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騎士級

「これがこの魔導迷宮の魔石か。赤黒い色をしているんだな」


 全身の関節をバラバラにするという倒し方をした魔導兵。

 その魔導兵の胴体部分から完全な形で魔石を回収することができた。

 なので、その魔石を改めてマジマジと観察する。


 この魔石は大人の握りこぶしぐらいの大きさのごつごつした石みたいな感じだ。

 そして、色は赤黒い感じだった。

 あんまり詳しくないけど、魔石には種類があるらしい。

 例えば、バルカの魔法には【魔石生成】という呪文がある。

 その魔石の色は青色だ。

 けれど、アトモスの里で採れた精霊石とも呼ばれる魔石は黒い色をしている。


 多分、この魔石はそのどちらとも違うものなんだろう。

 そんな魔石を手にしながら、なんとなく魔石に向かって魔力を送り込んでみた。

 僕の体から魔石を握る手のひらを通って魔力が流れ込んでいく。

 けれど、その魔石がなにか反応を示すということはなかった。

 いや、ちょっと色が濃くなったのかな?

 ただ、それ以外には別に何も起きないみたいだ。


 なので、逆に魔石から魔力を吸い出してみることにした。

 【魔石生成】で作った魔石はその内部にある魔力を取り出して、消費した魔力を補充するのに使うことがあると聞いていたからだ。

 それと同じことができないかどうかと思ったのだ。


「あ、こっちはいけるんだ。吸収できた」


 そして、その実験は成功した。

 魔石内部にある魔力を自分の体に取り込むことができた。

 感覚的なものだが、多分間違いないと思う。


 ということは、これで使った分の魔力を回復できるかもしれない。

 体内で魔力を流動させているだけならそんなに魔力がなくなることはないんだけど、【威圧】なんかは魔力を使う。

 その分を補えるのだとしたら、迷宮で戦える時間が増やせるかもしれないな。


 ただ、そのためにはなるべく魔石を回収できるように戦わないといけないかもしれない。

 さっきは関節を攻撃して無力化したおかげで、ほぼ完全な形で魔石を手に入れることができた。

 けど、最初に戦った時みたいに魔石を砕くことで相手を機能停止させたりすることもあると思う。

 そうなると、戦った後に残るのは砕かれた魔石だけだ。

 あの状態になると魔石にあったはずの魔力が散ってしまうのか、そんなに魔力を吸収できないみたいだ。


 まあ、けどあんまりこだわりすぎるのもよくないか。

 できれば、魔石が取れればいいけど、そうじゃなくても勝てればいいんだ。

 あんまり魔石狙いで無理はしないようにしておこう。

 そんなふうに考えながら、僕はさらに迷宮内を進んでいったのだった。



 ※ ※ ※




「……これで、終わりだ!」


 その後、何度か遭遇した魔装兵たち。

 そのすべてと対峙して、勝利を収めた。

 今は斧を持った魔装兵が相手だった。

 こいつは戦いやすかった。

 剣や槍と違って、間合いが短めで、かつ、大ぶりの攻撃しかしてこなかったからだ。


 もしかしたら、攻撃が当たれば危険な相手だったのかもしれない。

 重量のある斧による攻撃はこちらにはかすりもしなかったが、一度だけ地面を叩いたことがあった。

 そのときはかなり大きな音と振動があって驚いた。

 多分、斧持ちは魔装兵の中でも攻撃力重視のやつなんだろう。


「さて、と。そろそろ一度帰ったほうがいいかな?」


 そんな攻撃力の高い魔装兵を相手にするのは、アイから剣術を習っていなかったらあるいは危険な敵だったのかもしれない。

 けれど、これまでの訓練で身についたことを自然に実行していれば、さすがにあの大ぶりの攻撃には当たらないだろう。

 今のところは一番厄介そうなのは槍持ちかな?

 けど、一対一の戦いであればそれほど苦労はしなさそうだ。


 そう思っていた時だった。

 倒した斧持ちの装備と魔石を回収しているときに、気配を感じ取ったのだ。

 それも一つだけではない。

 ゆっくりと、カチャカチャと鎧の音を鳴らしながらこちらへと近づいてくるその気配は複数あった。


「そういえば、今までは一体しかいなかったけど魔装兵って複数でいることもあるって言ってたな。どうしようか」


 この迷宮に来る前に貴族院の迷宮に関する講座で聞いた情報。

 そのなかに、魔装兵の数についてのことがあった。

 この迷宮で一番弱いとされる青銅の騎士はブリリア魔導国の貴族階級に照らし合わせて騎士級であるといわれることがある。

 が、青銅の騎士一体で騎士級というわけではなかった。


 青銅の騎士が三体いた時の強さがだいたい騎士一人に相当する強さになるらしいのだ。

 つまり、ここまで僕が相手をしてきた魔装兵は一体ずつとしか戦ってこなかったので半人前以下の相手だったともいえる。

 もしも、騎士たる者ならば青銅の騎士三体を同時に相手取ってこそだ、なんて言われているらしい。


 が、貴族院の講義ではその言葉をまともに受けすぎるな、とも忠告されていた。

 確かに、青銅の騎士が相手であれば長い歴史とともに婚姻関係によって魔力量を高めた騎士家出身の学生ならば相手どれるかもしれない。

 しかし、それはあくまでも魔力量だけを基準とするのであればの話だ。


 剣や槍、あるいは弓などを持つ青銅の騎士が複数集まってきた場合、その相手を一人でするにはやはり危険なのだ。

 そもそも、複数を同時に相手をして戦うこと自体が大変なことでもある。

 騎士級だからといって舐めてかかって、男爵家や子爵家の学生たちがケガをしたり、あるいは重傷を負うことがないわけでもない。


 そのため、もしも複数の青銅の騎士を相手に戦いたければ、少なくとも初めての時はだれか経験者を近くにおいて実戦に挑むのが望ましいとされていた。

 が、僕の場合はどうしようかなと悩んでしまう。

 もしも、僕がこの国の貴族の生まれだったのならば自分の家に仕える騎士などに付き合ってもらって複数相手の戦いに挑んでいただろう。

 けれど、僕はここに一人で来ている。

 アルス兄さんはこの迷宮に入る許可をもらえなかったと言っていたし、一緒にこのブリリア魔導国に留学している者は基本的に勉強意欲の高い者を選んだためか、それほど戦いに向いている人たちではなかった。


 複数相手にも挑戦してみたいが、むやみやたらに危険に挑むのも考え物だ。

 どうしようかと考え込んでしまったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 対数戦は、無理せず撤退 出来なければ、可能なかぎり 一対一の体制に持ち込める体制、立地をつくる。 まほうで、壁をつきいて一本道を作るとか。 [気になる点] 騎士家の子たちは、留学生に少ない…
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