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アイへの指示

「アイ、確認だ。エルビスは新バルカ街にいるな?」


「肯定です。エルビス・バルカ様は新バルカ街におられます」


「よし。さっきの報告内容だと刺客は俺を直接狙ってくるつもりなんだと思うけど、一応エルビスにもこのことを伝えておいてくれ。もしかしたら、エルビスやほかの人が刺客に狙われる可能性もあるからね」


「問題ありません。追尾鳥を飛ばす際にエルビス・バルカ様には報告済みです。新バルカ街へ入る際の確認などを密に行うように指示を出されておられました」


「そうか。仕事がはやく助かるね。それじゃ、もう一つ仕事を頼む。バリアントにいるアイは地上に降りてあそこの住民に声をかけてくれ。都会に来て暴れたい奴らは今から来いってな」


「承知しました。バリアントから戦力の移動を開始させます」


「頼んだ。あと、俺に刺客を送ることに賛成した議員連中の顔と名前も確認しておいてくれ。そいつらは絶対に許さん」


 船の上でアイから刺客について聞いた俺は、すぐにその後の指示を伝える。

 ひとつはエルビスがいる新バルカ街に対してだった。

 これは刺客がどういう存在なのかよく知らないためだ。

 俺を狙って一直線に来てくれればそれでいいが、からめ手を使われると面倒だ。

 また、ミーティアなんかが誘拐されたりなんてことがあっても困るしな。

 警戒しておくべきだろう。


 そして、それと同時にバリアントにいるアイにも動いてもらうことにした。

 ここよりはるか北にあるバリアントは、大雪山、あるいは霊峰と呼ばれるものすごく高い山々の麓にある場所だ。

 あそこから人を集めて送らせる。

 当然、そこからこちらに向かってくるのは老人や子どもではなく、若い男性が多いことになるだろう。

 つまり、傭兵の補充だ。


「ちょっと待ってください、アルフォンス団長。バリアントから人を集めるって、どういうことですか? 傭兵として、ってことなんですか?」


「そうだよ、ウォルター。今、バルカ傭兵団に所属している傭兵はまだ少ない。これは、俺が傭兵たちを養っていくために数を抑えていたためでもある。傭兵たちの食い扶持を確保する必要があったってことだな。でも、いざというときに使えるようにと思って遠方で戦力を育てておいたんだよ」


「マジっすか。もしかして、向こうの連中も【見稽古】とかを使えたりするんですか?」


「ああ。実は前にこっちから何人か向こうに送っていたんだよ。で、俺が名付けをして【見稽古】やらを使える奴がバリアントで名付けし直した若い傭兵候補に剣や弓、あとは団としての組織の動きを教えさせた。まあ、もともと向こうでエルビスが鍛えてたんだけどね。こっちに連れてきても、ある程度の即戦力としてバルカ傭兵団に組み込めるはずだよ」


「それって、もしかしていずれはオリエント国と戦うことを考えていたってことなんですか?」


「どうかな? けど、備えあれば患いなしって言うしね。それでなくても、ただでさえバルカ傭兵団は人数が少ないから、これくらいしておかないとね」


 バルカ傭兵団はまだまだ弱い。

 アトモスの戦士であるイアンがいるから、この辺の国でもそれなりに知られるようにはなってきていた。

 実際に、周囲の国は弱国であるはずのオリエント国にはここ数年、大きな戦いを挑んでこなくなっていたくらいだ。


 だが、それでも傭兵団としてみると規模は小さいのだ。

 ほかの国で街を乗っ取った傭兵団の話を聞いたこともあるが、うちよりも人数が多いところもある。

 まあ、そういうところがきちんとした組織的な運営ができているかというと疑問もあるが、やはり数は正義だ。


 しかし、数だけを増やすのがいいかというとそれも違う。

 というのも、同じ人数でもその構成員によってその集団の強さが大きく変わるからだ。

 いわゆる騎士や貴族に該当するような存在がいれば、それは一人で百人力どころか、文字通り一騎当千となる。


 そういうことを考えて、バルカ傭兵団の現状を見るとどうなるだろうか。

 俺たちの本拠地である新バルカ街は戦力が五百程度で強い奴と言えばイアンとエルビスくらいだ。

 そして、そんな新バルカ街に一番近いのは都市国家であるオリエント国だ。

 あそこはなんだかんだで動員可能な兵数が数千は越えている。

 そして、弱国だ、などといいながらもバナージをはじめとする議員などの連中は騎士や貴族に匹敵する魔力量を持っている。

 それに加えて魔弓オリエントという遠距離武器も揃えているのだ。


 組織的な強さとして見ると、今はオリエント国のほうが上だろう。

 そんなオリエント国が刺客を放ったという。

 これは普通ならばおかしい。

 もしも、本当にグルーガリアの材木所を攻撃した俺たちの行動を咎めるのであれば、俺を呼び出すだけでいいはずだ。

 あるいは、バルカ傭兵団を危険視するのであれば、本拠地から俺が率いている部隊が離れたこの機を逃さずに街を攻撃すればいい。


 そうではなく、刺客を送って俺を殺そうとしているのは理由があるはず。

 多分、新バルカ街にある魔道具やら教会やらが欲しいんじゃないだろうか。

 つまり、向こうには俺を消す意図があっても、バルカ傭兵団と戦うつもりはない可能性が高い。

 が、こっちはそうじゃないからな。


 俺の命を狙ってきている以上、完全に敵対関係にあるとみなすしかないだろう。

 ならば、オリエント国と戦う準備は必要だ。

 そのために、できればもう少し頭数はほしい。

 バリアントから増援が到着するまでちょっと時間がかかるかな?

 それまでには俺のもとに刺客がやってくるだろう。

 それを倒すか捕まえるかして、オリエント国が俺の命を狙ってきた証拠を得て、それから反撃に出ようか。


 エルビスにも準備を進めさせておこうかな。

 グルー川の岸にたどり着いた俺は船から降り、オリエント国との今後の戦いのことを考えながら思わず笑ってしまっていたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本質的に覇王気質だから、たとえ良好な関係持てたとしてもいずれ国家乗っ取り実行しただろうなっていう信頼感がある アルスは内政のための軍備だったけど、こちらは戦争のための内政路線で突き進むのかな…
[良い点] 虎の尾を踏んだね。 お小言と言って、袖の下貰って置けば良いものを 親玉の挿げ替えを狙って、欲をかきすぎたようだ。 アトモスの戦士を、配下に持てるってのも 魅力だったのだろう。
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