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獣人の血を引く者たち

「そういうことでよろしくね」


「分かりました。ミーちゃんのような子を見つけたら保護するということですね。任せてください」


「頼んだよ、ローラ。それじゃあ、俺たちはこのまま新バルカ街に帰るから」


 ミーティアを連れて、一度ローラのいる活動拠点まで帰ってきた。

 そこで、ローラに依頼をしておく。

 この街にどのくらいの数がいるかは知らないけれど、獣人の血を引く者を見つけたら確保しておいてほしいとお願いした。


 かつて魔大陸に存在したとされる獣人。

 その獣人との混血の血をわずかに引き継いだ者がミーティアやユーリのような存在だ。

 あの場にいた男たちを全員倒してしまったので、詳しく話を聞けなかったが、どうやらそういった者は今も少なからずいるらしい。

 そして、そういう者は人知れず誘拐されて商売のタネにされているのだろう。


 話ぶりから想像するに、かなりの儲けになるらしい。

 多分、獣人の混血の血を引く者は長生きできないことが多いのではないだろうか。

 ミーティアはもともと獣の特性を持っていなかった。

 だが、バルカ村に移り住んで食生活や生活環境が大幅に改善したことで、頭に猫の耳やお尻に尻尾が出てくるようになった。

 そして、そうなってからは体の具合が悪くなってしまった。


 ユーリも似たような感じらしい。

 もともとはバルカ村の前にあった廃村出身だが、そこで住んでいるときにはウサギ耳は無かったという。

 それが、この都市国家に移り住んで、しばらくしてから気がついたらその特性が現れていたそうだ。

 そして、体調が悪い日が現れ始めた。

 ただ、個人差があるのか、ミーティアほどには悪化せず、なんとか日常生活を過ごせるくらいだったようだ。

 病気がちな女の子として家から出ることが少なかったのが、獣人の特性を持っていることを周囲に知られない要因だったのかもしれない。


 が、今回は運悪く帽子が脱げた状態で人にウサギ耳が見られてしまった。

 そして、それをどこからか知った連中が連れ去り、貧困街で取引したのだろう。

 ゼンやラーミアは獣人のことをよく知らなかったらしいが、高値で売れると知っている存在がいるということだ。

 そいつらにまた無事に戻ったユーリが誘拐されないとも限らない。

 そのために、ゼンやラーミアも含めてユーリともども新バルカ街へと引っ越しする運びとなった。


 ただ、そうなるとほかの獣人の血を引く者たちのことも気になる。

 せっかくの面白い変わった体を、ただの物として売り買いされるのはもったいない。

 なぜなら、それは【獣化】という魔術や魔法につながる可能性もあるのだから。

 ミーティアは今のところ猫の特性をまったく使いこなせていないが、もしかしたらほかの奴ならできる可能性もある。

 ということで、それなら俺が獣人の血を引く者を集めてみようと考えたのだ。


 それを議員という力を持つローラに任せることにした。

 多分、普通の人よりもそういう情報は集めやすいのではないだろうか。

 というか、なんだったら、ローラが獣人の血を引く者を買い集めるというのもありかもしれない。

 わざわざ貧困街の怪しい連中に攫われて売られるよりは、金を得て新バルカ街に来るほうがいいと思わせることができないだろうか。

 まあ、最初のうちは大々的にはできないだろうから、極秘に裏から集めることになるだろうけど。


「じゃあ、行こうか、ミー」


「うん。またねー、ローラお姉ちゃん」


「はい。またいつでも遊びに来てね、ミーちゃん。けれど、知らない人にはついていかないようにしてくださいね」


 とりあえず、後のことはローラに任せて俺たちは新バルカ街へと帰ることにした。

 ミーティアにヴァルキリーがひく車に乗るように言うと、ミーティアは大きな声でローラにあいさつをした。

 どうやら、誘拐されたことはもう大丈夫そうだな。

 元気そうな姿を見て、ローラも安心したのか笑顔で手を振って答える。

 その姿を見つつ、車に乗りながらも手を振り続けるミーティアとゼン一家と一緒に新バルカ街へと向かったのだった。





 ※ ※ ※




「血の入れ替え、ですか?」


「そうだよ。ユーリの体調が悪いことが多いのは獣人の混血がその身に流れているからだ。それがユーリの体にとっては大きな負担になっている。だから、それを緩和するために、ユーリの血とラーミアの血を入れ替えるって方法があるね」


「そ、そんなことを急に言われても……。なんだか怖いです」


「まあ、いきなりこういう話を聞いたら怖いかもしれないけど、ユーリを長生きさせたいなら有効な手段だと思うよ? ミーも姉のハンナが血の入れ替えを定期的にしているからこそ、こんなに元気なんだし」


「ミーちゃんのお姉さんはやっているんですね。そのハンナさんの体は大丈夫なのでしょうか?」


「ハンナは元気だよ。ただ、初めて血の入れ替えをしたときは大変だったみたいだね。全身が熱くなって生死の境をさまよったとかで、体の熱を魔力で炎にして出すことで解消したんだ」


「……そんなことできる気がしないのですが」


 新バルカ街に着くまでの道中でユーリのことについて話し合う。

 ユーリはミーティアの時ほど体が悪くはなっていなさそうだ。

 ただ、それでも万全ではない。

 ならば、ミーティアとハンナの時と同じように血の入れ替えをしてはどうかとラーミアに提案した。


 だが、それを聞いてラーミアはかなりためらっている。

 確かに、ハンナと同じように成功するかどうかは分からないか。

 魔力で炎にして熱を出す、なんてほかの人ができる保障はどこにもないしな。

 が、それをしなければおそらくユーリは長生きしないんじゃないだろうか。


 せっかくこれから獣人を集めようと思ったが、この問題をどうにかしないと獣人の血を引く者という存在を活用できないかもしれない。

 なんとか、血の入れ替え以外でもこの問題を解決できる方法はないだろうかと考えこみながら、ガタガタと揺れる車に乗って移動を続けることになったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ【名付け】して【魔法】使わせまくって 制御出来無い魔力を減らすって方向に逝かんと 魔力制御訓練もままならんしな 体調手遅れ一歩手前に成るまで魔力制御訓練して 血の入れ替えは最終手段や緊急…
[良い点] 魔石にチャージ出来ると 良いいね。
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