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行方不明

「ミーがいなくなった?」


「はい。今日のお昼から全然姿を見かけなくて。探したんですけれど見つからないのです」


「建物の中にも、その近くにもいないってこと?」


「は、はい。ミーちゃんには勝手にどこかに行ってはいけないとしっかりと言ってあったのですけど……」


「わかった。じゃあ、あとは俺が探してくるよ」


 オリエント国にあるローラの屋敷。

 そこで、ミーティアがいなくなったという話を聞かされた。

 ミーティアはローラがオリエント国でしばらく暮らすことになると聞いて、もう会えないのではないかと驚いたようだった。

 そこで、ローラに会いたいと言い出したので、ほかの元孤児の子と一緒にここへと連れてきていた。

 で、今日新バルカ街に戻る予定だったので、俺が迎えにきたのだ。


 だが、そこでローラからミーティアがいないという話を聞かされた。

 ただの迷子ならそれでもいいけれど、気になるな。

 それに、ミーティアがいなくなったと聞かされたらハンナが驚くだろう。

 もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。

 さっさと見つけて何事もなく連れ帰らないと。


「アイ、いるか?」


「はい。どういたしましょうか、アルフォンス様?」


「新バルカ街に連絡を。追跡する」


「承知しました。すぐに手配いたします」


 ミーティアの行方不明のことを聞いてすぐに行動に出る。

 まずはアイに頼んで、新バルカ街から助っ人を呼ぶことにした。

 と言いつつ、人ではないのだけれど。

 追跡能力に長けた存在がいるので、それを呼び寄せたわけだ。


「……きたか。早かったな」


 その助っ人が空を飛んでやってきて、俺の肩に止まった。

 右肩の上でちょこんと立っている。

 それは追尾鳥だ。

 バルカニアで生まれた使役獣で、においに敏感でどれほど離れた相手でもそのにおいをたどって追いかけていくことができる。

 こいつはその能力を利用しての連絡係にもなるので、今みたいに新バルカ街からオリエント国にいる俺のところまでやってくることができる。

 が、やはり一番多く使われるのは捜索だ。

 ちなみに、バルカニアでは犯罪者を見つけ出すのに使われたりもしていたのだが、今回はミーティア探しのために呼び出したというわけだ。


「はい。これを嗅いでにおいを覚えてくれ」


 そんな追尾鳥に俺はミーティアの服を嗅がせる。

 多分これで追跡できるはずだ。


「けど、やっぱりこれってなにか事件なのかな?」


「……わかりません。けれど、腕輪が建物の外で見つかっているんです。これをつけていてくれればアイさんが居場所を特定できたのですけど」


「そうなんだよな。それがあるから大丈夫だってみんなが思っちゃったってのもあるんだろうね」


 追尾鳥がにおいをかいでいる間にも、ローラと話をする。

 実は本当ならばミーティアやほかの新バルカ街の住人の位置はすぐに特定できるようになっているはずだった。

 新バルカ街に住む際には識別票代わりになる腕輪を渡していたからだ。

 その腕輪には魔法陣が刻まれている。

 それにより、アイが腕輪から感じ取った装着者の魔力を把握して、誰がどこにいるかを知ることができるようになっていたのだ。

 たとえば、ローラも腕輪をつけているが、そのおかげでどこにいるかはすぐにわかる。


 だが、それが油断を生んだのかもしれない。

 いつでも居場所がわかるならば、常に見ておく必要もないと考えてしまった可能性はある。

 それに新しい環境でみんなが慣れていなかったのもあるんだろう。

 いついなくなったのか分からないくらい時間が過ぎてしまっていた。


「お、準備ができたみたいだな。それじゃあ、行ってくるよ」


「ミーちゃんのこと、お願いしますね、アルフォンスくん」


「うん。すぐに連れて帰ってくるよ」


 においを嗅ぎ、それを覚えた追尾鳥。

 その追尾鳥がさっそく移動し始めた。

 それを見て、俺はローラに声をかけて追尾鳥についていく。

 ワルキューレに跨って、前を飛ぶ追尾鳥の後を追いかけていったのだった。




 ※ ※ ※




「外に出るのか……」


 ミーティアのにおいを追跡して飛んでいく追尾鳥。

 その追尾鳥の後についていくと、どんどんと移動していくことになった。

 明らかにミーティアがいかないだろう距離まで移動しても止まらず、追尾鳥は飛び続けている。

 そして、その結果、追尾鳥はオリエント国の内壁の外へと出ていき、さらに外壁までもを出てしまった。


「貧民街、か。まさか昔住んでいた家に戻ったわけじゃないよな?」


 外壁の門を通って外に出た追尾鳥が向かったのは貧民街だ。

 そこは以前までミーティアやハンナが住んでいた場所だ。

 二人が生まれた場所でもある。


 だが、今のミーティアが自分の意志で、自分の足で移動してここまで来たとは考えづらい。

 もしも、今は無き実家に帰りたいと思ったのであれば、俺や他の者に言えばいいのだから。

 なのに、ここにミーティアのにおいがつながっている。

 ということは、おそらくは誰かの手によってここまで連れてこられたのだろう。


 問題は貧民街に住んでいる小悪党が犯人ではないというところだろうか。

 ここはみんな自分が食っていくために、誰だってそれなりに悪いことは経験している者ばかりだ。

 だが、そいつらが都市国家の内壁内に侵入してミーティアを連れてくるのはどう考えても無理だろう。

 となると、内壁内に入ることができるにもかかわらず、この貧民街にも来る存在が、ミーティアを狙ったのか。


 思わず、体から高ぶった魔力が漏れ出てしまった。

 ミーティアは怪我をしていないだろうか。

 もう俺の身内同然のミーティアを攫った相手を許す気もない。

 俺は手に出現させた魔剣を握りながら、ワルキューレとともに追尾鳥の案内した場所に向かって行ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] …ま、ままま、まさか?!獣人としての覚醒を通り越してガチの動物に(オイ
[一言] アルフォンス君はミーちゃんの匂いが着いた服を収集していると…将来が心配ですね
[良い点] 獣人として、覚醒したか?
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