魔力運用
練り上げた魔力を瞳へと集中し、その状態を保ったままでハツカを観察する。
どうやら内包する魔力量が多いハツカは根の塊部分が大きいものであることが多いようだということがわかってきた。
茎の下に食用となる根の塊を複数個つけるハツカだが、その数が多ければ多いほど食べられる量というのは増えることになる。
だが、細かく観察していくと数が多いほど立ち上る薄青い気体のように見える魔力が淡い印象を受けたのだ。
食べ比べてみた感じとしては、目に見える魔力の色が濃いほど魔力の密度が高いようだった。
いろいろと見て食べてを繰り返して調べた結果、5〜6個の塊ができるもので、塊の大きさが大きいものほど魔力密度が高いということが判明した。
それから俺はその特徴を踏まえつつ、品種改良を繰り返していったのだった。
※ ※ ※
そんなふうに品種改良を続けながらも、ほかにも発見があった。
それは魔力の運用についてである。
魔法を使用すると魔力を消費し、それを回復させるには食べ物を食べる必要がある。
そこで俺はなるべく魔力を多く回復させてくれる食べ物を得ようと考えたわけだ。
だが、回復量を高めるにはほかにも方法があることにも気がついたのだ。
そのヒントは自身の瞳に魔力を集中させるという行為だった。
しばらくはその大発見に舞い上がってしまっていて、深く考えなかったのもある。
だが、後々になって気になったのだ。
瞳に魔力を集中させたら視界から得られる情報が変わる。
ということは、もしかしたらほかの肉体部位にも同様のことがあり得るのではないかということに。
そして、それは間違いではなかった。
今まで全身に練り上げた魔力を巡らせたあと、すぐに手のひらから畑の土へと流し込んで魔法を使っていた。
だが、魔法を使用せず、その状態で体を動かすと身体機能がわずかばかりだが上昇しているように感じられたのだ。
そこで、あえて全身ではなく腕や足などといった部位へと魔力を多めに移動させると、腕力や脚力の向上が見られたのだ。
これは俺の中ではかなり嬉しい発見だった。
いわゆる身体強化魔法のようなものではないかと思ったからだ。
新たな魔法が嬉しかっただけではなく、現実問題としても非常に助かったのもある。
全身の力を強化することで、今まで水瓶から桶に移した水を手運びしていた労力が軽減されたのだから。
おかげで更に畑の面積を増やすことにも成功している。
そして、この強化魔法は何も力の向上だけではないということにも気がついた。
それは顎の周りの筋肉を強化してガリガリとハツカをかじっていたときのことだ。
筋肉を強化できるのなら、内臓機能は変化しないのだろうかという疑問を持ったのだ。
気になったら即実験だ。
俺は練り上げた魔力を胃や腸へと集中させるようにイメージを行った。
ぶっちゃけ本当に正確に胃や腸のところへ魔力を集中させることができていたのかどうかはわからない。
だが、この実験は成功した。
それまで食べ物を食べるとそれに含まれる魔力を自分の体内に存在する魔力へと変換するのにはある程度の時間がかかっていた。
だが、体感的にその吸収完了までの時間が減ったのだ。
更に不確定ながらも、吸収効率の向上が見られるような気もする。
同じくらいの魔力内包量のハツカでも胃腸強化状態で食べたときのほうが回復量が上昇したように感じられたのだ。
もちろんこれらは正確な情報ではなく、あくまでも俺の感覚の問題だ。
正しくはないのかもしれない。
だが、違いを感じるのは確かなのだ。
ならば、この胃腸強化魔法は続けてみよう。
俺はそれから毎日、食べるときや動くとき、見るときなど、状況に合わせて魔力の運用を工夫するようになっていったのだった。
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