敵発見
「通信が入りました。敵発見の報告です」
「了解。俺が出る」
「かしこまりました。お気をつけて、アルフォンス様」
オリエント国からの依頼として、傭兵たちを複数の村に派遣した。
その村の一つから、さっそく連絡が入る。
専用の通信機から入った連絡を受けて、俺がその村へと急行することとなった。
ワルキューレに跨り、さっそくその村へと向かう。
俺とともに、イアンも同行し、その村へと駆け付けた。
「お疲れ様です、団長」
「お疲れ。敵発見の報告を受けて確認にきた。誰がどこで何を見たのか、報告を頼む」
現場の村にはすぐにたどり着いた。
周囲は田んぼに囲まれているのどかな場所だ。
その村にある空き家を借りて、傭兵たちが住んでいる。
赤の羽織をバサッと羽織った数人の傭兵ってのは、なかなかどうしてのどかな村のなかでは目立つなと感じた。
そんな俺の到着を待っていた傭兵に話しかける。
「今日のことです。この村からちょっと離れた場所に、変な動きをする集団がいたのを見つけたので報告しました」
「よし、じゃあ、さっそく見に行ってみるか」
「了解です。案内します」
敵発見の報告をした傭兵の一人がそう言って、案内として先導してくれる。
それについていき、現場を改める。
だが、そこにはなにもなかった。
「見当たらないな」
「……す、すみません。もしかしたら、見間違いだったのかもしれません」
「確かに見たんだろう?」
「ええ。そのはずなんですけど……」
しかし、そこには誰もいなかった。
一応、周囲を軽く見て回る。
おかしなところがないか、あちこちを見て回った。
そうしたら、ようやくその痕跡を発見することができた。
「これは焚火か。燃え跡を見ると、そんなに時間が経ってなさそうだな」
「ほんとうですね。焚火の周りには足跡も多く残っています。やっぱり誰かがさっきまでここにいたってことでしょうか?」
「そうだろうね。追跡してみるか」
痕跡というのは焚火だった。
木が周囲に生えていて村の方向から来たのでは気づきにくい場所で、燃えた木の枝などに土がかぶせられている。
こんなことをするのは多分村人ではないだろう。
ということは、この村の近くに村人ではない何者かがいたことになる。
その焚火の周囲にあった足跡は十数人分くらいだろうか?
数が多いが、大軍が押し寄せてきているというわけではなさそうだ。
「お、いたいた。あそこに誰かいるな」
その考えは当たっているのかもしれない。
焚火の周りに残っていた足跡を追いかけてしばらく移動すると、ついに人影を見つけた。
どうやら、傭兵たちが相手を発見したことを向こうも察知していたようだ。
小規模な集団が村から離れるように移動していた。
「イアン、行くぞ」
「承知した」
その姿を確認した直後に動き出す。
俺のワルキューレとイアンの乗ったヴァルキリーがすぐにその集団に向かって駆けだした。
遠目で見える距離だったのが、あっという間に詰まる。
その途中で相手もこちらに気が付いたのか、後ろを振り返り、慌てたように動き出した。
ただ、こちらと相手では速度に明確な差があった。
相手は徒歩。
どれだけ懸命に動こうとも、ヴァルキリーの走りに敵うものではないだろう。
グングンとその差を詰めて、相手に追い付く。
最初は逃げようとしたものの、こちらの数が相手よりも少ないことに気が付いたのか武器を抜いて迎撃の構えを取ろうとしている謎の集団。
が、そこに俺がワルキューレに乗ったまま、突っ込んだ。
手にしているのは魔剣ノルンだ。
だが、今は剣の形ではなく槍の形に変えている。
ワルキューレに騎乗したままでも攻撃しやすいように、長めの円錐状の形に変えた魔剣ノルンを、走る勢いのままに突き出して突撃した。
ぶつかり合う剣と槍。
もちろん、勝ったのは俺のほうだった。
相手の持っていた剣は激突した瞬間にへし折れながら飛んでいった。
多分相手の手首も変な方向にねじ曲がっていたので、折れているんじゃないだろうか。
いや、手首の心配はする余裕もないだろう。
なんせ、その突撃によって相手の体はワルキューレに弾き飛ばされているのだから。
そんな俺の後ろからアトモスの戦士イアンもついてきていて攻撃を繰り出していた。
イアンは巨人化はしていない。
そんなことをすれば、騎乗しているヴァルキリーがぺしゃんこになってしまうからな。
普通の人間の大きさのままで、ヴァルキリーに騎乗した状態での攻撃だ。
俺が先に突っ込んだ後でのイアンの攻撃だったが、相手を倒した数はイアンのほうが多くなった。
というのも、イアンが自在剣を長く伸ばした状態で横なぎに振るったからだ。
剣の長さを自在に変えることができる魔法剣。
もちろん、巨人化していなくとも自在剣は伸ばすことが可能だ。
そんな自在剣を伸ばした状態で、圧倒的な膂力を誇るイアンがブンッと横に振るう。
それだけで驚異の殲滅力を発揮した。
十メートルほどに伸ばした自在剣が半径となる範囲攻撃。
それに当たらなかったやつはただ運がよかっただけだろう。
イアンの一撃で相手は何人もが戦闘不能となった。
必死に攻撃を防ごうとしている奴もいたが、あまりにも力が違いすぎたようだ。
防ごうとした剣自体がへし折れて、その身に攻撃を食らう羽目となってしまった。
「お、よかった。生き残っているのがいるな」
そのイアンの攻撃を見て、ちょっと焦る。
一瞬で全滅させてしまったのではないだろうかと思ったからだ。
ただ、何人か無傷で生き残っていた。
といっても、腰を抜かしてペタンと地面に座り込んで動けなくなってしまっているようだ。
そいつのもとへと近づいていく。
攻撃しておいてあれだが、こいつらいったい何者だろうか?
生き残りのそいつから話を聞くために、俺は腰を抜かしている男へと近づいていったのだった。
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