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証明方法

「ゼン、大丈夫か?」


「な、なんとか……。けどもう限界です」


「わかった。あとは任せとけ。キク分隊はゼンたちの補助を。ウォルター分隊は俺に続け」


「「了解です」」


 俺たちはイアンのもとへと合流するために移動した。

 巨人の姿になって暴れまわっているイアンの場所はすぐにわかった。

 そこへと駆け付けると、そのイアンのそばでゼンたちの部隊が奮闘していたのを発見する。


 おおよそ百人ほどの部隊が巨人とともに戦っている。

 が、周りは相手のほうが数が多く、かなり大変だったようだ。

 ゼンたちもキクたちに負けず劣らず傷だらけだった。

 やはり、千人以上もの兵がいる街へと突撃するのはなかなかに無謀な戦いだったのかもしれない。

 だが、それでもこいつらが無事だったのはイアンがいたからだろう。


 アトモスの戦士イアン。

 圧倒的な力を持つ巨人だが、そんな存在が街の中で暴れまわるということの重大さがここにきてよくわかった。

 巨人化した状態でも使用可能な鬼鎧を着て、その巨体にふさわしい大きさと強さを持つ自在剣を持って戦うイアンは、相手の兵だけではなく付近の建物も壊しまくっていたのだ。


 その被害は甚大で、屋根に使われている瓦などがバンバンと空を舞っている。

 そのために、広範囲に被害が広がっており、そこから街の住人たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていたのだ。

 イアンを中心に逃げ惑う人々。

 その人の波は決して無視できるものではなく、パージ街の兵はそういった人の流れを制御するために動く必要があったようだ。


 イアンを止めるために来た兵の一部がそうやってほかのことに手を取られていたからこそ、ゼンたちは無事だったようだ。

 ほんとうならばもっと多くの兵に囲まれて攻撃されていただろうから、イアンがいなければ俺たちが来る前に全滅していたかもしれない。

 それだけイアンの存在は大きいということだ。


「おまたせ、イアン」


「いや、早かったな。もう片付いたのか?」


「ああ。この街にいたグイードとかいう爺さんは倒したよ。そっちは?」


「何人かそれなりの使い手を倒したぞ。あとは、あそこの三人か」


 傷ついたゼンたちだが、キク分隊のときほど行動に支障をきたす状態というわけではなかった。

 そのため、ゼンたちの補助をキクに任せ、俺はイアンのもとへと駆け寄る。

 今も自在剣を使って、パージ兵を数人まとめて吹き飛ばしたイアンに声をかけた。


「なんだと? グイード様を倒しただと? 嘘を言うな」


「……だれ?」


「我が名はグレアム。このパージの地を代々守護してきたパージ家の当主なり。グイード様はわが祖父に当たるお人だ」


「へえ。当主級ってことかな? でも貴族ってほどじゃないか」


「何を言っている。それより答えよ。先ほどの弁は虚偽であると」


 俺がイアンと話していたら、いきなり別の奴が声をかけてきた。

 甲冑のようなものを身に着けた髭の男だ。

 どうやらこいつはグレアムとかいうらしく、パージ家の当主だそうだ。

 よくわからないけど、このパージ街を実質的に治めているのはこのグレアムなのかもしれない。

 爺さんだったグイードはもう隠居してたとか、そういうことだろうか。

 あの爺さんは急な戦闘で街を守るために立ち向かってきたのかもしれない。


 ということは、現在この街の頭というべき人間はこのグレアムが該当するのか。

 そんなグレアムだが、おそらくはもっと周囲に仲間がいたのだと思う。

 当主と一緒に巨人と戦う戦士たちが。

 だが、今はほとんどがイアンによって倒されたのか、この場で戦えそうなのはグレアムを含めて三人だけのようだ。


「この三人を倒せば、こっちの勝ちってことかな?」


「ふむ。そうだろうな。もう、ほかにこれ以上の使い手はいなさそうだ」


「……何を無視している。答えよ。グイード様をどうした。もしや、卑怯な罠にでもはめたのか」


「ん? いや、違うよ。正々堂々と戦って俺が勝った」


「信じられるか。貴様のような子どもに、かつて幾度も戦場で名をはせたグイード様が負けるものか。それにグイード様には秘儀がある。あの黒死蝶があって、そう簡単に負けるはずがない」


「ああ、あれね。いいもの持ってたね、あの爺さん。おかげで、ほら。俺も使えるようになったよ」


「……なに?」


 グレアムが唾を飛ばすような勢いで声を荒げて話しかけ続けてくる。

 俺がそれに答えているからか、イアンは周囲に気を配りながらも動きを止めていた。

 そこで、俺はそのまま話し続ける。

 そして、何度もグイードの負けは認められないと言うグレアムに対して、その証拠を突きつけることにした。


 目の前にいるのは三人だ。

 が、もともとここに集まっていた兵はこいつらだけではない。

 ここに三人が立ちはだかっているのはイアンという強敵に対してまともに戦えるのがこいつらだからだろう。

 少し遠巻きにしてグレアムたちにいつでも援護できるようにしているパージ兵や、キクやゼンたちと戦っている兵もいる。

 それらのパージ兵たち全員に見せつけるようにして、俺は魔術を発動した。


「な、なんだと……」


「いけ、黒死蝶」


 俺の魔力によって、手のひらから魔術が放たれる。

 そこから現れたのは、死を連想させるほどの漆黒の蝶。

 この街の兵ならおそらくは全員がよく知っているであろう黒死蝶が、グレアムらをはじめとしたパージ兵に向かって放たれたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] チートやな。アルフォンス
[一言] そらノルンがそんな良い血をほっとくわけないわなー キク隊のみんなに輸血できるだけの大量の血も確保してただろうし
[良い点] アレ、どうやって奪った? 魔道具的なモノで、発生するのだろうか?
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