託児所
「あとはなんだっけ。子どもができた時に子育てを手伝ってくれたり、勉強ができるようになってりゃいいんだっけ?」
ひとまず、最初に病院が出来上がった。
アイが診て、マーロンがその仕事を手伝いながら勉強している。
そして、そこには衛生兵候補もいて、戦場でもできる応急処置などを中心に学んでいる。
とりあえず、病院に関してはそのくらいでいいだろう。
あとで必要になることがあれば、そのつどアイが申告してくるだろうし、そうなったらその時考えよう。
というわけで、病院についてが一区切りしてから、ほかの課題についても考えることになった。
ローラに言われた、結婚しやすい環境づくりだ。
それはやはり結婚して生まれてくる子どもについてのことだった。
まず、必要なのは子育ての手伝いだろうか。
これは、ローラの言うとおり用意しておいたほうがいいと思う。
というのも、ここにいる人間は男女ともに身寄りがないからだ。
自分の身一つで俺について霊峰の麓からやってきた傭兵たち。
そして、そんな傭兵たちのとの結婚相手として見込んできてもらった女性陣。
どちらも、家族がそばにいないというところが共通している。
これが子育てを大変にするかもしれない。
もしも、一緒に両親が住んでいるだとか、近くに親戚がいるのであれば、いざというときに子どもの世話を頼むこともできるだろう。
だが、親などがそばにいない状況では、自分たちで子どもの面倒をみて、育てていかなくてはならない。
が、問題なのは男連中は基本的に傭兵だということだろうか。
俺と一緒に戦場に行くときに、基本的には拒否権はない。
このバルカ村に傭兵としてやってきた以上は、五体満足である限り、戦場へと向かってもらう。
しかし、それは子どもを持つ妻の身からすれば大きな負担になってしまう。
片親がしばらくいなくなる間、自分も仕事をしながら子供を育てることになるかもしれない。
どう考えても大変だ。
そういうときに利用できるように、子育ての補助ができる仕組みを作っておこう。
「確か、遊戯区には託児所ってあったよな。あれをバルカ村でも作ろうかな」
そこで、俺が考えたのは託児所だった。
たしか、バルカニアにある遊戯区ではそんなのがあったはずだ。
遊戯区には賭博場や使役獣による競争、あるいは闘技場なんかがある。
そこでは日夜賭け事が行われているらしい。
そんな遊戯区をまとめているのが、エイラ姉さんだ。
エイラ姉さんはヘクター兄さんの奥さんだ。
まだバルカニアが地上にあったころから闘技場などを任されていて、そのための宿泊施設なども含めてすべてを統括している。
そして、そんなエイラ姉さんと一緒に仕事をしていたのは、多くが女性だった。
当時は女性が働くというのはかなり珍しかったみたいだ。
そして、そんな働く女性にはもちろん子どもがいた。
今のバルカ村と似たような状況かもしれない。
そんななかでアルス兄さんが遊戯区に導入したのが託児所だそうだ。
女性が働いている間にも子供の面倒が見られるようにしている場所。
その託児所では専業の子どもを観る仕事係がいるので、安心して預けることができるようになっている。
そして、子どもの面倒をみることから解放されることで、多くの女性が働けるようになったそうだ。
これをここでも作ってしまおう。
で、ついでにそれは学校にもなるようにしておけばいいかと思う。
学校というのは子どもを集めて勉強を教えるところだ。
最初は主に言葉や文字、計算くらいから始めることになると思う。
今のように俺の家で孤児を育てるのと同じように、アイやそのほかの人にも勉強をみてもらうことにしよう。
この学校っていうのは、今になって大切なんだなとわかってきた。
というのも、学習速度は明らかに子どものほうが大人よりも速いからだ。
アイがいろいろと教えている子どもたちは、まるで綿が水を吸収でもしているかのように教えられたことを身に着けていく。
が、同じようにアイが教えたとしても大人は覚えが悪かったのだ。
それこそ、霊峰ではほとんど勉強なんてしたことのないまま成長した傭兵たちは、なかなかものを覚えられなかった。
多分これは子どものほうが知識を吸収しやすいんだろう。
ゆえに託児所と一緒に学校も用意しようと思う。
もっとも、こっちはすぐには必要ないかもしれない。
子どもの数が増えてきたら必要になる、というくらいだろう。
なので、それまでは大人でも学校に通えるようにしておこうか。
いくら覚えが悪いといっても、覚えられないというわけではない。
本人にやる気があれば、たとえ何歳になっても新しい知識は身につくはずだ。
当面は傭兵たちも学校に通えるようにしておこう。
ある程度の読み書きができたほうが、知識人たる元高級娼婦たちと付き合っていくにも助かるだろうし。
こうして、バルカ村には中央にある俺の家の近くに病院と託児所兼学校が建設されることになったのだった。
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