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城下町

「よし、城下町をつくろう」


 少し考え込んでいた俺はグランのいう権力の象徴たる城を造るだけにとどまらず、それに付随する街として城下町をつくろうと考えた。

 かつてもくもくと森を開拓して土地を広げていたときには、「ここは自分の土地だ」という思いがあり、あまり他の人を積極的に住まわせようとは思わなかった。

 だが、今は状況が違う。

 開拓地はたしかに俺の土地ではあるのだが、それ以上に広い範囲がバルカ騎士領として俺の治める土地として認められている。

 であるのならば、この開拓地の土地だけにこだわる必要もないだろう。


 むしろ逆転の発想として、積極的にこの地に住まわせてしまおう。

 森から出てくる大猪の対処のために建てた壁にも手を入れて、壁の中に街をつくり、人を住まわせる。

 そうして、その住人を戦力としてバルカの地を守ることにしよう。

 住人を守り、かつ、土地を守ることにもつながるのならばこれ以上のメリットはないだろう。


 そうと決めた俺は、早速行動を開始したのだった。




 ※ ※ ※




 一辺4kmの壁で囲まれた土地の中心に一辺1kmの壁が存在している。

 この壁は硬化レンガでできており、内壁と呼ばれている。

 内壁内の土地には俺の家があり、基本的にはヴァルキリーの孵化と魔力茸の栽培を行っていた。

 いずれはここにグランの言う権力を示すことができる城を建てることにしようと思う。


 だが、まずは内壁と外壁の間の土地を再開発していく。

 中心区から南に向かって伸びている道路の脇にはグランの家やバイト兄の家、行商人のおっさんの店などがある。

 そして、その道路のあいた空間に許可制の店を出すことのできるスペースがあり、そこを自由市としている。

 ついでにいうと、冷蔵倉庫などもここにある。

 しかし、まだまだ土地が空いている。

 この空きスペースに居住希望者を入れることにしよう。

 時間ももったいないので碁盤の目のような道となる場所を設定しておき、一定の広さの土地に区切って売ることにしよう。

 なんなら俺が建物をポンポンと建てておけば、扉さえ用意すれば即日入居も可能だろう。


 南区と違って、北東区は木材関係の人間を集めることにする。

 もともと、ここには開拓地から北東の森を保護地区として設定したときに、木材の集積場所としていたのだ。

 そこに木こり関係の人間が住む家がある。

 さらに木炭作りや鍛冶場もあるところにあわせて、紙作りと魔力茸の栽培所も設置しておく。

 木に関係する仕事場とそこで働く人間を一箇所に集めておいたほうがいろいろと効率がいいだろうからだ。


 西区は現状畑が広がっていて、主にヴァルキリーの食料となるハツカを育てていた。

 だが、その畑の一部を潰してグラウンドにしておく。

 いずれ、ここには兵士関連を集めたい。

 西門は兵関係だけが使用するようにしておき、即座に出陣可能となるようにだ。

 しかし、今はまだ常備軍のようなものを持てる段階ではない。

 なので、父さんを中心とした治安維持隊を集めておくことにした。

 彼らは魔法を手に入れて調子に乗ってしまった村人たちを取り締まる仕事をしてもらっている。

 なので、ここには留置所もつくっておこう。

 ついでに裁判所みたいなものも作っておこうかな。

 裁判を城でするのか裁判所でするのか微妙なところだが、まあ、軽犯罪程度ならここにつくる裁判所でマドックさんたちに任せてもいいだろう。


 まだまだ、空いている土地はあるが、とりあえずこんな感じの青写真でやっていこう。

 いずれはハツカも税のひとつとして徴税していって、畑を減らして住居を増やしていってもいいだろう。

 だが、この土地では条例を作っておこうか。

 建物はすべて硬化レンガを使って建てることにしよう。


 外壁を越えて侵入してきた軍がいたとする。

 その時街にある建物はその軍の進行を遅らせる役割にもなる。

 その進行妨害となる建物を強固な硬化レンガにしておけば、もう一段進行を遅らせられるのではないだろうか。

 そう考えた俺は早速バイト兄の家から建て替え始め、南区を中心に建物を配置していったのだった。




 ※ ※ ※




「すごいな、坊主。俺はこんな街を見たことないんだが」


「どうよ。気合い入れて作っただけあるだろ、おっさん」


「いや、なんつうか、フォンターナの街よりもすごいんじゃないか、これ」


 とりあえず南区に硬化レンガ製の建物を建てまくった俺。

 その出来栄えを確認するために内壁の上へと登って、少し高い位置から街を見下ろしていたときのことだった。

 たまたま近くにいたおっさんも俺と同行してその光景を眺めていたのだ。

 俺が自分の作っている城下町を見て、うんうんと頷いている隣でおっさんは呆れ顔だ。


 まあ、それも当然だろう。

 俺は中心区から南区を真っ直ぐに通っている道路の両サイドを【整地】などの魔法を駆使して本当にきれいな碁盤目を再現したのだ。

 しかも、その碁盤の目に沿って区切られた土地には同じ形状の家が等間隔に並んでいる。

 建っている家は俺の家と同じものだ。

 アーチ構造を多用して窓ガラスをはめ込んだ家を【記憶保存】していたので、それを量産したのだ。

 全く同じ建売住宅が並ぶというのは前世でもみたことがあるが、この世界ではまず見かけないだろう。

 それも大理石のようなきれいな硬化レンガで作られているだけあり、見た目も綺麗なのだから驚くなと言う方が無理だろう。


「これならよそから来た商人も驚くだろ、おっさん」


「……ああ、驚かないやつがいたらそのことに俺が驚くだろうな」


 こうして、着々と街づくりが進んでいったのだった。

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