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雫型魔石の効用

「……あれ? もしかして、魔力が増えてない?」


 アイによる訓練が始まって、何日か経過した頃だった。

 僕は自分の体に起こった変化に気がついた。

 なんだか、前よりも魔力量が増えているような気がする。

 気のせいだろうか?


「いいえ、気のせいではありませんよ、アルフォンス様。アルフォンス様の魔力量はたしかに増えています」


「なんで? まだ、魔力を濃くする訓練しかしていないよね?」


「アルス・バルカ様が行った処置のおかげですね。アルフォンス様のお腹の中にはすでに雫型魔石が存在します。その魔石は体内の魔力を魔石の中にためておくことができるのです。アルフォンス様は日々の訓練で魔力を扱い、そのときに無意識に魔力をより多く雫型魔石にためているのでしょう」


「へー、そうなんだ。あんまり、自分のお腹の中に魔石があるっていうのはよくわからないけど、とにかく兄さんのおかげで魔力量が上がっているんだね」


「はい。他の人にはないものですので、人と差をつけるありがたい処置なのですよ」


 そうなんだ。

 全然知らなかった。

 けど、アルス兄さんのおかげで強くなれるみたいだ。

 ありがとう、アルス兄さん。


「さて、ここしばらくは魔力を空気中から取り込んで、その魔力を体内の魔力と混ぜ込み、さらに濃くする訓練を行ってきました。それはとりあえず合格です。アルフォンス様は短期間でそれを実行できるようになりました」


「やった。じゃあ、また次の段階ってやつに進めるんだね?」


「はい。ですが、まずはもう一度、魔力の練り上げを行いましょう。これは基本でもあり、奥義でもあるのです。アルス・バルカ様やバイト・バン・バルト様が無類の強さを誇るのは、幼少期よりこの魔力の練り上げを行っていたからにほかなりません。これはできるようになったことだけで満足するのではなく、これからずっと毎日、片時も途切れること無く続けていく必要があるのです」


「えー、ずっとやらないといけないんだ……。結構、集中しないといけないからしんどいんだよ、アイ」


「ならば、やめましょうか? やめたいのであればおっしゃってください」


「……ううん。やめない。だって、僕は強くならなくちゃいけないんだ。やめたりなんかしないよ」


「かしこまりました。では、毎日この訓練を繰り返し、続けていきましょう。片時も絶やさずに無意識にできるようになるまで続けるのです」


「はーい」


 やめるはずないじゃないか。

 だって、こんなに短期間で効果が出ているんだから。

 アイは教え方が上手らしい。

 それに、アルス兄さんが書いた魔力向上指南書とかいう本なんかを参考にしているというのも大きい。

 アイの言う通りに頑張っていたら、アルス兄さんたちに近づける。

 そう思えるだけで頑張る力になる。


 だから、今日も横になって、体も心も落ち着けながら魔力を練り上げていった。

 ゆっくりと、大きく深呼吸を繰り返しながら、火をつければいつでも燃えるような濃厚な魔力を作り出す。

 そして、今日はそれを意識して、お腹の中にあるという雫型魔石に注ぎ込むようにする。


 アイに「この辺りにあります」と体を指さされた場所へ魔力を送り込むと、たしかに不思議な反応をした。

 まるで、魔法鞄みたいに魔力を送り込めば送り込んだだけどんどんと入っていくような気がする。

 不思議だ。

 お腹の中にあるのは小さな魔石だって聞いたけど、そこに大量の魔力が溜まっていく。


 これはフォンターナ連合王国の祖王であるカルロス様が開発した秘密の奥義らしい。

 自分の体内に魔石を持つ、というのはあんまり一般的にはないとアイが言っていたからだ。

 カルロス様は体内に魔石を生み出し、そして力を溜め続けていた。

 それをアルス兄さんが発見して、人工的に他の人にもできるようにしているらしい。


 バルカ軍が昔から強かったのは、この雫型魔石をアルス兄さんが兵たちに植え付けていたからだそうだ。

 そして、その状態でバルカ式訓練法をしたからこそ、ほかの貴族軍よりも強い軍ができあがった。

 すごいなと思う。

 バルカが強かったのはそういう理由もあったんだと、このときになって初めて知った。

 てっきり僕はアルス兄さんやバイト兄さん、それにカイル兄さんが強かったからだとばかり思っていたけど、そうじゃなかったみたいだ。


 今更ながらにそんなことに気が付きながらも、僕は魔力の練り上げを無意識でもできるように、毎日飽きもせずに続けていったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 兵士一人一人が貴族級ですもんね。バルカの兵士は…そりゃデタラメですか。そして兵士の魔力が多ければ多いほど貴様の魔力も多いのでしたか? 更新お疲れ様です。応援してます。
[一言] クルト兄さんも思い出して上げて…
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