がいくつもの国に多大な被害を与えたメメント大戦はこうして始まったのだという。

お読みいただきありがとうございます。

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けますと執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

本作の書籍版がただいま発売中です。

第一巻~第六巻まで絶賛発売中です。

また、コミカライズ第一~二巻も発売中です。

下の画像をクリックすると案内ページへとリンクしていますので、ぜひ一度ご覧になってください。

i000000
― 新着の感想 ―
[良い点] 手に入れたら、最強だろうけど 全部筒抜けなんだよな、カイザー経由でアイには
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ